内閣府が平成30年7月豪雨の教訓からガイドラインを作成

西日本を中心に多大な被害をもたらした平成30年7月の豪雨。死者224名、行方不明者8名、家屋の全壊6,758棟、床上浸水8,567棟など大きな爪痕を残した。私たちはこのような災禍から多くのことを学ばなければならないはずだ。たとえば同豪雨では、「住民のとるべき避難行動の理解」「高齢者などへの配慮」「防災情報の伝達」などに課題があることが明確になった。

そこで内閣府は2019(平成31)年3月、平成30年7月豪雨の教訓を活かし、「避難勧告に関するガイドライン」を改正した。おもな改正点は、住民が情報の意味を直感的に理解できるように防災情報の警戒レベルを5段階とし、それぞれのとるべき行動を下記のように明確化したことだ。

■警戒レベル1:災害への心構えを高める。
■警戒レベル2:避難に備えて自らの避難行動を確認する。
■警戒レベル3:高齢者など行動に時間を要する人は避難をする。その他の人は避難の準備、または自発的に非難する。
■警戒レベル4:災害が発生するおそれが極めて高い状況のため、全員が指定緊急避難場所へ避難。
■警戒レベル5:すでに災害が発生しているため、全員が命を守るための最善の行動をとる。

平成30年7月豪雨は、西日本を中心に大きな被害をもたらした(出典:平成30年7月豪雨の概要(内閣府))平成30年7月豪雨は、西日本を中心に大きな被害をもたらした(出典:平成30年7月豪雨の概要(内閣府))

ガイドラインに対応した「東京マイ・タイムライン」

東京都ではこのガイドラインに対応した「東京マイ・タイムライン」を作成し、2019年5月に公表している。これは、水害時の避難に備えた行動を時系列に沿って、子どもから大人まで、あらかじめ決めておくためのツールだ。内容は、「作成ガイドブック」「マイ・タイムラインシート(3種類)」「マイ・タイムライン作成用シール」の3つが1セットとなり、それぞれに小学校1~3年生用、同4~6年生用、中学生用、高校生用、一般用が用意されている。ここでは一般用を中心に説明しよう。

水害時の避難に備えた行動を時系列に沿って決めておく

「作成ガイドブック」では、「河川の氾濫とは」「土砂災害とは」「高潮による氾濫とは」「過去に東京で起こった風水害事例」など風水害の基礎知識や「マイ・タイムラインシート」の作成方法などを解説している。東京都内に実際にある川の名前なども挙げ、都民であればリアルに風水害を感じることができる内容だ。

「マイ・タイムラインシート」は、前述のように水害時の避難に備えた行動を時系列に沿ってあらかじめ決めておくためのツールだ。具体的には「台風用」「大雨用」「急激な豪雨用」の3種類が用意され、「避難勧告に関するガイドライン」の5段階の警戒レベルに対して自分がどう行動すればいいのか書き込めるようになっている。

マイ・タイムラインを作るときにまずやるべきことは、自宅周辺のハザードマップを確認することだ。ハザードマップとは、被害が想定される地域や避難場所などを表示した地図。東京都に限らず全国各地のものが各自治体や国土交通省のサイトから確認できる。「調べたい地域名+ハザードマップ」といった検索ワードで見つけられるはずだ。このマップを利用して、事前に「自宅に浸水や土砂崩れの可能性があるのか」「災害時はどこに避難すればいいのか」などを確認しておき、該当地域であればシートの欄にチェックを入れる。

次に、台風や大雨が予想される段階になった際に、警戒レベルや注意報などの防災気象情報を確認する手段を理解しておく。これは「マイ・タイムラインシート」と一緒に9つのバーコードが記されたシートが用意されており、スマートフォンなどで読み込むことで台風情報などのリンク先を表示することができるようになっている。

「マイ・タイムラインシート」と一緒に9つのバーコードが記されたシートも用意されている。スマートフォンなどで読み込むと、気象情報、台風情報、河川の氾濫、土砂災害などに関する情報のリンク先を表示することができる「マイ・タイムラインシート」と一緒に9つのバーコードが記されたシートも用意されている。スマートフォンなどで読み込むと、気象情報、台風情報、河川の氾濫、土砂災害などに関する情報のリンク先を表示することができる

避難場所から地域に対しての行動まで記入

ハザードマップを確認して自宅の状況を把握し、防災気象情報の確認方法が理解できたら、次のような順序でマイ・タイムラインを完成させる。

1.避難場所を記入する。
2.防災気象情報から得られる警戒レベルに合わせて家族の避難のタイミングを考える。
3.避難準備の開始、避難開始、避難完了のシールを貼る。または記入する。
4.「親戚へ連絡」や「常備薬を用意する」など避難開始までの行動を考えてシールを貼る。または記入する。
5.「町内へ声かけ」など、地域に対しての行動を考えてシールを貼る。または記入する。

記入方法やシールの使用方法は、本稿最後に記したサイトにマイ・タイムライン作成例があるので確認してほしい。

マイ・タイムライン作成例。4人家族を例に、記入方法やシールの使用方法の参考になるマイ・タイムライン作成例。4人家族を例に、記入方法やシールの使用方法の参考になる

都民でなくても有用な防災ツール

「東京マイ・タイムライン」は都民に向けて作成されたものだが、日本全国どの地域に住む人も活用できる内容になっている。内閣府の資料によると避難せずに被災した人の多くは、「自宅は大丈夫」という考えがあったようだ。しかし、このような根拠のない思い込みは禁物。まずはハザードマップで自宅周辺の危険度を理解したうえで、マイ・タイムラインシートを作成しておき、いざというときは早め早めの行動を心がけたい。風水害が起きたときに限らず、日頃から避難の備えをしておくことが重要だ。

なお、紙媒体としての「東京マイ・タイムライン」は、都内の各市区町村で入手できるが、その方法は自治体によって異なるので各窓口に確認してほしい。また、PDF版は下記サイトでダウンロード可能だ。

https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/mytimeline/1006417.html

2019年 07月01日 11時00分