インターネット上には死に至るかもしれない仰天ノウハウも

汚れの種類によって使うべき洗剤は異なる。まずはどこの、どんな汚れを落とそうとしているのかを知ることが大事だ汚れの種類によって使うべき洗剤は異なる。まずはどこの、どんな汚れを落とそうとしているのかを知ることが大事だ

とあるキュレーションサイト。室内のカーテンのカビを除去するためにとして勧められていたのは浴室のカビ除去などに用いる塩素系漂白剤。

「そんなことをやったら、カーテンが黄変してしまいます!」と警告するのはAll Aboutガイドで掃除、家事に詳しい藤原千秋氏。プロの目から見ると、インターネット上の掃除ノウハウにはいい加減な情報が多く混じっているという。

「個人のブログでも散見されますが、一番間違いが多いのはいわゆるまとめサイト。まとめサイト自体は有用だと思いますが、ことノウハウものに関しては注意が必要。まとめている人がよく分からないまま、まとめを作っていることもあるように見受けられます。いくらいいね!がたくさん付いていても、それは内容の正しさを評価するものではありません」。

同じノウハウものでも、料理のまとめなら、自分が不味い思いをして終わりだろうが、掃除のように洗剤類を使う場合には有害ガスの発生を誘導したり、カーテンや畳を変色させてしまったりと実損が伴う。そんな思いをしたくないのであれば、インターネット上のノウハウの妄信は避けたいところ。

「変なペンネームや匿名、無名のサイトは眉に唾をつけて読んだほうが良いかもしれませんし、最近はメーカーのサイトでもアウトソーシングされているためなのか、分かっていない人が書いている場合もある様子。インターネット上であれば記名のサイトを参照してください。あるいは活字メディア。活字メディアでも間違いはありますが、死に至るほど危険なノウハウは今のところないようです」。

「まぜるな危険」は「実際にまぜたら危険」という意味ではない

実際に混ぜて使う人がいるわけではないことを考えると、表記そのものにも誤解を招く要因があるともいえる実際に混ぜて使う人がいるわけではないことを考えると、表記そのものにも誤解を招く要因があるともいえる

中でも一番怖いのは次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする塩素系漂白剤や洗剤と、クエン酸や酸性タイプの洗浄剤を同じ場所で同時に、あるいは流さずに続けて使うこと。そうした商品のラベルにはよく「まぜるな危険」と書かれているが、それは実際に混ぜたら危険ということではない。

「たとえば、ネットにお風呂場の鏡の白いウロコ汚れにはクエン酸がいいですよと書かれていたとします。鱗状痕というこの種の汚れは水の中のカルシウムが蓄積したもので中性洗剤ではなかなか落ちませんが、レモンの輪切りや弱酸性のクエン酸で落ちるのです。そこでクエン酸あるいは酸性タイプの洗浄剤で鏡の掃除をしながら、そうだ、ついでに風呂のカビも掃除しておこう、そうすれば時短になると書いてあったなと、風呂場のカビも掃除しておこうと塩素系の漂白剤を使う。風呂場のような狭い空間でこれらを同時に使うと、塩素ガスが発生する危険が生じます」。

塩素ガスは目、皮膚、気道などに対して腐食性があり、低濃度だとしても鼻やのど、目に刺激を感じ、吸入すると肺水腫を起こすこともあるほど人体には有毒。許容濃度を超えると死に至ることもあり、こうすればいいというブログ記事を断片的に取り入れて、自分のオリジナリティ(!)を発揮してしまうと、とんでもない結果を招くことにもなりかねないのである。

「こうした危なっかしい掃除ノウハウが広まる背景にはネット上のノウハウを鵜呑みにしてしまう人が多いことに加え、洗剤類の成分、使い方、何をしたら危険かという注意書きをきちんと読まない、時短など合理的な家事がブームになっているという2点が挙げられます」。

時短するつもりで危険を招いているとしたら本末転倒。きちんとラベルを読んで安全な掃除をしよう。

昔の掃除は高いところから低いところへ。今の掃除はその逆が正しい

また、世の中に流布されている掃除ノウハウには現代の住まいやライフスタイルに合致していないものも多いと藤原氏。「よく掃除は高いところから低いところへというのが常識と言われています。でも高気密、高断熱の家が多い現在、これは間違いです」。

というのは今の家で高いところにはたきをかけると、そのハウスダストは外に逃げてはいかず、室内を浮遊する。床に落ちてくるまでには8時間かかるそうで、はたきをかけた直後にいくら掃除機をかけてもハウスダストはずっと室内に留まることになる。これでは掃除機を使っても無駄である。

では、どうすれば良いか。

「まずは窓を閉めて埃が舞い上がらないようにしてから、床に落ちているハウスダストをそっと埃を立てないようにして拭きます。次に少し高い部分も同様に。使うのは固く絞った雑巾でも良いですし、最近多く市販されている不織布でもいいでしょう。そして最後に掃除機をかけ、その後で窓を開け、室内に舞っている埃を外に出す。これが今の家にあった掃除方法です。高いところは年に1度くらい、PC用の静電気はたきを利用、撫で拭きすれば十分です」。

このやり方にすれば夜間でも掃除ができる。「一般には掃除機をかける時には窓を開けっぱなしにすることが多いようですが、これでは埃が舞ってしまいますし、夜間はうるさいと文句を言われることも。でも、窓を閉めて掃除機をかければ音はそれほど響かず、夜間の掃除もトラブルになりにくくなります」。

ちなみにどのくらい窓を開けておけば埃が外に出るかは室内でお香を焚き、窓を開けてどのくらいで匂いがしなくなるかを試してみることで分かるという。時間のある時にやってみると良いだろう。

自力での手入れを想定していない住宅設備も続々

シロッコファン。内部が刃物のように鋭利なため、気を付けないと手を切る危険があるシロッコファン。内部が刃物のように鋭利なため、気を付けないと手を切る危険がある

過去のノウハウが通じなくなっている住宅設備もある。「たとえば大掃除の定番、キッチンの換気扇は昔のプラスチック製のプロペラ型なら自力で掃除できますが、最近のシロッコファンが入っているものだと、手を切る危険があり、また、構造が複雑なので一度外したら、その後きちんと設置できなくなる可能性も。換気扇としての性能は上がっており、強制的に排気できるようになっているのですが、その一方で素人の手には負えなくなっているのです」。

こうした設備は換気扇だけに留まらない。「浴槽のエプロンも取扱い説明書には半年から1年に1度程度は外して清掃することとありますが、自分で掃除するものとは思いもせず、放置する家庭が大半。その結果、カビだらけになったエプロン内部を高圧洗浄しようとすると浴室内にカビの胞子をばらまくことになり、逆効果です。トイレの換気扇に至っては内部にある縦型シロッコファンが外せません。でも、埃が詰まったままにしておくと7年ほどで壊れてしまう。高性能になったのは良いのですが、居住している人の力を超えた設備になってしまっているのです」。

考えてみれば、昔もビルトインエアコンのように自分では掃除できない設備はあった。だが、最新の家はそうしたモノが増え、結果、プロに頼むか、故障するまで使って交換するかしかできなくなっているわけだ。住宅の性能自体が上がっていることは確かなのだろうが、それによって自力でメンテナンスができなくなるのは果たして進化したと言えるのだろうか?疑問だ。

手間を省こうとすると手間が増えるという不思議

家事が苦手、あまりやったことがないという人ならとりあえず1冊、ノウハウ書を手に入れてみては。恥ずかしながら私も学ぶことが多かった家事が苦手、あまりやったことがないという人ならとりあえず1冊、ノウハウ書を手に入れてみては。恥ずかしながら私も学ぶことが多かった

ちょっと脱線するが、こうした現象は家事をラクにするという家電でも見られるという。たとえばフィルター自動洗浄機能付きのエアコン。「フィルターに溜まったゴミを自動で集めてはくれるのですが、そのゴミは自分で捨てなければなりません。でも、フィルター掃除をやらなくて済むと勘違いして購入する人が多く、ゴミを放置。エアコンから嫌な臭いがしたり、効きが悪くなって気づくという例が少なくありません。また、こうした機種はプロに掃除を頼んでも通常の3倍くらい高くつきます」。

自動掃除機やスティック型掃除機などで、排気から埃を除去するためにとフィルターが付けられているタイプのものでは、そのフィルターを掃除するために別の掃除機が必要になるという。

「ゆる家事、ラク家事、ハピ家事などと手間が省ける、ラクできるという家事記事を作ると読まれるし、売れるのですが、実はそれを追い求めると逆に手間が増えることも。もちろん、ラクに掃除できれば良いのですが、それを設備や誤った知識に頼るのは間違いです」。

ラクしよう、時短しようと検索で得たいい加減な知識でモノを買ったり、掃除するより、一度立ち止まって正しい知識を身につけ、それに従って手順通り、掃除する。遠回りのように見えるが、それが一番、我が家をきれいに保つというわけだ。

「洗面所などに使われているクッションフロアの素材、塩ビは空気中の油煙やヤニを吸着する性質があり、掃除機でも、水拭きでも取れない汚れが付くことがあります。でも、これはセスキ炭酸ソーダ水をスプレー、メラミンスポンジで細かく汚れをかき出すようにすると一発。知識が掃除をラクにするのです」。

昔の人は言った。急がば回れ。大掃除も同様というわけだ。

2015年 12月15日 11時16分