公共施設の耐震化、その進捗は?

2017年11月、総務省消防庁は「災害時に防災拠点となる公共施設の耐震化推進状況に関する最新の調査結果」を公表した。
調査結果によると、地方公共団体が所有又は管理している公共施設等は、都道府県が21,695棟、市町村が160,642棟で合計182,337棟となっている。このうち、耐震性が確保されていたのは168,063棟(92.2%)で、前年(2016年度末)の90.9%から1.3%増え、この15年の間に約2倍になっている。

自治体庁舎や公立学校の校舎をはじめとする"公共施設"は、災害発生後の災害対策本部や一時的な避難所として活用されることが期待されている。しかし、1995年1月の阪神・淡路大震災では多くの庁舎等が被災し、2016年4月の熊本地震でも指定避難所となっていた体育館等が倒壊し、車中泊を余儀なくされた被災者も少なくなかった。これらの災害では、特に昭和56年以前の旧耐震基準で設計された建物に被害が多かった。一方、適切な耐震補強・改修が施された建物の多くは被害を免れており、耐震補強・耐震改修の有効性が確認されている。

防災拠点となる公共施設の耐震化率の推移 参照:総務省消防庁資料防災拠点となる公共施設の耐震化率の推移 参照:総務省消防庁資料

耐震率の高い三大都市圏、最も低いのは?

公共施設の耐震化の状況を都道府県別に見た場合、進捗にどのような違いが見られるのだろうか。
耐震率の高い都府県を見てみると、東京都(98.8%)、静岡県、愛知県(共に97.1%)、大阪府(96.8%)、宮城県(96.5%)と続いている。国内でも特に人口の多い三大都市圏に加えて、南海トラフ地震への対策を進める静岡県、東日本大震災によって多くの建築被害のあった宮城県などで耐震化が進んでいるようだ。
なお、東京都では、平成20年3月に策定した「東京都が所有する防災上重要な公共建築物の耐震化整備プログラム」に基づき、平成27年度末までに防災上重要な公共建築物の耐震化100%を目標に取り組んでいる。耐震性を満たしていない建築物については、既に建替え工事など耐震化に着手しているという。

一方、耐震率が低いのは、広島県(81.0%)、長崎県(84.8%)、北海道(85.1%)、奈良県(85.2%)、山口県(85.5%)となっており、最も耐震化の進んでいる東京都と最も低い広島県を比べると18%近い差がある。

参照:総務省消防庁 防災拠点となる公共施設等の耐震化の状況(都道府県別)<BR />『防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査結果』参照:総務省消防庁 防災拠点となる公共施設等の耐震化の状況(都道府県別)
『防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査結果』

最も耐震化の進む文教施設。反対に進んでいないのは?

続いて、耐震化率を施設別に見ていく。
学校校舎や学校体育館など、災害時の避難所としての活用が想定される「文教施設」の耐震率が最も高く98.1%となっている。次に「消防本部・消防署所」が90.4%、「診療施設」が89.6%と続く。反対に、「自治体庁舎や県民会館・公民館等」は80.7%となっており、文教施設と比べると17.4%の差がある。

こうした庁舎の耐震化については、都道府県と市町村でも推進状況に違いがあるようだ。
災害対策本部が設置される庁舎等の耐震状況を調べたところ、都道府県は47団体中、岩手県と岐阜県を除く45団体の庁舎の耐震性が確保されていた(95.7%)。岩手県と岐阜県については、耐震化された施設を代替庁舎として指定している。
一方、市町村の耐震率は、1,741団体中1,327団体の76.2%に留まった。耐震化率に差が出ているものの、耐震化されていない414団体のうち337団体で耐震化された代替庁舎が指定されており、代替庁舎を含めた場合の耐震率は95.6%となっている。

参照:総務省消防庁 防災拠点となる公共施設等の耐震化の状況(施設区分別)<BR />『防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査結果』参照:総務省消防庁 防災拠点となる公共施設等の耐震化の状況(施設区分別)
『防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査結果』

広島県と鳥取県では大規模建築物の耐震診断結果の公表も

本調査結果から見える通り、現在、すべての公共施設において耐震化が完了しているわけではない。しかし、南海トラフ巨大地震などの大規模地震が想定されている中、各自治体では、確実に公共施設の耐震化が進められているようだ。
今回、最も低い耐震化率となった広島県と29位だった鳥取県は、2017年2月3日、震度6強以上の大地震が発生した場合、倒壊または崩壊する危険性が高いとする建物を発表している。このデータには、調査時点での安全性の区分や所有者から報告のあった今後の耐震改修等の予定、実施時期までも記載されている。なお、広島県の結果には、広島県庁舎も含まれており、2018年2月現在、耐震補強工事が行われている。

公共施設が被災した場合、多くの犠牲者を生じさせるばかりでなく、災害応急対応などの実施に支障をきたすことで、防ぐことができたであろう被害の発生や拡大を招く恐れもある。そのため、災害後の応急対策を円滑に実施するためにも、防災拠点となる庁舎や消防署、避難所となる文教施設等の耐震化は特に重要といえる。

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2018年 03月12日 11時06分