何をどうすればいいのか、わかりにくいSDGs

三角の屋根が目を引くSDGsハウス。3つの棟がつながった形となっており、前面はガラス張りで開放感のあるつくりだ三角の屋根が目を引くSDGsハウス。3つの棟がつながった形となっており、前面はガラス張りで開放感のあるつくりだ

SDGs(Sustainable Development Goals)とは「持続可能な開発目標」の意味で、2015年の国連サミットで採択された国際目標だ。17の目標(ゴール)が設定されていて、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指している。日本も積極的に取組むとしていて、2019年度からは、文部科学省が「SDGs達成の担い手育成推進事業」といったことも始めているほか、地方自治体や企業にも取組みは広がってきている。

SDGsが地球に必要なことは、何となく理解できるのだが、「実際にはどうすればいいのかわからないという人は多いですよね」と話すのは、株式会社アキュラホーム横浜支店の潮海雅氏と広報課の山本絵美氏。そうしたSDGsに戸惑う人たちに、住まいや暮らし方の中で貢献できることと、その具体的な方法を教えてくれるのが、横浜市都筑区の「SDGsハウス」だ。港北インター住宅公園内にあるアキュラホーム港北展示場の「キラクノイエ」をベースに、株式会社アキュラホーム、イケア・ジャパン株式会社、横浜市の「ヨコハマSDGsデザインセンター」が連携して開設したもので、2019年8月1日から公開している。

住宅の建材や設備、家具とSDGsとの関係は?

リサイクル素材を活用したキッチン(上)。SDGsハウス内には至る所にSDGsな暮らしのアイディアが。この引き出しでは、ごみの分別を促している(下)リサイクル素材を活用したキッチン(上)。SDGsハウス内には至る所にSDGsな暮らしのアイディアが。この引き出しでは、ごみの分別を促している(下)

「キラクノイエ」は、木材の繊維方向が直交するように接着した新素材の「CLT」を使ったモデルハウス。CLTには間伐材なども利用できるので、環境に配慮した素材といえる。SDGsハウスは、この「キラクノイエ」に、イケアで取扱っている家具やキッチン用品、食品などを設え、コラボレーションすることで、17の目標の多くに応えている。
例えば、CLTを使うことで、目標9の「産業と技術革新の基盤をつくろう」と、13の「気候変動に具体的な対策を」に対応する。外部からの熱を遮断する遮熱複層ガラスを窓に使ったり、LED照明を用いたりすることで、7の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を満たしている。

一方、イケアのキッチンは、素材にリサイクル木材やリサイクルペットボトルを使っていて、12の「つくる責任 つかう責任」に適応するものだ。イケアで販売している養殖サーモンは、持続可能な養殖基準ASCの認証を受けていて、14の「海の豊かさを守ろう」に応えている。同じくコーヒー豆はUTZ認証を受けたもの。この認証は環境と社会に対して責任ある方法で生産されたものに与えられ、1の「貧困をなくそう」、16の「平和と公正をすべての人に」につながっている。さらに、ガーデニングを楽しむだけでも、15の「陸の豊かさも守ろう」に貢献することになる。こうした住宅の建材や設備、家具などとSDGsの目標との関係は、簡潔に説明したパネルが用意されていて、誰にでもわかりやすいものになっている。

三者の連携の実現がSDGsハウスの大きな成果

「SDGsハウスを体験してもらうと、SDGsへの貢献はそれほど難しいことではないと理解できますよ」と潮海氏は言う。実際に見学した人からも、「今までSDGsを意識せずに生活していたが、意外に貢献できていたんだ」とか、「これまでの暮らし方を続ければいいとわかった」といった感想が寄せられているそうだ。

アキュラホームではこれまでにも、子どもたちを対象にした食育ならぬ「木育」や、職人の育成、まちづくりなどに取組み、SDGsの目標4の「質の高い教育をみんなに」や、8の「働きがいも経済成長も」、11の「住み続けられるまちづくりを」などに対応してきた。SDGsハウスと合わせると、17の目標すべてに対応していることになるそうだ。
「そうした会社の取組みや姿勢を社外に発信するだけなく、社員にも広めるという役割がSDGsハウスにはあります」と山本氏は話す。SDGsハウスが社内外に与える影響は小さくなく、取組みを通じて会社への信頼感が生まれるなど、営業活動にもプラスに働いているようだ。

今回の取組みの中で山本氏が特に評価しているのが、三者の連携が実現したことによって、目標17の「パートナーシップで目標を達成しよう」を満たせたことだ。「SDGsハウスの役割や働きも重要ですが、取組み自体に意味があると改めて知りました」と山本氏。「連携が大切」という社会的なメッセージを発信できたことで、他社からも注目され、新たな連携の計画も進んでいるという。

SDGsハウスのリビング(左上)と2階ロフトの寝室(右上)。夫婦二人の別邸がコンセプトで、間取りは3LDK、延床面積は120.06m2とこぢんまりしているが、機能性は十分。木材がふんだんに使われ、木の香りが漂う。インテリアコーディネートはイケアが担当。商品の使用イメージを伝えるショールームとしても機能しているという(左下)。壁や床に使われた「CLT」の構造がよくわかる断面。木の繊維が直交するように重ね合わされており、エコなだけでなく強度も十分(右下)SDGsハウスのリビング(左上)と2階ロフトの寝室(右上)。夫婦二人の別邸がコンセプトで、間取りは3LDK、延床面積は120.06m2とこぢんまりしているが、機能性は十分。木材がふんだんに使われ、木の香りが漂う。インテリアコーディネートはイケアが担当。商品の使用イメージを伝えるショールームとしても機能しているという(左下)。壁や床に使われた「CLT」の構造がよくわかる断面。木の繊維が直交するように重ね合わされており、エコなだけでなく強度も十分(右下)

横浜市のコーディネートでスタートした連携

SDGsハウス内に設置されたパネル。建材や設備を変えることは難しくても、食材を選ぶことや暮らし方の工夫など、すぐに取組めることがあると気付かせてくれるSDGsハウス内に設置されたパネル。建材や設備を変えることは難しくても、食材を選ぶことや暮らし方の工夫など、すぐに取組めることがあると気付かせてくれる

今回の連携をコーディネートしたのは、横浜市の「ヨコハマSDGsデザインセンター」だ。横浜市はSDGsへの取組みを積極的に推進していて、国の「SDGs未来都市」にも選定されている。
山本氏によると、「市民の皆様の最も身近にある”住まい”や”暮らし”をテーマに、何かできないか」という呼びかけが、横浜市からアキュラホームとイケア・ジャパンにあったという。ともに以前から環境への配慮に取組んでいたことや、アキュラホーム港北展示場とイケア港北が通りをはさんで向かい合っているという位置関係も手伝って、連携はスムーズにまとまった。こうして3社連携の「SDGsライフデザインプロジェクト」として、SDGsハウスがオープンしたのだった。
SDGsハウスの公開は、9月30日までの実施となっている。

SDGsはどこか遠くの世界の話ではなく、実はごく身近なもの。私たちにできることは意外に多く、日々の暮らしの中で、ちょっと心がけるだけで貢献できる。「SDGsってよく耳にするけど……?」と思ったら、訪ねてみてはいかがだろうか。

2019年 09月25日 11時05分