まさか3000万円を無料にしてくれる住宅会社があるのだろうか?

「家は人生でもっとも高額な買い物」といわれる。住宅金融支援機構の2013 年度フラット35利用者調査報告によると、注文住宅の戸当たり建設費の全国平均価格は3015万円。たしかに高額だ。

しかし、最近「0円住宅」という文字をよく目にする。まさか3000万円を無料にしてくれる住宅会社があるのだろうか?
当然ながらそんなはずはない。実は「0円住宅」は「買う」のではなく、「する」のだ。その仕組みは様々だが、現在おもなものは以下の3つ。

1.太陽光発電システムで光熱費が0円
2.太陽光発電システムで住宅ローンの返済額が0円
3.賃貸併用で住宅ローンの返済額が0円

それぞれの仕組みと本当にゼロ円になるのかを探ってみよう。

検証の結果、9戸中8戸が光熱費0円に

ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の概念図。太陽光発電だけでなく様々な設備で光熱費ゼロ円を目指す(出典:資源エネルギー庁 省エネルギー対策課資料)ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の概念図。太陽光発電だけでなく様々な設備で光熱費ゼロ円を目指す(出典:資源エネルギー庁 省エネルギー対策課資料)

●太陽光発電システムで光熱費が0円住宅(ZEH)

国は2012年7月より再生可能エネルギーの固定価格買取制度を開始している。これは「太陽光」「風力」「地熱」「バイオマス」のいずれかを利用し、要件を満たす設備が発電した電気を、その地域の電力会社が一定価格で買い取る制度だ。
発電した電気の全量が買取対象となるが、住宅用など10kw未満の太陽光パネルの場合は、自宅で消費した後の残りが買取対象となる。
買取価格は認定された年度ごとに見直され、2014年度は1kWh当たり37円(余剰買取の場合)だ。

この買取制度を利用して、光熱費を0円にしようとする住宅が、ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)だ。
具体的には、太陽光発電システムで創り出したエネルギーよりも、消費するエネルギーを小さくすることで冷暖房、給湯、換気、照明設備の光熱費を実質0円にする。
このZEHは大手ハウスメーカーをはじめ、多くの住宅会社が商品化している。ほとんどは太陽光発電システムのほか、高気密・高断熱構造、HEMS、家庭用蓄電池など省エネ設備を標準装備し、邸別にエネルギー計算を行うことでZEHになるように計画する。

本当に計算通り光熱費が0円になるかについては、興味深い検証結果がある。
大阪府堺市は国が公募した「住宅・建築物省エネCO2先導事業」の採択を受けた。これは小学校の跡地を活用し、ZEHの実現を目指すといった事業だ。
同事業において2013年6月から2014年5月の1年間、9戸対し検証を行った。その結果ZEH達成率は平均107%。9戸中8戸が光熱費0円をクリアした。達成できなかった1戸は、特に発電量が少なかったわけでなく、逆にほかよりもエネルギーの消費量が多かった。つまりZEHの実現性は、設備の性能だけでなく、家族の生活パターンや省エネに対する意識も大きく左右するようだ。

なお、国は住宅の年間のエネルギー消費量が正味(ネット)でゼロになる住宅を新築する、あるいは中古住宅をZEHに改修する人へ上限350万円の補助金を交付するネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業を行っている。くわしくはゼロ・エネルギー推進室のホームページで確認してほしい。
http://zero-ene.jp/

計算上は住宅ローンの支払いが0円になる。しかし数々のハードルが

2014年度の電力の買取価格。この買取価格は毎年見直され、基本的には減額していく(出典:「再生エネルギー固定価格買取制度ガイドブック(資源エネルギー庁))2014年度の電力の買取価格。この買取価格は毎年見直され、基本的には減額していく(出典:「再生エネルギー固定価格買取制度ガイドブック(資源エネルギー庁))

●太陽光発電システムで住宅ローンの返済額が0円

住宅の太陽光発電を対象とした再生可能エネルギーの固定価格買取制度には、上記の「10kw未満(余剰買取)のほかに、「10kw以上」と「10kw未満(ダブル発電・余剰買取)」の2種類がある。ダブル発電とは、太陽光発電システムに加えて、それ以外の自家用発電設備等を併設している場合だ。

ここで注目したいのは前者の「10kw以上」。この容量の太陽光パネルを設置することで、買取価格の単価は若干下がるものの、発電の全量が買取対象となり、さらにその期間が10年から20年に延長される。同制度を使用して「太陽光発電システムで毎月の住宅ローンの支払いを20年間0円にしましょう」というわけだ。

収支例
収入=月額売電金額の概算
(太陽光パネル14kw、調達単価1kwh当たり32円+税)
5万7500円

支出=毎月のローン返済額
(2000万円の建物に対し、返済期間35年で金利1%(元利均等)でローンを組んだ場合)
5万7000円

毎月500円のプラスになる。

しかし、これはあくまで計算上の話で、実現には数々の条件をクリアしなければならない。そのネックとなる部分には以下のようなことがある。

・10kw以上の大容量太陽光パネルが載る大屋根が必要
現在の平均的な住宅用太陽光パネルの容量は、3kwから4kw。この2倍以上の容量のパネルを載せるには、やはり通常の2倍以上の面積の屋根が必要だ。住宅だけでなくカーポートの屋根も利用可能だが、それでも一般的にはハードルが高いだろう。

・金利上昇のリスク
上記例の金利は1%。最近の変動金利相場では、特別に低いわけではないが、いつ上昇するとも限らない。買取価格は文字通り固定なので、金利が上がれば収支が合わなくなることもあり得る。

・計算通りにはいかない発電量
現在の邸別の消費エネルギー計算は、かなり正確だ。しかし、100%とはいえない。発電量が計算よりも少ないことが続くこともあるだろう。

このように数々の越えなければならないハードルがある太陽光発電で住宅ローンが0円になる家だが、実は新たなハードルのニュースが飛び込んできた。
北海道、東北、四国、九州、沖縄の電力5社は、9月30日までに再生エネルギーを固定価格で買い取る新規契約の中断を決めた。太陽光の申請が急増し、送電線の能力が足りなくなり、これ以上契約が増えると停電などのトラブルを起こす可能性があるからだ。これを受けて現在経済産業省は、電力会社間で余分な電気をやりとりするなどの方法を検証している。

住宅会社と契約内容の見極めが重要

●賃貸併用で住宅ローンの返済額が0円

住宅の一部を賃貸向けにつくり、その家賃収入で住宅ローンを返済する。この仕組みも大手ハウスメーカーを中心に、商品化が増えている。
その理由は、30代40代を中心とした1次取得層が将来受け取る年金に対して不安を感じてローン返済中だけでなく定年後の安定収入も望むケースや、同じく増加傾向の二世帯住宅を計画する際に親と子の合わせた資金に余裕があるため「どうせなら安定収入を」と計画するケースが多くなっているから、などが考えられる。

確かに賃貸住宅の経営は安定収入が見込める。しかし、素人が簡単に参入できる業界でもない。不安要素としてもっとも大きいのは「空室対策」と「管理業務」だろう。空室が出てしまえばローンの返済が難しくなるかもしれないし、入居者のクレームなどを受け付ける管理業務は素人では手におえないケースも多々あるはずだ。
そこで多くの賃貸併用住宅を建てる住宅会社では、物件の一括借り上げと管理業務の請負も行っている。
前者は家賃収入の20%前後を手数料として差し引いて、入居者の有無にかかわらず住宅会社が物件を借り上げるものだ。手数料分収入が減るものの、空室のリスクはなくなる。
後者は家賃の数%を手数料として支払うことで、住宅会社がオーナーの代わりに管理業務を行う。
つまりこの両方の契約を締結すれば、オーナーはほとんど手放しで安定収入を得ることができる。

とはいえ、まったくハードルがないわけではない。そもそもオーナーは入居者を募集しやすい立地に土地を所有、または購入しなければ一括借り上げの契約は成立しない。さらに一括借り上げの契約には必ず更新がある。契約期間は2年から10年と住宅会社によって様々だ。中には更新のたびに手数料を上げていく会社もある。また、契約期間中であっても、「入居者として見込んでいた近隣企業の撤退」「地震による周辺インフラの不具合」などの理由で契約を解除されたといったトラブルも少なからずある。このようなことにならないようにするには、事前にパートナーとなる住宅会社と契約内容の見極めが重要だろう。
【取材協力】百年住宅株式会社
http://www.wpc100.co.jp/

賃貸併用住宅の収支と間取り例。土地面積53坪、建物面積38.7坪で1階が3LDLの自宅、2階が1Kの賃貸。それほど大きな建物でなくても収支プラスマイナスゼロ円にすることは可能(資料提供:百年住宅)賃貸併用住宅の収支と間取り例。土地面積53坪、建物面積38.7坪で1階が3LDLの自宅、2階が1Kの賃貸。それほど大きな建物でなくても収支プラスマイナスゼロ円にすることは可能(資料提供:百年住宅)

2014年 11月14日 11時18分