コロナ禍で増えた家時間。子育て中のご家族は「わが家の安全性」を考えたい

ステイホーム期間中にホームセンターやインテリアショップが混雑するニュースなどもあったが、長い“おうち時間”に合わせて、わが家を見直し、改善した方も少なくないのでは?ステイホーム期間中にホームセンターやインテリアショップが混雑するニュースなどもあったが、長い“おうち時間”に合わせて、わが家を見直し、改善した方も少なくないのでは?

日常が大きく変わり「新しい生活様式」での暮らし方が求められる中、家で過ごす時間が長くなっている方も多いだろう。そうなると、家の中に目が向き、自宅の“アレコレ”が気になるものでは?
かくいう筆者も、大掃除以上の特大掃除を行い、部屋の大幅な模様替えをし、ガーデニングをはじめ、おうちBBQ用品を揃え…と、これまでできずにいた自宅改造(?)に時間を費やした。おかげで、今までよりも家で心地よく過ごせるようになっている。

「わが家」そして「家族」と向き合う時間を大幅に増やした、このコロナ禍。

休校や休園で子どもとたくさんの家時間を過ごしたであろう子育て世帯、特に小さいお子さんをお持ちのご家庭では、予期せぬ行動にヒヤリと肝を冷やす場面もあったかもしれない。そして、これまで気付かなかった“自宅内の危険箇所”を知るケースもあっただろう。

日本では、1歳以上の子どもの死亡原因上位に「不慮の事故」がある。厚生労働省の調査によると、2~3歳の子どものケガや事故が一番多く、中でもその多くが『家』で起きているそうだ。※2016年厚生労働省人口動態統計より

そこで今回は、「家の中で注意が必要な子どもの事故」を考えてみたい。
事故による子どもの傷害予防を目的に活動しているNPO法人【Safe Kids Japan】事務局の太田由紀枝さんに話を伺った。

従来の生活から「新しい生活様式」へ。その“違い”が招く事故の懸念

【Safe Kids Japan】のホームページでは、子どもが安全に家で過ごすためのアドバイスが公開されており、『転倒予防』『誤飲予防』『窒息予防』など、それを見ただけでも家のいろいろな場所に「まさか」が潜んでいることが分かる。

コロナ禍における、子どもの家時間について太田さんに聞いた。

「休園・休校で子どもも家で過ごす時間が長くなっているため、家でのケガや事故への対策が必要です。子どもが一人もしくは子どもだけでお留守番をするご家庭もありますし、保護者の目がない中で危険性も高まってしまいます。

例えば、お部屋の換気が推奨されるため窓を開けることも多いですが、窓の下にベッドやソファをはじめ何か踏み台にできるような物があると、そこに上って窓から転落してしまう恐れがあります。
ベランダも同様です。柵を乗り越えて転落することのないよう、まずは子どもだけでベランダに出られないよう補助的な鍵を取り付けてください。その上で、ベランダにも踏み台になるような物は置かない、エアコンの室外機は柵から60cm以上離して置く、といった対策が必要です。
また、手洗い用の洗浄剤や手指消毒用の消毒液を飲んでしまうケースも。作った消毒液をペットボトルなど飲み物の容器に入れ、それを間違って飲んでしまうことも考えられます。
テーブルの上の電気ケトルがテーブルクロスを引っ張ったときに倒れ、中の熱湯がこぼれてやけどをしてしまうことだってあるかもしれません。

スーパーにお買い物に行く際も、複数人での入店を避けたい時期ですから、子どもをおいて出かける保護者の方もいらっしゃるでしょう。その後をお子さんが追って家から飛び出し車にひかれてしまうなどの事故に繋がる懸念もあります。
先日、コロナ疎開で祖父母宅で過ごしていたお子さんがトラクターの下敷きになって亡くなってしまう痛ましい事故がありましたが、子どもたちが普段とは違う時間帯を家で過ごすことや、新しい生活環境・生活習慣に身を置くことも予期せぬ危険を孕んでいるのです」(太田さん)

バルコニーや窓など高所からの転落防止には、「足がかり」を作らないことが必要。窓のそばにソファやベッドなど踏み台になるものは置かず、施錠を。バルコニーの植木鉢やプランター、エアコンの室外機も要注意だ/Safe Kids Japanホームページより引用バルコニーや窓など高所からの転落防止には、「足がかり」を作らないことが必要。窓のそばにソファやベッドなど踏み台になるものは置かず、施錠を。バルコニーの植木鉢やプランター、エアコンの室外機も要注意だ/Safe Kids Japanホームページより引用

夏の暑い時季に懸念される子どもの事故やケガ

夏には悩ましいマスク着用。推奨されてはいるものの、子どもの場合は無理な着用を避けた方が良さそうだ夏には悩ましいマスク着用。推奨されてはいるものの、子どもの場合は無理な着用を避けた方が良さそうだ

本格的な暑さを迎えるにあたり、子どものマスク着用についても注意が不可欠だ。

「これから私たちは初めて“マスクありの夏”に直面しますが、特に子どもは、熱中症をはじめ窒息や視野不良、皮膚疾患などを引き起こす可能性があります。
顔色や呼吸、発汗状態などお子さんの様子を見ながらマスクを着用させるようにしてください。
日本小児科医会が『2歳未満の子どもにマスクは不要』とメッセージを出していますが、特に小さいお子さんには無理に着用させる必要はありません」(太田さん)

加えて、熱中症についてはマスク以外でも気を付けたい。
親子で車で買い物に出かけ、三密を避けるために子どもを車に残して親だけが入店したとする。「少しの時間だから…」と思っていても、入場制限や店内が混んでいて予想以上に時間がかかってしまい、車内でお子さんが熱中症になってしまうことも十分考えられる。

「夏場は水の事故も心配です。この夏は開設を取りやめる海水浴場もあり、安全対策が例年とは異なる場合がありますので、事前にその海水浴場の安全対策を確認するようにしてください。川や湖で遊ぶ場合も、遊泳エリアが確保されていて、安全対策がとられている場所で遊びましょう。いずれの場合もライフジャケットは必ず着用してください。

ご自宅で楽しむビニールプールもご注意を。浅いし溺れることはないのでは?と思われがちですが、水深5cmの水たまりでも子どもは溺れてしまいます。子どもがプール内で転び、そこで鼻と口が覆われればパニックになってしまい、重い頭を上げることもできずに溺れてしまうケースも珍しくありません。『必ず近くで見守ること』『プール使用後は必ず水を抜くこと』を心がけ、午前と午後で遊ぶ場合でも水をそのままにせず、都度抜くようにしましょう。

そして、水を抜いたプールをベランダの手すりに立てかけないようにもしてください。プールを足がかりにして手すりを越えてしまうこともありますから」(太田さん)

「目の届く範囲」では安心できない、子どもの見守り

子どもを『目の届く範囲』ではなく『腕の届く範囲』で見ることを心がけたい子どもを『目の届く範囲』ではなく『腕の届く範囲』で見ることを心がけたい

太田さんによると、マンションの一室で子どもたちの“転ぶまでの時間”を調べる実験があり、その結果は『平均0.5秒』だったそう。それほどあっという間に「ヒヤリ」は起こるのだ。

「目の届く範囲で子どもを遊ばせる」「子どもから目を離さない」などと言うが、たとえ見ていても、しっかり見守っていても、あっという間に事故は起きてしまう。
だからこそ、「目ではなく『腕の届く範囲』で子どもを遊ばせてほしい」と太田さんは話す。

「例えば、ベランダでプール遊びをするお子さんを“目の届く範囲”のキッチンから見ているとしても、調理でちょっと目を離した間に事故は起きてしまいます。プールで滑って転ぶのが0.5秒のような短い時間では、見ていてもすぐに抱きかかえることはできません。

暮らしの中では、ずっと見守っていられない事や目を離してしまうのは仕方がない場面もありますし、予期せぬ行動をするのが子どもですから、気を付けていても事故は起きてしまいます。
なので、『命にかかわる事故にしない』『取り返しのつかない事故にしない』ことがとても大切。そのための備えをしていただきたいのです。

私たちが行った調査では、洗濯用洗剤を床に置いているご家庭が6割ありました。好奇心旺盛な子どもは目にしたものを何でも触ったり口にしますから、間違って飲んでしまうこともあります。その行動を考えて家のモノを置くことや、転落事故の多いベランダの安全性を見直すことも欠かせません。
公園に遊びに行くなら、地面がコンクリートではなく砂やウッドチップのところで遊ばせるとか、おもちゃを選ぶときに、少し割高になったとしてもキッズデザイン賞を受賞している安全なおもちゃにするなども心がけの例になるかと思います」(太田さん)

社会の中で一番“他人の目が届かない”場所、それが各家庭

子どもの事故やケガの多くは家庭内で起きている訳だが、「家は各家庭のプライベート空間。外からは見えにくく、事故やケガについても顕在化されにくい」と太田さん。
不幸な死亡事故ならば報道され、救急車が出動した事故やケガについても内容が記録されるが、そこまでは至らない事故・ケガについては内容把握が難しいのが現状だ。

また、筆者自身も経験があるが、例えば子どもが家電製品でケガをしたとすると、親は「しっかり見ていなかった私がいけなかった…」と自分を責め、「この子の使い方が悪かったのかも…」と子の行動に原因を求めたりする。製品を疑問視して販売会社などに意見する人は少数派で、「クレーマーと思われたら嫌だ」「お門違いかもしれない」と声を上げない人が多数派のようにも思う。
もし、「こんな事故があったから改善や注意喚起をしては?」と伝えていたら、その声が反映され、誰かのお子さんを同じ事故から守れることだってあるかもしれない。

事故が起きないことが一番だが、起きてしまうのが事故。もし不幸にも事故が起きてしまった場合、生死に関わるような重大なケガをしないように予防するのが大切…。【Safe Kids Japan】が「事故予防」ではなく「傷害予防」としているコンセプトもそのあたりにあるという。
そのためには、『家のどんな場所・どんな場面で、どんな危険があったのか』の事例を、同じく子どもを持つ大人たちに向けて“ヒント”として発信する必要性も感じた次第だ。

現在【Safe Kids Japan】では、転落事故の多いベランダに注目し、住設メーカーとの安全なベランダ開発や、ホームインスペクターと組んで子どもに安全な住まいづくりを進めているそう。
そして今後は、物件情報サイトなどにもどのような「子どものための安全対策」がとられているかが明記され、子育て中の保護者の方がそれを参考に住まいを選べるようになってほしい…とも太田さんは話していた。

家時間が長くなるコロナ禍を機に、「気を付けましょう」では事故は防げない。効果的で実践的な事故予防を伝授と題した動画も期間限定で無料公開されている。家の中にどんな危険・どんな「まさか!?」が潜んでいるかの参考にしてはいかがだろうか?

■取材協力■
Safe Kids Japan https://safekidsjapan.org/

2020年 07月19日 11時00分