地震・煙・台風体験ができる「名古屋市港防災センター」が順次バージョンアップ

▲昭和57年に開館した「名古屋市港防災センター」は、入場無料、体験も無料。レトロなはしご車やポンプ車、消防ヘリには実際に乗車することができ、子どもたちはノリノリ▲昭和57年に開館した「名古屋市港防災センター」は、入場無料、体験も無料。レトロなはしご車やポンプ車、消防ヘリには実際に乗車することができ、子どもたちはノリノリ

地震の揺れ、煙に巻かれる不安、迫る水の恐怖。「名古屋市港防災センター」は、そんな災害をシミュレーションすることで、イザという時に備え、何をすべきか知ることができるスポットだ。

のりもの好きキッズの心をくすぐるのが、阪神・淡路大震災の時に物資を運んだという「消防ヘリ なごや2」の展示。空を飛ぶかのように展示されていて、実際の運転席に乗り込んで操縦桿を握ることができる。
また一角には、消防士、レスキュー隊、警察官の実際の制服とヘルメットを試着できるコーナーも。子ども用のほか、大人用は本物の制服が用意されていて、羽織ってみるとずっしりとした重量感に驚かされるはず。

2015年春、「東日本大震災の経験や、南海トラフ巨大地震の想定を生かして、約15年ぶりにリニューアルを行いました」と、名古屋市港防災センター副センター長・大場玲子さん。2月に、津波や液状化の仕組みが模型で分かる展示コーナーが登場したほか、大地震や津波が起きたときに名古屋の街がどうなるか、といったシミュレーション画像を随時公開予定だという。

さて今回は、「煙避難体験室」「伊勢湾台風を知る」という2つの体験室で、火事と水害の恐ろしさを実感してみることに。初期消火のノウハウについても教えてもらった。

【初期消火】消火器よりも使いやすいものを、キッチンに常備

名古屋市によると、住宅内の火災の多くがコンロによるもので、一番多いのが「天ぷら油火災」だという。
「天ぷら油は350度前後で発火するので、温度を下げれば火は消えていきます。でも、一般的な粉末式の消火器は、粉で空気を遮断して消火する仕組みなので、ふだん使い慣れていないと、なかなか火を消すことはできません」(同センター センター長 吉村隆さん)

なお「消火器」には、加圧式と蓄圧式があることをご存じだろうか? 消火器メーカーでは加圧式の生産を取りやめ、蓄圧式へ移行しているが、身近には「加圧式」の消火器がまだ多く設置されている。

「『加圧式』の消火器は、一度レバーを引くと消火剤が無くなるまで放射され続けます。一方『蓄圧式』は、レバーを押している間だけ消火剤が出るので、効率的に消火できます。
消火器は1本4,000~5,000円ほどで、処分するにも1,000円ほどかかるなどわりと高価です。使いこなす自信のない方は、簡易な消火アイテムを各部屋に備えておきましょう」(吉村さん)

吉村さんによると、一般家庭で常備するといいのが「強化液の入ったスプレー」。
「スプレーを押すと強化液を20秒以上放射できます。2~3m離れたところからピンポイントで火元を狙えるので、初めてでも使いやすいと思います」(吉村さん)

一例として見せてくれたスプレーは、ホームセンターで800円前後とお手軽。キッチンに常備する時は、「必ずラミネートを破いておく」「有効期限をふたにペン書きしておく」ことが大切だそう。

▲左:圧力計の付いている消火器が「蓄圧式」で、レバーを押す間だけ消火剤が出るタイプ。右:エアゾール式の簡易消火具。火元をめがけて放射できるので、室内で使いやすく、後片付けも簡単だ▲左:圧力計の付いている消火器が「蓄圧式」で、レバーを押す間だけ消火剤が出るタイプ。右:エアゾール式の簡易消火具。火元をめがけて放射できるので、室内で使いやすく、後片付けも簡単だ

【火事避難】一酸化炭素中毒が一番危険。場合によっては消火より避難を

▲「みなと食堂」の扉を開けて、煙避難体験へ。水でぬらしたハンカチで鼻と口をふさぎ、姿勢を低くして扉を開けていく。同じ扉が続く迷路は、写真よりもう少し薄暗く、なかなか冷静ではいられない▲「みなと食堂」の扉を開けて、煙避難体験へ。水でぬらしたハンカチで鼻と口をふさぎ、姿勢を低くして扉を開けていく。同じ扉が続く迷路は、写真よりもう少し薄暗く、なかなか冷静ではいられない

名古屋市港防災センターには、昭和30年代のレトロな食堂を模した「煙避難体験室」がある。特殊な煙が充満した迷路に挑戦してみたところ、視界が確保できる明るさがあったため「ここはさっき通った」「この扉は開けた」と分かり、何とか脱出できた。でも、もし夜で真っ暗だったら? 確実にパニックになるに違いない。

「火災が発生したら、非常口は停電時でも約20分点灯するので、目印にして避難してください。ドアを開けようとした時にドアノブが熱くなっている場合は、その先は激しく燃えていることが想定されるため、進まないでください。火事の延焼を防ぐために、通ってきた扉を閉めていきましょう」(大場さん)

また大地震による火災の場合は、「消火活動よりも、一刻も早く避難してください」と大場さんはきっぱり。「一酸化炭素によって意識を失い、命を落とすことが多いです。震災時には余震の危険性もあるので、火災が発生したら無理して消火をしないで、すばやく外へ避難しましょう」と教えてくれた。

地震は備えが大切だが、火事の場合は避難訓練の大切さが身にしみた。出かける時や旅行先では「非常口」をチェックする習慣を身につけたい。

【高潮と津波】鉄筋コンクリート造の3階以上に避難を

昭和34年、風水害としては、日本で最悪の死者行方不明者5,098人を記録した「伊勢湾台風」。
伊勢湾台風で被害が拡大したのは、名古屋港で海抜3.45mを記録した「高潮」によるところが大きい。高潮が貯木場を襲い、名古屋市内に原木が大量に流れ込んで、住宅を破壊するという悲劇が重なった。

「近年は、伊勢湾台風(929.5ヘクトパスカル)と同じような規模の台風が発生しています。日本は運よく進路を外れていますが、いつ直撃してもおかしくありません」と、大場さんは警鐘を鳴らす。

「台風のコースは、1日半前に気象庁から発表される進路から大きく外れることはないので、準備ができます。風が吹いてきたら家の中のなるべく2階以上で過ごしてください。海抜の低いエリアでは、伊勢湾台風のように車やモノが押し寄せてくることもあるので、鉄筋コンクリート造の3階以上に避難すると、より安全性が高まります」(大場さん)

もうひとつ気になるのが、南海トラフ巨大地震による津波の対策。
「名古屋市の津波水位は最大で3.6mと想定されているので、台風と同じく鉄筋コンクリート造の3階以上に避難してください。一時的な避難場所として、名古屋市では『津波避難ビル』を指定しています」(大場さん)

同センターでは、伊勢湾台風が襲来する様子を、飛び出す3D映像で体験することができる。
4月からは新たな映像プログラムも登場。「東日本大震災と大きく違うのは、名古屋市の場合、津波が川を遡上して、海から離れた街中へも被害を及ぼすと想定されていること。新しいプログラムでは、津波の様子をシミュレーションすることができます」。

巨大地震の備えを促すために進化し続ける防災センター。ぜひ賢く活用してみてほしい。

取材協力/名古屋市港防災センター

▲伊勢湾台風を知る「3Dシアター」。畳に座るといきなり停電し、ふすまがガタガタ揺れる。次第に風雨の音が大きくなり大量の水が家の中へ! 物語仕立ての映像で、台風の恐怖を体感することができる。貴重な写真展示も▲伊勢湾台風を知る「3Dシアター」。畳に座るといきなり停電し、ふすまがガタガタ揺れる。次第に風雨の音が大きくなり大量の水が家の中へ! 物語仕立ての映像で、台風の恐怖を体感することができる。貴重な写真展示も

2015年 04月06日 11時08分