リフォームでどこまで性能を上げればいいか?建て替えと比べてどうか?

「建て替えかリフォームかで悩んだら」の第1回目、「費用比較と最初にするべきこと」では、建て替えとリフォームそれぞれに掛かる費用の試算、そして我が家の現状を知るための健康診断についてご紹介した。

第2回目の今回は、建て替えとリフォームで条件が大きく異なる住宅の性能について、押さえておきたいポイントをご紹介する。住宅の性能とは、温熱環境やバリアフリー、耐震など家そのものの性能を指し、住人の快適性や安全性を大きく左右する。

住宅の性能はこの30年ほどの間で大きく進化している。今から30年ほど前の車と今の車では馬力や燃費、安全性、耐久性などが違うように、築古の家と新築の家では耐震性、省エネ性、バリアフリー性などの性能が異なる。

建て替えかリフォームかを判断をするにあたっては、我が家の性能が現状どのレベルにあるのか、またどこまで性能を引き上げればいいか?そのためにはどんなリフォームが必要で、いくら費用が掛かり、建て替えと比べてどう違うのか、そのあたりを知っておく必要がある。

住宅性能表示制度、性能評価10分野のモノサシ。住宅の性能はこの30年ほどの間で大きく進化している住宅性能表示制度、性能評価10分野のモノサシ。住宅の性能はこの30年ほどの間で大きく進化している

性能を疎かにすると、リフォームだから仕方ないと諦めて暮らすことに

快適性は住んでみて初めて実感し、安全性はいざという時に役立つ。光熱費も家の性能によって大きく異なる快適性は住んでみて初めて実感し、安全性はいざという時に役立つ。光熱費も家の性能によって大きく異なる

住宅はその時々の法律(建築基準法、消防法など)や、努力目標(省エネ基準など)に沿って建てられている。これらは義務化されているものもあれば、任意のものもあり、基本的には新しい住宅ほど性能が高く、快適性や安全性に直結していて、その後の維持費も左右する。

この性能の良し悪しが、リフォームではわかりにくく、また難しいところでもある。ゼロから作る建て替えは、性能のグレード別に費用がわかりやすく表示され、予算にあわせて選びやすく、また得られる効果も納得しやすい。しかしリフォームはケースバイケース、現状次第で工事内容も費用も違い、得られる効果もまちまちである。

また残念ながら、見た目で新旧がわかりやすい設備機器などと違って、住宅性能は目に見えにくいため、どうしても疎かにされがちで、中にはキッチンなど設備のグレードを上げるために性能には目をつぶったというような話を聞くこともある。

見えないものより、目の前にあるピカピカのシステムキッチンに目が奪われてしまうのは仕方がないこととは言え、性能を疎かにすると、相変わらず夏暑く、冬寒く、光熱費が高くつく上に、安全性が低く、地震への不安を抱えながら、リフォームだから仕方ないと諦めて暮らすことになりかねないのだ。

リフォームでもしっかり計画を立ててのぞめば、十分快適な住まいにすることが可能である。建て替えかリフォームかで悩む状況下であるなら、新築と同条件とまではいかなくても、日々の暮らしが快適で安全であるよう性能向上のリフォームも視野にいれて比較検討することが大事なポイントとなるだろう。

ではリフォームの場合は、どの性能をどこまで引き上げればいいのか。住宅性能はやろうと思えばいくらでも向上させることができ、当然費用を掛ければ掛けただけ快適になる。しかしそれではリフォームの意味が薄れてしまうわけで、ようは掛ける費用と得られる結果とのバランスをどのように取るか、折り合いをどうつけるかということが判断の肝になる。

そこで今回は、ここまでは是非やっておきたい性能向上リフォームの概要をご紹介する。我が家の築年数に照らし合わせて参考にして頂ければ幸いである。

リフォームでは築年数により、耐震改修の費用をみておく必要がある

まずは安全性を担保する地震への強さ、耐震性能についての概略をご紹介しよう。地震に対する倒壊・崩壊のしにくさ、強さは、建築基準法によって定められているが、その基準は建てられた年代によって異なる。この基準が大きく変わったのが1981年、それ以前を旧耐震基準、以降を新耐震基準と呼んで区別している。また2000年にも、金物の規定や壁量バランスなど、更に規定が加えられている。

古い基準で建てられた建築物は、基礎が弱かったり、壁が不足していたり、バランスが取れていなかったりなど、地震に弱い構造をしている。先の熊本地震における木造建築物の被害状況を見ると、1981年以前の建築物は倒壊・崩壊が214棟、大破が133棟、1981年~2000年までは倒壊・崩壊が76棟、大破が85棟、2000年以降は倒壊・崩壊が7棟、大破が12棟と、1981年はもとより、2000年以降とそれ以前でもその差がはっきりと出ている。(国交省住宅局建築指導課・学会悉皆調査結果による木造の建築時期別の被害状況-2016.09.08時点のデータ)

耐震性能については、住宅性能表示制度で「耐震等級」という評価基準があり、現在の建築基準法に定められたレベルを耐震等級1、その1.25倍の強さを等級2、1.5倍を等級3としている。1等が一番いいというイメージから、等級1が一番強いと勘違いしている人もいるが、改めて等級1<等級2<等級3と覚えておいて頂ければと思う。

建て替えの場合は最新の基準に沿って建てられているので、最低でも等級1が保証されていて、フラット35を利用する場合や長期優良住宅の認定を受ける場合は、耐震等級2以上が必要となる。耐震に力を入れている会社なら等級3を売り物にしているところも少なくない。

リフォームを選ぶ場合は、1981年以降の新耐震基準に合致させるよう耐震改修を行うのはもちろんのこと、2000年以降の規定に沿って金物の補強なども行っておくことが必要となる。

現在の我が家の地震への強さを簡易に知る方法として、 日本建築防災協会が作成した「誰でもできるわが家の耐震診断」がある。10問ほどの簡単な問診形式で、インターネットからでもリーフレットでもあるので、一度試してみることをお勧めする。
⇒日本建築防災協会「誰でもできるわが家の耐震診断」
http://www.kenchiku-bosai.or.jp/seismic/kodate/wooden_wagaya.html

ただしこれはあくまでも簡易の診断であり、耐震性能は構造はもとより、劣化進度によっても大きく異なるため、より専門的な診断を受けることが大切だ。耐震診断の依頼先については、日本建築防災協会、東京都建築士事務所協会、日本木造住宅耐震補強事業者協同組合などで専門家の名簿を公開しているので参考にして頂ければと思う。

⇒日本建築防災協会
http://www.kenchiku-bosai.or.jp/

⇒東京都建築士事務所協会
http://www.taaf.or.jp/

⇒日本木造住宅耐震補強事業者協同組合
http://www.mokutaikyo.com/

診断費用は方法によっても異なるが、5万円~20万円程度が目安となり、1981年以前の住宅の場合には、無料で診断を実施、工事に補助金が出る自治体が多いのでお住まいの市町村に問い合わせてみるといいだろう。また耐震改修はリフォーム減税制度の対象になっているので、そちらも忘れずにチェックしておきたい。

耐震改修の方法には基礎の補強、接合部の補強、壁の増設・強化、屋根を軽くする方法などがあり、掛かる費用は、新耐震基準に合致していない木造在来工法の住宅を等級1とおおよそ同程度にするのに、150万円~200万円(※)が目安となる。もちろんこの費用はあくまでも平均値であり、耐震等級2以上を目指すのであれば、床の補強なども加わるので、費用はかさむ。また新耐震基準に合致した家であっても2000年より以前に建てられた家の場合は、金物補強の費用、10万円~40万円程度を見ておく必要がある。(※東京都耐震ポータルサイトより)

国交省住宅局建築指導課・学会悉皆調査結果による木造の建築時期別の被害状況-2016.09.08時点のデータより作成国交省住宅局建築指導課・学会悉皆調査結果による木造の建築時期別の被害状況-2016.09.08時点のデータより作成

リフォームでも制震ができる時代に、性能と費用の兼ね合いをよく検討する

木造住宅用制震テープ。両面テープ状の制震材で手軽な工事でできるのが特徴。コストパフォーマンスが高い工法として注目されている木造住宅用制震テープ。両面テープ状の制震材で手軽な工事でできるのが特徴。コストパフォーマンスが高い工法として注目されている

最近では耐震だけでなく、大きな揺れを小さく抑える制震システムが充実し、リフォームでも取り付け可能になっている。例えば、制震テープ工法は、厚さ1mmの両面テープのような構造をした粘弾性体を柱や梁に挟むことで住宅の揺れを軽減する。内装だけの手軽な工事ででき、費用も手ごろなため、制震リフォームの中でもコストパフォーマンスが高い工法として注目されている。

制震のメリットは、家具などの転倒を防ぐだけでなく、揺れを軽減することで家の損壊も軽減することができるので、元の耐震性能を保持しやすくなる。つまり繰り返しの地震に強くなるというわけだ。もちろん、制震はしっかりとした耐震性能を有してから行うものであるが、性能向上リフォームは以前に比べて格段に進歩しているので、リフォームだからと諦めず、性能と費用の兼ね合いをよく検討してみるといいだろう。

もちろん中には、旧耐震基準で元の建て方もあまり宜しくなく、且つシロアリや水漏れで躯体に深刻なダメージがあり、改修に多額の費用が掛かり過ぎて建て替えてしまったほうが手っ取り早い、というようなケースもある。まずはしっかり調査し、リフォームする甲斐があるかどうか、そしてどこまで性能を向上させるか、見積もりをとってじっくり比較検討することが肝心だ。

さて建て替えかリフォームか、古い家と今の家では耐震性能だけでなく、暑さ寒さ、エアコンの効きなど快適性も大きく変わっている。次回は、快適性や住み心地から考える、建て替えかリフォームかをご紹介しよう。

2017年 02月27日 11時07分