4月から8月までで318軒の宿泊施設が廃業

通常であれば、国内外からの観光客でにぎわう清水寺近辺もこの静けさだった(2020年3月下旬撮影 )通常であれば、国内外からの観光客でにぎわう清水寺近辺もこの静けさだった(2020年3月下旬撮影 )

2020年4月16日、新型コロナウイルスの感染が広がるなか全国に拡大された緊急事態宣言。ステイホームが求められ、人の流れと経済はストップ。一時は、人出が少なくなったまちの映像が繰り返しニュースで流されていた。

夏以降は、政府が実施する需要喚起策「Go Toキャンペーン」などにより、旅行を楽しむ観光客、家族や友人と外食をする人が少しずつ増えてきた。とはいえ、日本各地のさまざまな産業は今なお甚大な打撃を受けている。

日本有数の観光都市・京都市の宿泊業界が受けたダメージも大きかった。京都市観光協会データ月報 (2020年4月 /5月28日更新)によると、京都市内56ホテルにおける2020年4月の外国人延べ宿泊客数は、前年同月比99.7%減の1054人。日本人宿泊客数も前年同月比89.7%減を記録した。

宿泊客数はこの後、ゆるやかに回復しているが、この減少幅は宿泊施設の事業継続に影響を及ぼすことになる。京都市民泊ポータルサイト(2020年8月末日現在 速報値 )によると、コロナ禍にあった4月から8月までの旅館業法の許可施設(旅館・ホテル、簡易宿所)の廃業数は、実に318軒に上っている。

この現状を踏まえ、8月、京都市は新たな制度を開始。 内容について、京都市都市計画局まち再生・創造推進室の本間昌次朗さんに話を伺った。

ゲストハウスを戸建て住宅に、ホテルをマンションに

「多くの宿泊施設が廃業したことにより心配されるのが、地域の空洞化です。建物が使われずに放置されたままだと、コミュニティの活性化が阻害されますし、治安の面で不安を感じる方もいらっしゃいます」と本間さんは話す。

「では、どうすればいいのか。その建物を再利用して住宅に生まれ変わらせることができれば、まちの人口は増え、にぎわいが生まれます。そこで京都市が始めたのが『地域コミュニティ活性化に資する新たな住まい創出支援事業』です」

これは、廃業または廃業危機にある宿泊施設を住宅等に転用する場合、必要となる費用の一部が補助される制度。補助対象は旅館業法に基づく旅館・ホテル、簡易宿所で、2020年4月1日以降に転用工事に着手予定のものと定められている。補助を受けられるのは、宿泊施設を住宅等に転用しようとする所有者、借主といった人たちだ。

「ゲストハウスとして営業していた一軒家を一戸建ての住宅にしたり、いくつもの客室を持つホテルをマンションなどの共同住宅にしたりといった例が考えられます。1軒でも多くの施設に利用していただきたい制度です」

台所の設備導入に20万円かかれば、補助費用は15万円

補助金の上限額は建築物によって決められている。京町家の場合は100万円、戸建て住宅・長屋は15万円(いずれも長屋の場合は別途定めあり)。共同住宅は15万円×改修前の客室数または300万円のうち、どちらか低い額となっている。

補助の対象となるのは、工事費と設計費等。

工事費はかかった費用の4分の3の補助が受けられ、住宅設備改修工事(台所設備、浴室設備、洗面所設備等)、内部改修工事(壁、床、天井等)、外部改修工事(屋根、外壁、建具等)といった6項目を設定。

設計費等の上限は15万円。設計料、建築確認申請手数料等3項目がある。

「例えば台所の設備で戸当たり20万円を要した場合の補助費用は戸当たり15万円。設計料なら、20万円かかっても補助されるのは上限の15万円となります。もちろん、上限額の範囲内での補助となります」

上/補助対象となる建築物、補助上限額 下/補助対象費用 ※いずれも京都市情報館「地域コミュニティ活性化に資する新たな住まい創出支援事業」の申請受付等について(広報発表)より上/補助対象となる建築物、補助上限額 下/補助対象費用 ※いずれも京都市情報館「地域コミュニティ活性化に資する新たな住まい創出支援事業」の申請受付等について(広報発表)より

地域の一員として、掲示板を立てたり、ごみ置き場の設置を提案・実践

京都市都市計画局まち再生・創造推進室空き家対策課長の本間昌次朗さん京都市都市計画局まち再生・創造推進室空き家対策課長の本間昌次朗さん

使われなくなった宿泊施設を住宅にすることでまちの空洞化が避けられたとしても、課題はまだある。

「地域コミュニティづくりに関心がない方ばかりだと活性化にはつながりません。住人の皆さんが自分も地域の一員であるという意識を持ってもらえるように、補助対象者に協力をお願いしていることが2点あります」

一つめは、改修した建物の住人に年間行事や自治会の会費といった町内会の活動に関する情報を提供すること。二つめは、地域コミュニティに関する取組みを提案・実践すること。例えば、敷地内に町内会活動の情報発信のための掲示板を立てる、ごみ置き場のスペースを提供する、防災倉庫を設置するなどだ。

「補助を受けてから10年間は、改修した住宅等を別の用途に使用しないという条件も設けています。これは長く地域に根付き、コミュニティを形成していっていただきたいから。ウィズコロナの時代、この補助事業が地域力の発展につながればと考えています」

「地域コミュニティ活性化に資する新たな住まい創出支援事業」の申請受付は2020年12月28日(月)まで。※補助申請の総額が予算の上限に達した場合等は、期間中であっても受付が締め切られる場合があります。

詳しくは、京都市情報館ホームページで確認を。
https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000273504.html

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