まずは体験。屋上から栄のまちを見晴らすのは爽快!
名古屋は住むには快適だが、観光に行きたい都道府県ランキング(※)で愛知県が34位となるなど、観光地としての評価は高いとは言えない。そこで新たな観光資源を創出したいと、30代の仲間たちが手弁当で立ち上げたのが「青空ルネサンス」だ。
未使用の屋上を“公園”にして活用する「青空ルネサンス」とは?
さっそく2023年4月の週末、会場となる大須にあるビルの屋上へ足を運んでみた。
※ブランド総合研究所「地域ブランド調査2022」より
9回目を迎える今回はカフェとコラボレーションし、その屋上を活用するという。上がってみると、想定以上のにぎわいに驚いた。ドリンク片手に語らったり、屋上に出店した洋服のポップアップストアをのぞいたり、子どもが遊んでいたり。『屋上のポケットパーク』というコンセプトの通り、思い思いに寛いでいる。心地よい喧噪の中、風に吹かれながらのインタビューもまた貴重な体験。「青空ルネサンス」を運営する篠元貴之さんと後藤千丈さんに楽しくお話を伺うことができた。
「屋上は非日常感があって気持ちがいいと好評ですが、天候に左右されるのがネックですね。だから企業の参入が少ないのだと思いますが、僕たちは画一的な経済性だけに重きを置かず、『名古屋に新たなにぎわいをつくる』ことに意義を感じて開催を重ねています」(篠元さん)
地形が平坦な名古屋だからこそ、ルーフトップが魅力になる
「青空ルネサンス」とは、屋上を利活用してにぎわいをつくり出すプロジェクトの総称だ。今はテナントビルや企業ビルの屋上を借り、定期開催型のイベントを年3~4回開催している。人工芝や小さな家具を搬入して屋上を公園化し、クチコミやSNSで集客。2020年からスタートし、3年間で9回のイベントを実施してきた。
プロジェクトを立ち上げたのは、建築デザイナーの篠元貴之さん。アメリカ留学や東京の設計事務所での勤務を経て、故郷の名古屋に戻った篠元さんは、「名古屋のまちをもっと魅力的に」との想いから街中に多い小さなビルの屋上に目を付けた。
「東京や大阪、京都でルーフトップカフェなどが増えています。濃尾平野が続く名古屋エリアは起伏が少なく、少し目線が上がるだけでまちの景色が変わります。屋上から俯瞰する視点は新鮮で、楽しめる屋上づくりがまちのにぎわい創出につながると思いました」(篠元さん)
篠元さんは知人の伝手を頼って孤軍奮闘で1回目の開催にこぎ着けたが、「屋上で行う飲み会でしょ?」と言われるなど意図が伝わらない状況があった。そんな時に後藤さんと偶然出会い、意気投合。心強い相棒を得てプロジェクトは加速する。
「名古屋のまち自体に不満はないのですが、“名古屋飛ばし”という言葉があるように、僕も周囲からの評価の低さに課題を感じていました。篠元から第1回の話を聞いて想いに強く共感し、2回目から共同で運営することになりました」(後藤さん)
「マネタイズできるの?」という反応にも、最初の理念を貫き通す
「青空ルネサンス」の推進力は、名古屋で生まれ育った2人の情熱と人脈のみ。2回目以降は、アパレルのポップアップストアや階段を使った写真展などのコンテンツを増やしながら試行錯誤を重ねていった。
「飲食は近隣の飲食店に協力を募り、テイクアウト品を持ち込む方式にしました。カフェとコラボして開催する時にも、他店の持ち込みを許可いただき、地域貢献に賛同いただいています」(後藤さん)
屋上の貸与やテイクアウト協力飲食店に対して、お互いに金銭の授受はない。運営面は篠元さん・後藤さんの会社スタッフや、共感してくれる周囲のサポートを受けつつ、あくまで手弁当で行っている。
開催頻度も、屋上が見つかり次第というフレキシブルなもの。「そろそろ開催を、と考えると不思議なことに紹介が来る」という人脈を頼りに第9回まで継続してきた。クチコミとSNSで毎回50人ほど集客でき順調と思いきや、身近からの反応は芳しくなかったとか。
「一番多いのが『マネタイズできるの?』という言葉です。名古屋のまちをより良くしたい、という純粋な想いはなかなか理解してもらえず…。スポンサー協力を仰いだ時期もありますが、今はそこにはとらわれずに続けています」(後藤さん)
「まちの魅力は多様性が生み出すもので、『お金にならないから』というひとつの価値観だけでは面白いまちになりません。青空ルネサンスを継続し、広げていくために、いずれ行政との連動を視野に入れています。そのためには実績が重要なので、心折れずに続けることが大事だと思っています」(篠元さん)
「青空ルネサンス」がまちに波及する影響は?
ここで「青空ルネサンス」の特徴的な事例を2つ紹介しよう。
まずは第4回のサンデーフラーカフェでの開催だ。第3回の参加者から紹介を受けて、名古屋駅の近くにあるこのカフェが屋上を提供してくれたという。
名駅エリアを見晴らす特別感から常連客からも注目され、当日はカフェ最高収益を記録。屋上の可能性を実感したオーナーは、開催を機に屋上を改装し、常設オープンテラス化へと踏み切った。後藤さんは本業で施工に関わり「名古屋のまちに、屋上利活用がひとつ生まれました!」と手応えを感じている。
もうひとつ、大型の屋上利活用の例として、第6回、第8回には大冷工業とコラボレーションを行った。これまでテナントビルやカフェと連携してきたが、企業とのコラボは初。通常は開放されていないオフィスビルの屋上で味わう非日常感は、また格別だ。
「社内開放イベントなどのオープンな取り組みを行っている企業のため、趣旨に賛同して新入社員による近隣へのチラシ配布から当日の運営まで全面的にサポートしてくださいました。BtoB企業の場合、本社ビルの認知は低いと思いますので、青空ルネサンスが企業と地域を結ぶ触媒になり得るのではと気づきました」(篠元さん)
今回の取材時、サンデーフラーカフェのオーナーをはじめ、過去の開催に尽力したキーマンたちが続々と訪れ楽しんでいる様子が印象的だった。ビルオーナー、主催者、参加者ともに気負わず楽しむ様子が、次の場と人を呼び込むのだろう。
福岡の屋台や台湾の夜市のように。「名古屋の屋上が面白い」が最終目標
「屋上にポケットパークをつくっている」と言うと、「そこへ何しに行くの?」と言われるそうだ。確かにビルの屋上へ遊びに来てと言われても、最初はピンと来ないかもしれない。
「僕らはにぎわい創出という目的がありますが、来る方に目的はいりません。気持ちのいい場所でコーヒーを飲むのもいいし、仕事の打ち合わせでもいい。公園なので自由なんです。情報過多のこの時代に、いろいろ考えずに立ち寄れる場所は贅沢ですよね」(後藤さん)
近年は車道を活用するパークレットが世界的な広がりを見せているが、道路や空地を使うには時間がかかる。その点屋上は、ビルオーナーの協力があればスピード感を持って利活用できる点がメリットだ。現在はイベント型で「青空ルネサンス」を開催しているが、次のステップは常設化して、認知を広げることだという。
「にぎわいにつなげるには、『うちもやってみよう』と屋上の利活用が波及していくことが大切です。そして福岡の屋台や台湾の夜市のように『名古屋は屋上が面白いらしいよ』と評価され、新たな文化として県内外に認知されることが最終目標です」(篠元さん)
名古屋栄エリアのにぎわいの中心は、これまでは地下街だったが、公園の再開発で地上を歩く人が確実に増えた。さらに屋上の利活用が小さなビル群に広がれば、住んで快適、観光して楽しいまちとして名古屋の魅力が増すに違いない。
取材協力/青空ルネサンス
https://www.instagram.com/aozora_rooftop/
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