片づけのプロたちが競演する、年に1度のイベント

開会の挨拶をする、高原真由美氏(一般社団法人日本ライフオーガナイザー協会 代表理事)。この「片づけ大賞」は片づけのプロたちの甲子園でありたいという開会の挨拶をする、高原真由美氏(一般社団法人日本ライフオーガナイザー協会 代表理事)。この「片づけ大賞」は片づけのプロたちの甲子園でありたいという

整理収納アドバイザー、ライフオーガナイザー、整理収納教育士……。職種は様々だが、どれもみな片づけのアドバイスをするプロたちである。
例えば「整理収納アドバイザー」は、整理収納のノウハウやメソッドを伝える役割をもっている。女性を中心に人気がある資格だが、プロとして活躍するばかりではなく、知識を活かし日々の暮らしに役立てたいと取得する人も多い。ハウスキーピング協会の発表しているデータによると、整理収納アドバイザー有資格者数は累計:11万8,575名(2018年8月現在)にのぼる。

2014年に誕生し、今年で5回目を迎える「片づけ大賞2018」(主催:一般社団法人日本片づけ整理収納協議会)は、そんな片づけのプロたちが集まるイベントだ。自分のもつ片づけのノウハウと成果を発表し合い、グランプリを決めるというものである。

開会挨拶に立った高原真由美氏は、「大人も子どもも片づけのプロも、暮らしと人生を整えることにチャレンジし、片づけの甲子園である『片づけ大賞』を目指す。勝ち負けではなく、そのチャレンジの価値、創意工夫に対してみんなが讃える、そんな場にしていきたい」と挨拶。

どのような成果が発表されたのか。小学生たちによる「こども部門」と、プロのファイナリストたちによる「個人部門」のプレゼンの一部を紹介しよう。

夏休みの自由研究テーマに「片づけ」を~こども部門

(上)入賞・佳作に選ばれた子どもたちが表彰された。</br>(下)なるさんの発表。片づけへの取り組み方は、大人でも参考にしたくなる内容だった(上)入賞・佳作に選ばれた子どもたちが表彰された。
(下)なるさんの発表。片づけへの取り組み方は、大人でも参考にしたくなる内容だった

いまや片づけは小学校の授業に取り入れられ、学ぶ時代である。小学生のうちに"片づけ力"を身につけてもらいたいと、2015年に創設された「こども部門」は、片づけを夏休みの自由研究にして親子で取り組み、その結果を表彰するという、片づけ大賞独自の試みだ。小学1年生~6年生による15名の応募から、3名の入賞、3名の佳作が選出され、入賞者によるプレゼンが行われた。小学生による大人顔負けの堂々としたトークは会場をわかせた。

自分の部屋を快適に使うためのビジョン、家族の性質を捉えた収納の仕方の提案、イライラ解消をゴールにした片づけを設定するなど、聞いていてドキリとするような工夫が凝らされていた。手書きや工作で表現された発表資料もほほえましい。

発表者の一人、寺嶋なるさん(6年生)は昨年に引き続き2回目の受賞となった。家の中でも、表からはあまり見えない洗面所の片づけに取り組んだ事例だ。アイテムをグルーピングする、不用品の仕分けなど、片づけがあまり得意でないママをサポートする様子をプレゼンした。なるさん本人は「片づけが大好き」だそうで、応募のきっかけにもなっているのだとか。
審査委員長の小松易氏は、「見えない所を片づけることをテーマにしたことに成長を感じる。一番片づけてほしいお母さんの事を考え、要素を分解していったことが素晴らしい。頭の中の片づけができている」とコメント。なるさんの取り組みを評価するとともに、「業界として10年後が楽しみです」と将来への期待も込めた。

審査のポイントは「影響度」「貢献度」「共感度」「プレゼンテーション」

「個人部門」は「片づけ大賞2018」のメインとなる、片づけのプロたちによるプレゼンテーションだ。ファイナリストとして選抜された8人から、審査員と会場の投票によって、この場でグランプリが決まる。審査のポイントは次の4つである。

①クライアントの生活や人生への影響度
②発表者の活動における社会貢献度
③自分も頼みたいと思える共感度
④プレゼンテーションの分かりやすさ

プレゼンの始まる直前、小松氏に見どころを伺うことができた。
「発表される事例にはすべてクライアントがいます。今回は、片づけのプロたちがクライアントと一緒に登壇するところに注目してください。証人がいるのでいい加減なプレゼンはできないし、きれいごとばかりを並べるわけにはいきません」

10分という時間が設けられた中でプレゼンされるのは、プロたちがクライアントから受けた依頼に対し、実際に提案・実行した事例だ。クライアントを同伴して登壇することで、プロからの一方的な目線ではない意見や感想を直接聞くことができる貴重な機会である。
また、プレゼンの表現力も評価の対象となるため、クライアントと協力した熱のこもった発表が続いた。中には、当時の体験を振り返り、感極まる登壇者もいるほどだった。

(右上)小松易審査委員長(スッキリ・ラボ 代表)、(左下)審査員を務める(右上)小松易審査委員長(スッキリ・ラボ 代表)、(左下)審査員を務める"収納王子コジマジック"こと小島弘章氏(一般社団法人日本収納検定協会 代表理事)、(右下)同じく審査員の澤一良氏(一般社団法人ハウスキーピング協会 代表理事)

片づけは働き方を変えられるのか?~グランプリの事例

今回グランプリに選ばれたのは、収育士・伊藤寛子さんによる「片づけから始める働き方改革~めざせ!は・か・せ・の・職員室~」だ。
学校の先生は忙しく、勤務時間が長くなってしまうことが悩み。雑然とした校内を片づけていくことで時間のゆとりを作り出し、先生たちをサポートしたいとスタートした。
まずは教員、事務員の片づけ方研修で環境を改善した。後に、最も問題とされていた、働きにくい職員室の片づけプロジェクトへ取り掛かる。長年なんとなくで使われてきた不要なものを処分、部屋の中でも問題のある部分を職員の意見から洗い出し、動線が重なって危険だった通路に余裕を作って整備する。狭くて動くこともままならなかった給湯スペースは、新たにできた空間のテーブルへ移動。みんなでほっと一息をつく、そんな職員のコミュニケーションカフェへと生まれ変わっていった。片づけによって無駄な時間が削減され、以前よりゆとりのある働き方へと変化したと、先生たちの喜んでいる姿も紹介された。
受賞した伊藤さんは「まだまだ片づける所はたくさんあります。片づけで少しでも先生たちを楽にしたい。この活動が日本中の学校に広がっていくことを願っています」と語る。

準グランプリはライフオーガナイザー・大村純子さん。物が少ないのになぜか家が雑然としていて片づかない、という悩みを解決した事例だ。クライアントが本当に望む暮らし方とは何か、丁寧に寄り添っていく様子がプレゼンされた。テレビや雑誌に取り上げられるように整った家が、必ずしもクライアントの意に沿うわけではないこと。それをクライアント自身に気付いてもらうこと。結果、物よりも心を整理する必要があったという印象的な事例だった。

そんなファイナリストたちの事例に共通していたことがある。
自宅を英会話教室にしたい家、高齢になった母の思い出整理、家族に内緒の依頼など、クライアントが依頼するきっかけは様々でありながら、「片づけ」によって別の悩みが解消され、家族や取り巻く人々の繋がりが深まっていたことである。
片づけのプロが目指すものを感じられた部分だった。

(上)グランプリに輝いた伊藤さん。元教員という経験を活かし、学校での働き方改革に挑んだ。「【は】早く作業できる・【か】簡単・【せ】正確に作業ができるよう片づけ、ゆとりのある職員室にする」というプロジェクトを実現。</br>(下)準グランプリの大村さん。「モノだけではなく、ヒトと向かい合う」片づけによって、クライアントの希望をかなえた。今回、すべての発表者がクライアントと一緒に登壇した(上)グランプリに輝いた伊藤さん。元教員という経験を活かし、学校での働き方改革に挑んだ。「【は】早く作業できる・【か】簡単・【せ】正確に作業ができるよう片づけ、ゆとりのある職員室にする」というプロジェクトを実現。
(下)準グランプリの大村さん。「モノだけではなく、ヒトと向かい合う」片づけによって、クライアントの希望をかなえた。今回、すべての発表者がクライアントと一緒に登壇した

片づけのプロという職業の普及と認知を目指して

片づけ・収納のプロという職業の普及と認知を目的として開催されている「片づけ大賞」。
小島弘章氏は、「片づけのプロは、ただ片づけるだけでは終わらないものをもたらします。そういった部分をもっと知ってもらいたい。『片づけ大賞』を見に来た人が憧れて、いずれはプロとしてエントリーする、そして片づけの仕事が素敵なことだというのをもっともっとたくさんの人に知ってもらえれば嬉しい」と話してくれた。

「私たちはクライアントありきの職業。お客様にどう好影響を与えていくのか、日々考えていきたい。真のプロ・お願いしたいプロとはどんな人なのか、お客様とどうコミュニケーションを取り、どうやって信頼関係を作っていくのか。今回のプレゼンにおいて登壇者すべてに、クライアントが同行してくれたのは、信頼があるからこそできたことです。お客様の思い込みを片づけたり、心を片づけていくなど、単に物を片づけるだけではないことを学ぶことができたのではないか」と小松氏がイベントを総評する。

また閉会の挨拶で、澤一良氏は「このイベントの仕組みそのものが、この領域を促進、発展させる大きな原動力になっています。日頃、片づけは一過性ではなく、継続するべき物だと伝えていますが、継続するためのやる気スイッチを入れるには、この仕組みはいいものだと思ってます」と締めた。

多くの物が溢れる現代社会で、何もかもを一人で片づけることは難しい。だからこそ、心に寄り添って、気持ちまで片づけてくれるプロの存在が必要になってくるのかもしれない。

片づけ大賞2018
https://www.katazuke-taisho.com/

一般社団法人日本片づけ整理収納協議会
https://jco-web.com/

「片づけ大賞」は2019年も開催される予定だ。もっと多くの方が参加できる場を作っていきたいという。</br>(写真提供:一般社団法人日本片づけ整理収納協議会)「片づけ大賞」は2019年も開催される予定だ。もっと多くの方が参加できる場を作っていきたいという。
(写真提供:一般社団法人日本片づけ整理収納協議会)

2018年 09月30日 11時00分