多彩なシェアハウスに人々が魅せられる理由

株式会社シュガーアソシエイツの中野さん。不動産会社の営業マンというよりは物件とお客様の理想の出会いを演出するコーディネーター株式会社シュガーアソシエイツの中野さん。不動産会社の営業マンというよりは物件とお客様の理想の出会いを演出するコーディネーター

国籍も年齢も性別も様々な住人で1つの住まいを共有(シェア)する暮らしが、近年、日本でも増えつつある。
もともとは賃貸料や生活費を抑えることができるとあって、賃料の高い特に都心部で、独身の若者を中心に人気を集めたが、最近ではその「コミュニケーション性」に注目が集まり、ワインや英会話、音楽といった共通の趣味や話題を持つ者同士、高齢者同士、クリエイター同士の交流といった“コンセプト”に引き寄せられて集まる人が増えている。

「『独居』に人知れず寂しさや煩わしさを感じるのは高齢者ばかりではありません。若者であっても、電気の消えた部屋に帰るのは寂しいと答える人は意外に多いものです」そう語るのは、株式会社シュガーアソシエイツの中野氏。

シュガーアソシエイツは奈良にある不動産会社で、「新しいだけが物件の価値ではない」「もっと住む人がワクワクするような、誰かを呼びたくなるような住まい」を提唱して、これまでユニークな物件を数々手がけてきた。
2015年春に大阪・弥刀、近畿大学のすぐ近くにオープンさせた【SHARE HOUSE OF UNIVERSITY】もその1つだ。

そこで今回【SHARE HOUSE OF UNIVERSITY】にお邪魔して、シェアハウスの魅力や可能性について、探ってみることにした。

こうして社会人と学生のシェアハウスは誕生した

古い社宅をシェアハウスとして再生させる決め手となった、開放感が心地よいベランダ古い社宅をシェアハウスとして再生させる決め手となった、開放感が心地よいベランダ

まずは【SHARE HOUSE OF UNIVERSITY】が誕生した経緯について。

中野氏によれば、「もともとは某企業の寮として使われていた物件が空き家となり、転用方法が模索されている状況でした。老朽化も進んでいたのでマンションとしての再利用はできない。でもシェアハウスとしてなら甦るのではないか。その決め手となったのが、ベランダ。一目見て『おもしろい』と感じました。周囲に視界をさえぎる建物がなくて、見晴らしが良い。天候の良い時期には気持ち良く洗濯物が干せるばかりか、芝生テラスにすれば、入居者が屋上ビアガーデンやBBQを楽しめる。第二のリビングとしてここを基点に楽しいストーリーが広がっていくのを感じました」

そこで、本物件を所有する不動産会社に掛け合い、リフォームして収益が見込めるシェアハウスとして再生させてからの売却を提案した。初期費用はなるべく抑えるため、そして何より自分たちが思い描くシェアハウスに仕立てるため、リフォームはできるだけ業者に頼らず、自分たちの手で行うことを心がけた。シュガーアソシエイツでは社員がみなDIYできるのも強みだった。中にはプロ顔負けの家具を制作できるスタッフもいる。

「普通なら壊してしまう物件だったと思います。でも、私たちには過去にもこうした老朽化の進んだ古いアパートをできるだけお金をかけずに自分たちの手でリフォームして、再生させた実績がありました。そのときもできるだけ間取りは変えずに、でも全室コンセプトを変えるなどの遊び心を加えたり、ビジネスホテルのような3点ユニットを採用して清潔感を高めたり、何らかの付加価値を持たせることと『住む人の便利』を最優先することを徹底。すると、1ヶ月後には全室入居者で埋まるという、大成功を収めたんですよ」と中野氏。

ターゲットを「社会人と学生」、コンセプトを「学びの場」とした理由については、

「近畿大学にほど近い立地から、学生がターゲットとなることは決定済でした。そこに社会人を加えたのは、学生にとっては社会人の経験談が就活時にはプラスになるだろうし、社会人にとっても学生たちの若いパワーは刺激になると考えたから。互いに学び合える場所として“大学=UNIVERSITY”と名付けました」と語る。

社会人と学生、双方の住み易さを追求して

学びの場の象徴とも言える黒板。共有スペースであるリビングに鎮座して雰囲気づくりに一役買う学びの場の象徴とも言える黒板。共有スペースであるリビングに鎮座して雰囲気づくりに一役買う

シェアハウスで気になるのは、共有スペースの手入れではないだろうか。リビングや廊下の掃除、整理整頓ならいざ知らず、バス・トイレの清掃となるとためらいたくなる。

「暮らしを楽しんでほしいから、極力ルールは決めたくないんです。共有部分の清掃も分担にするときっと息苦しくなる。住む人の気持ちを最優先したいから、ここでは共有スペースの清掃は業者が定期的に行います。トイレットペーパーなどの消耗品の補充も心配無用。共有部分についてはちょっとしたホテル感覚で過ごせます」。

さらに、シェアハウスに初めて住む人にとってありがたいのが、違約金の設定がないこと。入居してみたもののどうも合わない、そんな場合でも、違約金の心配なく即退去することもできるので安心だ。

「個人で共有するルームシェアと違い、居住者同士のトラブルや住まいに関する悩みなど、何か困りごとが起きた時には当事者同士でなく私たちのような運営会社が解決に動くのも、シェアハウスの安心材料の1つですね」と中野氏は語る。

シェアハウスはその街の姿や住まう人々の関係を映す、いわば鏡

学校を彷彿とさせるアナログ時計。社会人と学生がここで何を学ぶか、答えは未知数だ学校を彷彿とさせるアナログ時計。社会人と学生がここで何を学ぶか、答えは未知数だ

「赤の他人同士が1つ屋根の下で暮らす」という意味においては、昔ながらの下宿制度や寮などに見られるルームシェアも同義だが、程良い距離感で緩やかなコミュニティを築き、共に暮らすことで互いにメリットを見いだすシェアハウスは、現代らしい人間関係を象徴していると言えそうだ。

今回の取材に応じてくれたシュガーアソシエイツでは現在、奈良に新たなシェアハウスを計画中だと言う。
「関西のシェアハウスは大阪から京都へと急速に広まりましたが、奈良は発展途上。シェアハウスを利用する社会人の多くが通勤の至便な場所で入居を検討する傾向を考えると、関西のベッドタウンである奈良には、そもそも働くべき企業が少ないのがシェハウスが伸び悩む要因かもしれません。奈良の主な交通手段は車ですから、駐車場も確保となるとなかなか難しいのが現実です。しかし、例えば『畑付き』など『農業』をコンセプトとしたシェアハウスならおもしろいし、きっとニーズがある。私たちはこれからも万人受けする暮らしの提案ではなく、ピンポイントなターゲットに対し喜ばれる楽しい提案をしていきたいですね」と中野氏。

氏の言葉から想像を膨らませれば、シェアハウスにはそこに住む人だけでなく、その街の様相も反映する鏡のようだ。まさに、この街にして、このシェアハウスあり。
あなたの暮らす街にはどんなシェアハウスがあるだろうか。どんなシェアハウスがあれば街は賑わうだろうか。そんな観点で街や暮らしを眺めてみるのも楽しそうだ。

2016年 03月03日 11時03分