大阪ガスの実験集合住宅「NEXT21」とは

建物緑化されたNEXT21の外観。第1フェーズの5年間で22種類の野鳥が飛来し、10種類が定着、さらに5種類が巣作りをしたという建物緑化されたNEXT21の外観。第1フェーズの5年間で22種類の野鳥が飛来し、10種類が定着、さらに5種類が巣作りをしたという

「NEXT21」は、近未来の都市型集合住宅のあり方について、環境・エネルギー・暮らしの面から実証・提案することを目的に1993年大阪ガスが建設した実験集合住宅である。ユニークなのは、実際に実験集合住宅として大阪ガスの社員とその家族が居住し、居住環境や設備を体験することで、実験の成果を検証していることだ。

NEXT21の居住実験の意義は3つ
1)環境共生住宅としての実証
 ・大規模建物緑化の実現
 ・環境に配慮した先進エネルギー・設備システムの実証
 ・省エネルギーを追求した住まい方の実証
2)スケルトン住宅・長期優良住宅ストックとしての実証
 ・少子高齢社会に対応し、環境にやさしい住宅の提案と住み方調査による検証
 ・リフォームによる建築システムの検証
 ・コミュニティ形成促進に関する実験
3)住宅機器・設備の実験とモニター評価
である。

これまで、過去第3フェーズまで、5年ごとに分けてテーマ設定をし、上記3点の観点から居住実験を行っている。今回の第4フェーズ(2013~2018年)では、近い未来を設定した「2020年頃の都市型集合住宅」を前提として、人・自然・エネルギーとの関係が深化する「環境にやさしい心豊かな暮らし」を追求することがテーマとなっている。

第4フェーズの取り組みの中で、新たに市場のニーズに応えているデベロッパーとのコラボレーションで2つの住戸を改修する「NEXT21設計パートナー・コンペティション」が開催された。2住戸をあわせて応募総数18案、2013年7月22日に審査会、10月2日にコンペ住戸発表会が行われている。今回、選ばれた2つの最優秀賞住戸の完成をうけて、NEXT21を見学させていただいた。2つの最優秀住戸をレポートする。

「2020年…日本の社会の問題から、住まいを考える」コンペティション

現在の日本は、少子高齢化の加速や単身世帯の増加などの世帯の変化、環境問題の深刻化など、住宅を取り巻く環境や状況が刻々と変化してきている。NEXT21では竣工以来、その問題や課題に対応する住宅を実験を通じて検証してきたが、今回のコンペティションでは、実際に住宅を供給しているデベロッパーとともに、よりリアルで時代のニーズをくみ取った実験住宅を構想し、実現するというものだ。

コンペティションの概要は以下の通り
「NEXT21設計パートナー・コンペティション」
内容:404住戸(81.51m2)と501住戸(91.98m2)の改修にあたり設計パートナーを選ぶ
応募資格:関西で分譲マンション(ファミリータイプ)の供給実績がある企業
最優秀賞・優秀賞とも各住戸1点で、最優秀賞はプロジェクトのパートナーとして企画・設計に参画。

審査の視点としては、「人口減少」「超高齢化」「単身化」が顕在化しつつある社会というお題。404住戸では家族が今より個々の独立性を求めるのか逆につながりを求めるようになるのか、2020年の家族のひとつのあり姿を想定し、その家族が住まう理想的な家を。501住戸では、誰かと住む…それは家族かもしれないし、そうでないかもしれない、もはや家は家族を単位に考えればいいわけではないかもしれない、新しい同居・もしくはシェアの形を求められた。

404住戸の最優秀賞は、株式会社大京と株式会社岩村アトリエが提案した「4G HOUSE」。
501住戸の最優秀賞は、近鉄不動産株式会社と株式会社アトリエ オズミィの「プラスワンの家」となった。

404住戸最優秀賞 「4G HOUSE」
~4つの世代(Generation)、4人の女性(Girls)が暮らす住まい~

大きなダイニングテーブルが印象的な「みんなの部屋」。壁には「4G'sウォール」と名付けられた趣味の小物や本を飾れる棚が設けられている。オープンな空間とキャラクターを活かせる空間の工夫がされていることがわかる。右側の一段上がった部屋は祖母の部屋、私と娘の部屋と続き、奥に母の部屋がある
大きなダイニングテーブルが印象的な「みんなの部屋」。壁には「4G'sウォール」と名付けられた趣味の小物や本を飾れる棚が設けられている。オープンな空間とキャラクターを活かせる空間の工夫がされていることがわかる。右側の一段上がった部屋は祖母の部屋、私と娘の部屋と続き、奥に母の部屋がある

404住戸の最優秀賞受賞理由のひとつは、そのターゲット設定のリアルなシチュエーションにあった。
少子高齢化の進行や離婚率の増加などに伴って、単身世帯や2人世帯といった小規模な世帯が増加する一方、経済的な面でもそれらの世帯が単独では暮らしにくくなっていることに注目し、1つの住まいに1つの世帯ではなく、少人数の複数世帯が集まり暮らす新しい住まいのカタチを提案している。居住の想定は「祖母・母・私・娘」の4つの世代、4人の女性が独立した個人として、また同時にお互いを支え合い、世代間を継ぐ住まいとして提案をしている。

プランでは、部屋の中心に「みんなの部屋」と名付けた大きなダイニングテーブルを設けた4世代のコミュニケーション空間を設定。そこを中心としながら、個々の部屋を確保している。実際に見学してみると、「みんなの部屋」から、一段上がった部屋は、間仕切りを開ければオープンに、閉めれば個人の部屋として機能していることに感心した。また、奥には棚を押すと現れる隠し部屋のような空間「ひとりの部屋」があり、1人の時間もとることができる。

リアルな設定だけに、個々の"暮らしの中で起こる感情"まで想定した設計に細やかな配慮が見られた。審査時には「素直に使いやすい多世代シェアハウス」と評価を受けている。

501住戸最優秀賞 「プラスワンの家」
~1つの空間をシェアする1.5世帯の新しいマンション暮らし~

「1つの空間をシェアする1.5世帯の新しいマンション暮らし」をテーマに時の流れとともに変化する家族の在り方に向き合い、住み続けられる家として設計された501住戸。土間が適度な距離と絆を育む空間として役割を果たしている「1つの空間をシェアする1.5世帯の新しいマンション暮らし」をテーマに時の流れとともに変化する家族の在り方に向き合い、住み続けられる家として設計された501住戸。土間が適度な距離と絆を育む空間として役割を果たしている

501住戸の特徴は、集合住宅を「1.5世帯」に向けてプランしたことにある。
「ワーキングシングルの増加を背景に、60代を中心とした世帯構成は"1.5世帯"(夫婦+単身の子)が増加している。戸建住宅においては、幅広い世帯構成に合わせた住まいが作られ始めているが、集合住宅での基本モデルは限定された1世帯に向けて作られているのが現状である」と捉え、1.5世帯の新しいマンション暮らしを提案した。

プランでは、土間を挟んだ離れの間取りを設け、住まいと住まいをつなぐ土間空間に向かって格子戸を設けることで共用廊下が住戸内に引き込まれている。例えば、最初50代くらいの夫婦と娘が住み、その後、娘に代わり祖母を迎えたり、他人に貸したり、と住み続けられる住戸になっている。また、格子戸を開閉することで、住み手同士の距離感を変えることもできる。実際に見学してみると、土間の幅が実に微妙な距離で設計されており、"中間の間"がもたらす共有もできるし隔絶させる意味も持つフレキシブルさに改めて気づかされた。

審査時には「もうすでに商品化されてもいいようなプランだが、分譲マンションでは存在していない。社会の状況に素直な案」「"はなれ"形式は現代も近未来の社会状況の中でのモデルとしても合理的な明快さをもつ」と評価を得ている。

NEXT21の意義と、未来の豊かな暮らし

今回、第4フェーズでは、高効率な家庭用燃料電池「エネファーム」を活用した「スマートマンションを具現化する次世代エネルギーシステムの実証実験」も行う。
概要は以下の通り
1)固体酸化物形燃料電池(SOFC)住戸分散設置とエネルギー融通
2)デマンドレスポンス対応と逆潮運転
3)停電時自立システムの構築
4)HEMSの導入
5)再生可能エネルギーとの組み合わせ
上記の取り組みによって省エネ・省CO2の更なる追求と自立・節電・ピークカットに対応する実証実験を行っていく。

1993年の竣工より、既に21年が経つNEXT21。
実際のエネルギーを扱う会社が、実証として自ら会社をあげて生活と環境とエネルギーの課題に取り組んでいる姿勢は、お題目としてだけの「未来の豊かな暮らし」ではなく、向かうべき方向に真摯である。環境共生住宅として、スケルトン住宅・長期優良住宅ストックモデルとして、最新の住宅設備・機器のモニター評価の場として、実際に住みながらの居住者と一体となっての実証実験は大きな意義と意味をもつ。

今回の「NEXT21設計パートナー・コンペティション」の感想として、大阪ガス株式会社リビング事業部の目堅さんは、「高齢化や人口減、エネルギー問題など社会を取り巻く状況をネガティブにとらえずポジティブに転換して、暮らしや住まいを考えていくことの大切さに改めて意義を感じました。」と語ってくれた。
これからも、NEXT21がその時代や社会・技術の進歩を映し出し進歩を続けていくことを期待し、注目を続けていきたい。

■取材協力:NEXT21 
http://www.osakagas.co.jp/company/efforts/next21/

NEXT21では屋上から1Fの中庭まで共用部の緑地がつながって見える</br>共用廊下や階段をまちの街路空間に相当すると考え「立体街路」とよんでいるNEXT21では屋上から1Fの中庭まで共用部の緑地がつながって見える
共用廊下や階段をまちの街路空間に相当すると考え「立体街路」とよんでいる

2014年 12月01日 11時10分