台風豪雨で被災、倒産の危機から杉足場板販売がスタート

2017年に作った「廃材の森」のテラスで。日本のあちこちのイベントなどに杉足場板を提供するなどでいつも飛び回っている2017年に作った「廃材の森」のテラスで。日本のあちこちのイベントなどに杉足場板を提供するなどでいつも飛び回っている

21年前の1997年秋。最近、インテリアや家具などでよく使われるようになった杉足場板で知られるウッドプロ(当時は株式会社住建リース)の、宮崎に移転・新築して間もない7,000坪(2万3,100m2)の主力工場が台風で1.8m水没した。被災後1年間は事業清算と従業員の再就職の世話に追われ、仕事を再開するどころではなく、大幅の債務超過に。数十人いた社員は8~9人にまで減らさざるを得なかった。

「父が独立して足場板リースから始めた会社でちょうど10年目。私が前職を辞して合流した2週間後の被災でした。地元からは代替地を用意、融資をするという提案があり、父を始め、社員たちは宮崎での再建を望みましたが、私は創業の地・広島に戻ることを主張。結果、父はリタイアして私に任せてくれました」とウッドプロの代表取締役社長・中本敬章氏。

大赤字状態で経営を引き継いだ中本氏が目をつけたのは、他の事業を清算した結果、最後に残った杉足場板だ。リース期間を終えて返却されてきた杉足場板の不良品をエクステリア商品として加工、売ることを考えたのである。

足場板から釘を抜き、表面を削るなどしてウッドデッキ、フェンスやプランターを作り、ネット通販で売り始めたのは2000年から。「園芸店、ホームセンターに営業に行きましたが、1日で止めました。求められるのは価格だけ。質や思いは伝わらない。だったら、自分たちで直接売ることで伝えていこうと思ったのです。1999年12月に楽天の三木谷氏からネットショッピングの可能性について聞いていたこともあり、そこに再起をかけました」。

若い人たちが使い古された風合いに注目

サイズや風合い、色、厚さなど様々な種類が揃う杉足場板サイズや風合い、色、厚さなど様々な種類が揃う杉足場板

同じ時期に杉足場板再利用への追い風があった。2001年、廃棄物処理法が野焼き(野外での焼却処分)を禁止したのである。それまではタダで焼却処分できていた使用後の杉足場板だが、以降は産業廃棄物として大型トラック1台分で14~15万円もの処理料金を出さなければ処分できなくなったのだ。

ウッドプロではそれを独自の基準で買取ることにした。一般には大型トラック1台分で10万円前後の買取りとなる。「処理料金が不要になるのですから、タダでももらえますし、感謝されます。それでもお金を出しているのは原材料の安定供給のためです」。

建設現場を見たことがある人ならご存知だろうが、現在、足場板の主流はアルミ、スティール。軽さを活かして橋梁、寺社や高速道路などでは吊り足場として杉が使われているが、全体としての量は少ない。自社でリースした後の商品だけでは必要となる原材料が足りないのである。

また、同社からリースあるいは購入すれば最後まで面倒を見てもらえるため、リースや販売事業でも選ばれやすくなる。他社で買う、借りるほうが安かったとしても、処分までを考えるなら同社と付き合ったほうが賢明という選択になるからだ。

商品がようやく売れ始めた2002年頃、新しい動きがあった。店舗内装の材料として杉足場板の使い古した感をデザインに生かそうとする人が現れたのである。「見に行ってみたらまさに目から鱗。それまで私たちは表面を削り、化粧をして商品にしていましたが、彼は使い古した風合いを生かし、そのままで使っていた。それにヒントを得て2003年からは板そのものを素材として売り始めました」

現在では引き取った杉足場板の3分の1は家具などに加工、3分の1は板として販売、残りはバイオマス燃料として使われている。あるモノは余すところなく使われているのである。

リーマンショックで内装材としての認知度アップ

杉足場板が使われた室内。上はカフェ、下はウッドプロ本社の社員食堂。どちらも穏やかな雰囲気杉足場板が使われた室内。上はカフェ、下はウッドプロ本社の社員食堂。どちらも穏やかな雰囲気

内装材としての杉足場板が広く使われるようになったきっかけは2008年のリーマンショックである。急激な景気の悪化に多くの建築計画が取りやめ、あるいは予算削減の憂き目にあったが、そこで経費を下げるために杉足場板が使われるケースが増えたのだ。「杉足場板を使えば床材の予算1m2あたり1万5,000円を5,000円、6,000円まで下げられる。そこで職人の間で広まったと聞いています」。

同じ時期には東京でのデザインイベント等での商品PRを始めてもいた。そうした活動が功を奏し、今では店舗、オフィスだけでなく、住宅の内装材としても使われている。エクステリア、家具などの商品数は増え、サイトもプロ向け、一般向けがある。ホームセンターその他から取引して欲しいと言われることも多いが、全て断り、原則は直販のみ。費用を払って引き取る方式を取り、全国で足場板をハンティングして回っていてもニーズに追いつけない時期があり、一時は一人、一社で買える分量に制限をかけたこともあった。

「当社を真似て杉足場板、あるいは足場板利用の商品を出している会社の中には現役の足場板を買い付けているケースもあるようですが、私たちは原則、使い古され、引退したボロクタのモノを使っています。汚れも多く、工場は大変ですが、みんなの困りものを生き返らせ、喜ばれることが大事。ゴミがお宝になることで売った人も買った人も地球も、私達売る側も三方、四方良しになるからです」。追随しようとする会社があっても追随できないのはこうしたコンセプトの明確さ、揺らがない姿勢と仕組みがあるからだろう。

モノ、人、あらゆる資源を大事に使う

それだけ貴重な杉足場板である。同社が開いている広島市のショップに行くと使える部分だけを15cm、30cm、45cmに切った木片が売られており、驚いたことにそれがかなりの売れ筋商品になっている。使えるものは徹底的に使われているのである。不要と思われるモノにほんの少し手間を加えることで商品になることは頭では分かるものの、ここまで徹底している会社は少ないのではなかろうか。びっくりである。

さらに2017年からは1,000円(税込)を払って会員になれば、商品としては売りにくい廃材を好きに取りに行けるという「廃材の森」なる場も自然の森を借景とする資材置き場の片隅に作った。会員の中には経営する店のほとんどをここで調達した廃材で作ったという強者も。こうなると何がゴミで、何が役立つものかが分からなくなってくる。というよりも、視点を変えれば世の中には不要なモノなどないのかもしれない。

あらゆる資源を無駄なく使うという意味では同社は人材活用も独得である。工場で働く80人弱のうち、30人ほどが60歳オーバーで、最高齢は83歳。高齢者を積極的に採用しているのである。「長らく債務超過が続いていたし、ネットショップも初期は売れず、採用をしようにも条件が悪く、なかなか採用できなかった。そこで地元の高齢者を採用することにしたのです」。

定年はなく、毎年年末に来年の働き方を相談しながら働き続けてもらっており、最近では仕事の合間に農業をしている人たちの野菜を7年前に開業したカフェで買い取ることも。年齢に関係なく働き続けるロールモデルを地域に提供しているのである。

左上から時計回りで店頭で売られていた木っ端、この売上は震災被災者に寄付される。廃材の森に材木を調達に来ていた人の車。高齢者も多い工場、最後は使用後の杉足場板。意外にというか、驚くほどフォトジェニックで思わず、写真を撮りまくった左上から時計回りで店頭で売られていた木っ端、この売上は震災被災者に寄付される。廃材の森に材木を調達に来ていた人の車。高齢者も多い工場、最後は使用後の杉足場板。意外にというか、驚くほどフォトジェニックで思わず、写真を撮りまくった

地域に貢献、長く愛せる商品作りを

まだ、借金はあるものの、メインバンクからは「奇跡の復活」と言われ、社員も往時の2倍近くになった同社だが、今も新しい挑戦が続けられている。特に近年、注力しているのは地域への貢献だ。「2003年に社是に入れたのですが、当時は全く実現できず。2017年になってようやく、若い人たちを支援、一緒にモノ作りをするレインボー倉庫という場を作りました。また、父から相続する予定の、長らくそのままだった山林を活用し、地元の林業に貢献しようと考えています。採用では外国人をという声もありましたが、地元の高齢者にこだわるのもその一環です」。

2018年7月に発生した水害に対してもいち早く復興工事の資材として杉足場板の無償貸出その他の方針を打ちだしており、今後、その支援が地元復興の足場となっていくはずだ。

また、これまでは宣伝費を使うことなく、口コミでファンを作ってきたが、今後は工場で見学会やイベントを行うなど、少し方法を変えることを検討中。特に家具はこれまで広島にしかショールームが無かったため、もう少し見てもらう機会を作ろうと考えているとか。

実際にショールームを見せていただくと大小さまざまの、使い勝手の良さそうな家具がメーカー直販ということもあり、さほど高くない金額で並んでおり、それぞれに微妙に違う表情が魅力的。加えてテーブルひとつを手に入れるにしても完成品で買う、無塗装の品を買って自分でペイントする、材料を買って自らDIYで作ると様々なやり方が可能だ。もちろん、オーダーで自分だけの一品を作ってもらうこともできる。そろそろ、使い捨てではなく、長く愛せる家具をと思っている人ならチェックしてみることをお勧めする。現場で長く人に踏まれ、釘を打たれ、ペンキで汚された挙句に紫外線や風雨、寒暖にさらされてきた杉足場板には、苦労を乗り越えてきた人に通じる味わいと優しい温もりがある。

小さな椅子や収納用のボックスからテーブル、ソファその他様々な種類の家具が揃う。箱だけを並べても面白いインテリアになる小さな椅子や収納用のボックスからテーブル、ソファその他様々な種類の家具が揃う。箱だけを並べても面白いインテリアになる

2018年 08月20日 11時00分