日本の不動産ストックの4分の1は公的不動産

公的不動産(Public Real Estate)という言葉をご存じだろうか。これは国や地方公共団体などが保有する不動産のことで「PRE」と略されることが多い。

日本の不動産ストックは約2,400兆円あり、そのうち約590兆円(24.6%)を占めるのが公的不動産と推計されている。つまり日本の不動産価値の4分の1は公的機関が保有しているのだ。

今後は人口減などによる税収の減少、既存不動産の老朽化といった財政状況の変化を踏まえ、公的不動産の有効活用がより一層求められる。しかし、不動産のプロではない地方公共団体だけで、それを行うのは限界があるのも事実。そこで近年は民間事業者と連携して、公共施設と民間施設を併設させた形で整備を行う事例が増えてきている。その多くは民間事業者の提案によって、その再開発ノウハウを活用する事例だ。

このような背景から、国土交通省は公的不動産の民間活用の拡大に向けて、地方公共団体と民間事業者とのマッチングを支援する「公的不動産(PRE)ポータルサイト」の運営を開始した。地方公共団体が開示している公的不動産の売却・貸付け情報や、民間提案を受け付けている窓口、地方公共団体からの相談を受け付ける窓口などを提供している。
http://tochi.mlit.go.jp/preportalsite/pre-portal-site/preportalsite

公的不動産(PRE)ポータルサイトのトップ画面。ここから「売却・貸付け情報」「総合評価一般競争入札/公募型プロポーザル情報」「民間提案窓口」を確認できる。また、地方公共団体から公的不動産(PRE)の有効活用に関する相談をすることも可能公的不動産(PRE)ポータルサイトのトップ画面。ここから「売却・貸付け情報」「総合評価一般競争入札/公募型プロポーザル情報」「民間提案窓口」を確認できる。また、地方公共団体から公的不動産(PRE)の有効活用に関する相談をすることも可能

各地方公共団体の公的不動産への具体的な取り組みを紹介

「売却・貸付け情報」は、各地方公共団体が公表している公的不動産の売却や貸付け情報サイトへのリンクだ。ここをクリックすると北海道から沖縄県まで全国の情報を一覧で確認でき、さらに各地方公共団体が運営する公的不動産への具体的な取り組みを紹介するサイトへ飛ぶことができる。

茨城県鹿嶋市の「鹿島に住んでみませんか?」や神奈川県横浜市の「ヨコハマの土地売ります!」などリンクタイトルもおもしろい。後者へ飛ぶと、横浜市内の市有地の公募売却情報が確認できた。

なお、公的不動産(PRE)ポータルサイトには「総合評価一般競争入札/公募型プロポーザル情報」という窓口もある。こちらは「○○駅周辺の商業用地の販売について」といったように「売却・貸付け情報」よりも具体的なピンポイントの不動産情報だ。

関東の「売却・貸付け情報」。様々な地方公共団体が公表している情報サイトへのリンクされている関東の「売却・貸付け情報」。様々な地方公共団体が公表している情報サイトへのリンクされている

公的不動産の有効活用の提案を受け付ける窓口

「民間提案窓口」は、民間からの公的不動産の有効活用の提案を受け付けている地方公共団体の一覧だ。2016年6月現在、11の地方公共団体の情報が掲載されていた。

たとえば青森県では、専門学校跡地と庁舎の活用アイデアを受け付けていた(2016年6月6日現在)。
留意事項は以下になる。
1.建物の場合は、既存の建物を有効活用するアイデアであること。(改修工事等は可)
2.維持管理費や改修工事費等について、県の負担を伴わないアイデアであること。
3.提案者自らが施設の利活用を行うアイデアであること。

「民間提案窓口」のページ。公的不動産の有効活用に関する民間提案を積極的に受け入れるための窓口を設置している</BR>地方公共団体の情報を提供している「民間提案窓口」のページ。公的不動産の有効活用に関する民間提案を積極的に受け入れるための窓口を設置している
地方公共団体の情報を提供している

地方公共団体の借入金残高は約200兆円。その打開策となり得るか

このような公的不動産の民間による活用事例は、下記「不動産証券化手法等による公的不動産(PRE)の活用のあり方に関する検討会」などの資料で確認できる。
http://www.mlit.go.jp/common/001091355.pdf

たとえば宮崎県と宮崎市は、それぞれが所有するJR宮崎駅西口に隣接する低・未利用地を公募により選定した民間事業者に賃貸し、民間事業者が交通センター、ホテル、オフィス等の複合施設を整備した。その結果、宮崎県と宮崎市は、民間事業者から地代を得ることができ、歳入が増加した。また、民間事業者が保有する複合施設のテナントとして、地元商工会議所や観光協会などの公共性の高い団体が入居しており、住民サービスも提供している。まさに地方公共団体、民間事業者、周辺住民の「三方良し」を目指しているのだ。

総務省の平成27年版地方財政白書によると、地方公共団体の普通会計が負担すべき借入金残高は、平成25年度末の段階で約200兆円。一方で、読者の身の回りにも「いつまで空き地にしているんだろう」といった公的不動産が数多くあるのではないだろうか。

とはいえ、公的不動産は上記のような交通の便のいい市街地ばかりにあるわけではないはずだ。なかには普段人が近づかないような山林もあるだろう。しかし、そのような土地でもアイデアのある民間事業者から見れば、個性的なレジャー施設や飲食店などに生まれ変われる可能性があるのかもしれない。

不動産は活用の仕方によって、人々が集まり、その価値は2倍にも3倍にもなる可能性がある。そのために民間の知恵を利用することで地方公共団体、民間事業者、周辺住民の三方良しになることが理想ではないだろうか。今後さらに公的不動産(PRE)ポータルサイトが活用されることを期待したい。

2016年 07月04日 11時07分