もっていたビジネス構想が、ラウンジの交流で現実化

日本最大級のフィリピン留学・語学留学の口コミ情報サイト「School With」を立ち上げた株式会社スクールウィズ 代表取締役 太田英基さん。ちなみに撮影場所は護国寺のソーシャルアパートメント「WORLD NEIGHBORS」のビリヤードラウンジ日本最大級のフィリピン留学・語学留学の口コミ情報サイト「School With」を立ち上げた株式会社スクールウィズ 代表取締役 太田英基さん。ちなみに撮影場所は護国寺のソーシャルアパートメント「WORLD NEIGHBORS」のビリヤードラウンジ

ソーシャルアパートメントの魅力を探る第2回。コンセプトや優れたファシリティを紹介した前回だが、今回はもう少し実際の生活に焦点をあててみたい。そこで、入居者の方にお話しを伺ってきた。

お話を伺ったのは、現在、護国寺にあるカフェ併設型のソーシャルアパートメント「WORLD NEIGHBORS(ワールドネイバーズ)」に住む太田英基さん(29歳)。これまで3物件のソーシャルアパートメントに住み、居住者との交流を最大限に生かしている人物だ。

というのも、太田さんはソーシャルアパートメントで仲間を見つけ、なんと起業までしている。日本最大級のフィリピン留学・語学留学の口コミ情報サイト「School With(スクールウィズ)」を運営し、2013年には株式会社スクールウィズを立ち上げた太田さん。このビジネスのスタートはソーシャルアパートメントの居住者との出会いだったという。

「日本人が世界で活躍するためには、英語の習得が必須です。どこで英語を学ぶかが問題ですが、小学校から英語を学び、公用語が英語であるフィリピンはレベルが高いんです。日本でもフィリピン留学が注目を集めていますが、実は現地には語学学校が数多くあって、なかなか個人では良い学校を選ぶのが難しい。そこで、『食べログ』のように、フィリピンへの語学留学の口コミサイトを作れないかと思っていたのですが、自分にはサイト構築などのITスキルがありませんでした」(太田さん)

そんな太田さんの救世主となったのが、同じくソーシャルアパ―トメントに入居していた根津 陽さんだった。当時お二人は神奈川県にある「ソーシャルアパートメント宮前平」に住んでいたが、ラウンジで顔を合わせ意気投合。IT企業のエンジニアだった根津さんが太田さんの構想を試作したのが「School With」のスタートだったという。

「『School With』はソーシャルアパートメントでの彼との出会いがあったからこそ、始まったんです」(太田さん)

無意識に世界を広げるソーシャルアパートメントの魅力

ソーシャルアパートメント宮前平のラウンジ。ここで「School With」が生まれた。巨大なラウンジでは、住人はもちろんのこと外部の友人を呼んでのパーティも気軽にできたとかソーシャルアパートメント宮前平のラウンジ。ここで「School With」が生まれた。巨大なラウンジでは、住人はもちろんのこと外部の友人を呼んでのパーティも気軽にできたとか

そもそもなぜ、太田さんがこうしたソーシャルアパートメントという居住形態を選択したのか、彼は「一人暮らしのメリットがもはや自分の中では分からない」と言い切る。

実は太田さんは、学生時代にコピー用紙の裏側に広告を載せ、学生が無料でコピーができる広告サービス「タダコピ」を立ち上げ、メディアでも話題になった人物だ。その後「フィールドを世界に移すために世界を知りたい」との思いから、2年間ホームステイをしながら世界一周旅行を敢行した。
その後帰国して、選んだ住まいが前出の宮前平のソーシャルアパートメントだった。

「世界を回った理由は、やはり人との交流でした。帰ってきてからも周囲との交流がしづらい“一人暮らし”をする意味がよく分からなかったんですね。帰国後また新しいビジネスを始めようと思っていましたが、普通にしていたら業界の外が分からなくなる。仕事が忙しくなって家と会社の往復となればどうしても出会う人、触れる世界は狭まりますよね。だからこそ無意識にそこにいるだけで世界を広げてくれるソーシャルアパートメントに魅力を感じました」(太田さん)

英語力の維持を目指して移り住んだレジデンシャルホテル

根津にあるレジデンシャルホテル「GRAPHY NEZU」。ここでは入居者とホテル滞在者の交流も根津にあるレジデンシャルホテル「GRAPHY NEZU」。ここでは入居者とホテル滞在者の交流も

こうして、宮前平でビジネスパートナーを得た太田さんだったが、早々に引っ越しをしてしまう。次に選んだ住まいは同じソーシャルアパートメントだったが、少し形態の異なる交流型レジデンシャルホテル。根津にあるこの物件は、64戸の内、半分が入居者、半分は主に海外からの旅行者が滞在する物件だった。

「帰国後、当たり前ですが英語を使う機会が極端に減りました。週に1回は英語を使っていないと英語力が落ちていくのを実感したので、海外からの旅行者とも交流できるという根津の物件に引っ越しました」(太田氏)

「GRAPHY根津」は、英語力を維持したいという太田さんの望みに最適な物件だったという。

「海外からの旅行者がチェックインをすると、僕らの居住空間でもあるラウンジにいるんですよね。彼らもローカルな情報を求めている。だから『ここに行くといいよ』なんてガイドブックとはまた違う情報を教えてあげたり、日常茶飯事的に英語を使っていました。それに世界旅行をした時の友人が月に1回は誰かしら訪ねてきていましたから、日本文化が感じられる上野や野中に近い“根津”という立地も好都合でした」(太田氏)

英語力を維持したいという願いをかなえたこの根津の物件だったが、1つ問題もあった。仕事仲間や友人の住むエリアが東京の西側に集中していたため、少し距離を感じてしまうことだった。そこで、太田さんは護国寺のソーシャルアパートメントに住まいを移す。ここは入居者180世帯の大型物件で、居住者に外国人もいる。こうして帰国後2年近くで3つのソーシャルアパートメントでの生活を体験することになった。

自然な会話が、キッチンから始まる

護国寺のキッチンラウンジ。入居者同士の交流のきっかけを生む大切な場所護国寺のキッチンラウンジ。入居者同士の交流のきっかけを生む大切な場所

宮前平、根津、護国寺の居住体験をした太田さんは、このソーシャルアパートメントの魅力を次のように語る。

「全ての物件に共通して言えるのは、やはりグレードの高いファシリティが揃っていること。護国寺にはキッチンのあるラウンジ、ワーキングラウンジ、ビリヤードラウンジと3つのラウンジがあり、カフェまで併設しています。一人暮らしの賃貸物件の相場内でこれだけグレードの高いファシリティがあることはまずないですよね。フリーランスをしていたこともありましたが、なかなか自室で仕事をできないときも、ラウンジは格好の仕事場でした」(太田氏)

それに、セキュリティを気にする必要がないことも魅力の一つだという。
「実は学生時代に、入居者をネットで集めてシェアハウス的に暮らしたことがあったのですが、物が盗まれるトラブルが発生しました。後で分かったのですが、入居者が盗難していて……。もちろんそんな人ばかりではないですし、今のシェアハウスなら対応策もいろいろ出ていると思います。ただプライベート空間をしっかり分けているソーシャルアパートメントでは、そういった心配が元々ないので気が楽です」(太田さん)

ただ、キッチンやバスルームが共用というのは、使いたいときに使えないなど、ストレスもあるのではないだろうか?

「物件の規模にもよると思いますが、ほとんど感じません。男だからというのもあるかもしれませんが、バスルームで誰かとかち合うというのは、月に1回あるかないか。ここ護国寺はフロアごとにバスルームがあるので、自分のフロアが使えない場合は、別のフロアに行きますし(笑)」

それに、キッチンが共用スペースであるのは、ソーシャルアパートメントの醍醐味だという。
「どの物件もキッチンはオープンキッチンでアイランド式。向かい合って料理をするので、おのずと会話が生まれます。わざわざ意識して話をつくらなくても『何作っているんですか?』といったように、とても自然にコミュニケーションが図れます」(太田氏)

子供が生まれたら、ソーシャルアパートメントに入れる!?

護国寺ではカフェで使えるチケット15,000円分が毎月の家賃に含まれている仕組み。自炊の手間を省いたり、遊びにきた友人にごちそうしたりする護国寺ではカフェで使えるチケット15,000円分が毎月の家賃に含まれている仕組み。自炊の手間を省いたり、遊びにきた友人にごちそうしたりする

ちょうど、取材中にもキッチンで入居者の女性が料理の下ごしらえをしていたが、彼女もラウンジに集まる人々と突発的に鍋を囲んだり、自然に起こるコミュニケーションが楽しいと笑っていた。

「特にこの物件は入居者が多いので、本当に様々な方と交流ができて刺激になります。上野動物園のカピパラ担当の飼育員という方もいて。普通に仕事をしているだけでは、こんな出会いはなかなかないですよね。
僕自身地方から東京に来た口ですが、上京者にとっては最適な環境じゃないでしょうか。普通の一人暮らしで隣の人に声をかけることはなかなかできませんが、ここでは交流がしたいという意識のある人たちが前提ですから、おのずと自分の世界を広げることができる。将来子供ができたら間違いなくソーシャルアパートメントに入れますね」(太田氏)

日本人が世界を舞台に活躍できるように、また世界中の人々に使ってもらえるサービスを目指して「School With」の拡充を図る太田さん。今後もその進展の裏では、日常での様々な人たちとの交流が役立っていくのだろう。

2回にわたって取材を試みたソーシャルアパートメントの魅力。オンラインの“つながり”が加速する現代だが、こうした“オフライン”での人のつながりが、かつての日本のムラ社会とはまた違った形で好影響を与えていることを実感した。

2014年 03月27日 13時12分