京都市の宿泊者数は日本人、外国人とも過去最高に

いま京都がアツい。夏場に暑いのは昔からだが、年間を通して観光客数が増え続けているのだ。アメリカの大手旅行雑誌「トラベル・アンド・レジャー」による読者投票ランキング「ワールドベストアワード」で、京都市は2014年、2015年と2年連続で1位だったほか、2016年には同誌の「世界で最も文化的魅力の高い観光都市」の部門で1位になっている。

観光客数が増えれば当然ながら宿泊需要も増えるが、それに伴ってクローズアップされているのが「民泊問題」である。今回は京都市における民泊への対応や取組みをみていくことにしよう。

まず京都市の観光客数だが、市が毎年まとめている「京都観光総合調査」によれば、2016年の日本人観光客数は約4,861万人、外国人観光客数は約661万人で合わせて約5,522万人となった。3年連続で5,500万人を超え、2000年時点の約4,051万人と比べれば4割近い増加だ。

また、2016年の宿泊客数は約1,415万人、そのうち外国人が約318万人となり、いずれも過去最高を更新した。この数字を2000年時点と比べれば、全体では約5割の増加、外国人に限るとおよそ8倍である。下のグラフでも一目瞭然だが、外国人宿泊客数における2013年以降の急増ぶりが目立つ。

京都市の宿泊客数は近年、外国人が急増している(京都観光総合調査をもとに作成)京都市の宿泊客数は近年、外国人が急増している(京都観光総合調査をもとに作成)

「違法民泊」宿泊者は年間約110万人!?

ただし、上記のグラフデータには「無許可民泊施設での宿泊者数」が含まれていないことに注意が必要だ。京都市では、2015年時点における無許可民泊宿泊者数を約110万人程度と推計している。その後さらに増加しているとみられるが、上のグラフで外国人宿泊客数の伸びが2016年に鈍化しているのは、無許可民泊の利用と無関係ではないだろう。

その一方で、京都市内の旅館業施設数の推移をみると、2012年度から2016年度にかけて、ホテルは増加傾向なのに対して旅館は約1割減少している。それに対して簡易宿所(許可を受けた民泊施設など)は360施設から1,493施設へと急増し、とくに2016年度中の増加が際立つ。

旅館業法に基づく許可施設の定員数は2016年度末時点で1年前より16.7%増加したようだが、それでも宿泊需要の増加には追いついていない状況であり、市の調査に対して「京都に泊まりたいけど泊まれない」と回答する外国人の割合も15.9%に達するという。

京都市では2020年時点における宿泊客数を1,640万人〜1,830万人以上(日本人:1,200万人、外国人:440万人〜630万人以上)と予測し、それに対して不足する客室数(今後必要な客室数)を約1万室とした。

一般的には、客室数を増やすための一つの方策として、民泊施設を増やすことが考えられる。だが、民泊は無許可で営業することによってさまざまな問題を生じさせるため、これを野放しにするわけにはいかない。そこで京都市ではどのような「民泊」対策をとっているのか。京都市の担当者にお話を伺った。

旅館業の許可を受けた「簡易宿所」が急増している(京都市の資料をもとに作成)旅館業の許可を受けた「簡易宿所」が急増している(京都市の資料をもとに作成)

通報を受け現地調査をしても物件特定ができない「違法民泊」がおよそ半数

無許可民泊の現状はどうなっているのか。

「旅館業法による許可を受けた『簡易宿所』は2017年3月末時点で1,493施設となっています。その一方で、許可を受けていない『違法民泊』は民泊仲介サイトの情報などから推計すると、5千件程度あると考えられます。これらの『違法民泊』を許さない取組みを進めるため、2015年12月に庁内に民泊対策プロジェクトチームを立ち上げ、2016年7月には『民泊通報・相談窓口』を設置しました」

「また、許可施設であっても宿泊客の管理をしっかりと行わないなど、モラルに欠ける営業者が増え、市民とのトラブルが絶えないことから、宿泊サービスの提供にあたっての市のルールを明確化した『京都市旅館業施設における安心安全及び地域の生活環境との調和の確保に関する指導要綱』を策定し、2016年12月から実施しています」

どのように「違法民泊」に対応しているのか。

「2016年度は、市民の皆様からの通報に基づいて延べ2千回以上の現地調査を実施しました。指導対象となった1,159施設のうち574施設に対して指導を行い、このうち300施設の営業を中止させ、52施設を是正後に旅館業の許可を取得させました。しかし、指導対象となりながら誰が営業しているのか不明、あるいは物件の所在自体が分からないなど、指導ができない施設も半数近くあります。インターネットの仲介事業者を通じ匿名で集客して営業できる民泊は、対策を進めるうえでの大きな障害となっています」

「また2017年度から、各区役所にあった旅館業の営業許可などを含む生活衛生業務や飲食店の営業許可などの食品衛生業務の衛生部門を『医療衛生センター』1ケ所に集約したことに合わせて、民泊対策の専任チームを設置しました。さらに2017年6月からは、違法な『民泊』施設に対して効率的、かつ、効果的に適正化指導を行うため、施設の所在地や営業者などを特定する調査を、独自のノウハウをもつ民間事業者に委託し実施しています」

旅館業法の許可を受けた民泊は増やしていきたい

2016年12月1日に実施した「京都市旅館業施設における安心安全及び地域の生活環境との調和の確保に関する指導要綱」の主な内容や目的は。

「これは民泊についても旅館業法の許可を受けることはもちろん、旅館業法以外の法令も遵守することを前提としたものです。まず、建物所有者が知らないうちに賃借人が民泊を始めるなど、建物使用の規約やルールに反して民泊をすることがないように、事前に民泊として使用しても良いのかどうか確認することを定めています。そして、近隣住民が知らないうちに気がついたら民泊になっていたということを避けるため事前に計画を公開すること、自治会などに対して営業者や管理者等の連絡先を周知すること、宿泊客が間違って民家を訪れないよう施設に分かりやすい標示をすること、宿泊者による迷惑行為の防止や対処などを定めています」

【指導要綱の主なポイント】
□ 施設使用の可否の確認(許可申請前)
□ 計画の公開(許可申請日の20日前まで)
□ 連絡先の周知(営業開始前に自治会などに対して)
□ 施設の明示等(利用者が分かりやすいように看板などを標示)
□ 玄関帳場での面接等の実施
□ 迷惑行為の防止
□ 迷惑行為への対処

「民泊では周辺住民がさまざまな不安を感じているケースも多く、話がこじれる前に営業者がしっかりと対応することが大事です。そのためにもきちんとルールに沿って営業許可を受けたうえで民泊の営業をしてもらいたいと考えています」

宿泊客向けに京都市が用意したパンフレットの例(一部分を抜粋)。日本語以外に4ヶ国語で表記されている宿泊客向けに京都市が用意したパンフレットの例(一部分を抜粋)。日本語以外に4ヶ国語で表記されている

民泊新法にはどう対応する?

2017年6月9日に住宅宿泊事業法、いわゆる「民泊新法」が成立し、2018年1月にも施行される見込みとなっている。また、旅館業法そのものも民泊を視野に入れて基準が緩和される予定だ。国の民泊緩和方針に対して、京都市はどのように対応していくのか。

「民泊新法にどう対応するのかは条例制定も含めて検討しています。京町家を含む空き家活用といった側面もありますが、いずれにしても宿泊客と周辺住民の安心安全の確保と地域との調和が図られることが大事です。『良質な民泊』にしてもらうためにも、民泊を営業する際には専業施設として宿泊サービスの提供に最適な旅館業の許可を取得した施設にしていただきたいと思っています」

京都市では伝統的な京町家の減少も大きな問題になっているというが、その活用についてはどのように取組んでいるのだろうか。

「市では2012年から京町家の保存と活用推進を図るため、簡易宿所として許可を受ける際の基準を緩和しました。宿泊客への適正な対応ができることを要件にフロントを設置しなくても良い、管理者などが常駐しなくても良いといった改正です。2012年度に6施設だった京町家の簡易宿所は、2016年度に370施設まで増えました。しかし、京都に住んでいない方が京町家を買って経営に乗り出したものの、営業者の対応が不適切なケースもあり、何らかの対策を講じないといけないかもしれません」

京都市では2015年3月に「農家民宿開業に係る規制緩和」の運用を開始している。また、地域の魅力を生かし、地域の活性化に寄与する上質な宿泊施設を積極的に誘致するため「京都市上質宿泊施設誘致制度」を創設し、2017年5月1日から受付を開始している。これは従来、宿泊施設の建設ができなかった住居専用地域、工業地域、市街化調整区域でも、市が定めた要件を満たす「質の高い宿泊施設」の特例開業を認める措置の活用を検討するものだ。

「ラグジュアリータイプ(和の文化体験等、上質な宿泊体験の提供)」「MICEタイプ(ものづくり産業の活性化に寄与する機能をもつもの)」「地域資源活用タイプ(地域資源の活用による地域の農林水産業や観光等の振興、歴史的価値のある既存建築物を活用するもの)」を想定しているという。

「いずれにしても、これからますます増加する宿泊ニーズに応えるよう、安心安全の確保と市民生活との調和を前提とした、京都らしいおもてなしができる良質な宿泊施設を増やして宿泊客に満足してもらうのと同時に、違法民泊はなくしていかなければなりません。そのためにも無許可営業の宿泊施設については毅然とした態度で対応し、一層の適正化を図っていきたいと考えています」

良質な合法民泊は増やし、違法民泊はなくしたいということだが、京都ならではの難しい問題もあることが分かった。違法な民泊施設によって京都、ひいては日本のイメージが損なわれたり、近隣住民とのトラブルによって無用な軋轢や摩擦が生じたりしないことを切に望む。

京都らしいおもてなしで宿泊客に満足してもらえるような民泊が増えることを期待したい京都らしいおもてなしで宿泊客に満足してもらえるような民泊が増えることを期待したい

2017年 08月28日 11時05分