大正時代のレンガ造りの建物は既存棟として活用

京都市の中心エリア・烏丸御池に立つ商業施設「新風館」が再開発される。そんな話題で京都の街がにぎわったのはもう5年ほど前だ。以降、新しい新風館にはエースホテルのアジア初上陸となる「エースホテル京都」が入る、映画館ができるといったニュースが届くにつれ、地元の人々の期待はどんどん高まっていった。

開業は、今年2020年6月。旧新風館(2001~2016年)でも使われていた大正時代の1926年に竣工したレンガ造りの旧京都中央電話局(1983年に京都市指定・登録文化財第一号に指定)を活用した既存棟と、新築棟からなる新生・新風館が誕生。ホテル、映画館、店舗が入った複合施設である。

西側から見た新風館。1階は商業施設、2・3階はエースホテル京都。地下1階には映画館がある 撮影・フォワードストローク西側から見た新風館。1階は商業施設、2・3階はエースホテル京都。地下1階には映画館がある 撮影・フォワードストローク

旧新風館のコンセプト「伝統と革新」を継承

「京都は長い歴史を持つまち。新風館は、有形無形問わず先人が積み上げてきたものを大切にしながら新しいものを取り入れようと、『伝統と革新』を開発コンセプトに掲げています。これは旧新風館から受け継いだ考え方です」
そう話すのは、新風館を運営するNTT都市開発の渡辺修五さん。歴史的建造物である建物を活用しながら再開発を行ったのも、コンセプトの体現だと言う。レンガ部分の耐震補強は行われたが、歴史を刻んできた風情は大切に残されている。

建築家・隈研吾さんによる建築デザインもまた、伝統が守られてきた京都のまちになじむように意識されていると渡辺さんは話す。
「落ち着きと温かさを表現するため、木材を多用したり、繊細さを感じるメッシュ素材を採用したそうです」

左/エースホテル京都の外観。銅色のルーバーは、京都のまち並みになじむようにと採用されたそうだ 右上/東側の外壁には繊細な表情を演出するためメッシュ素材を設置。光と風を優しく通す環境装置でもある 右下/NTT都市開発 商業事業本部 商業事業部の渡辺修五さん。「お越しくださる方のライフスタイルに合わせて、新風館でお過ごしいただきたいです」左/エースホテル京都の外観。銅色のルーバーは、京都のまち並みになじむようにと採用されたそうだ 右上/東側の外壁には繊細な表情を演出するためメッシュ素材を設置。光と風を優しく通す環境装置でもある 右下/NTT都市開発 商業事業本部 商業事業部の渡辺修五さん。「お越しくださる方のライフスタイルに合わせて、新風館でお過ごしいただきたいです」

まち歩き気分を楽しめるよう、回遊性を意識

京都らしさでいえば、回遊性という点にも注目したい。
新風館は西・北・東の3面が通りに面していて、それぞれに出入り口がある。だがドアがないため、オープンな雰囲気が感じられる。これは、新風館を“まちの一部”として捉えているからだ。

「京都は、まち歩きが楽しい場所。まちを回遊している気分で、気軽に出入りしていただきたいと思っています」
まちの一部という意味では、パッサージュ(店舗が並ぶ通路)と中庭も大きな役割を果たしている。

「両側に並ぶ店舗は、少し出っ張った店があったり、引っ込んだ店があったり。でこぼこしていて、まっすぐに並んでいないんです。足を進めるたびに表情が変わることで、人工的ではない、自然な京都の路地を表現しています」
建物に囲まれるように設けられた中庭は、緑があふれ、小さな川が流れている。まちなかで自然に触れられる空間だ。

「地下2階は地下鉄『烏丸御池』駅と直結しています。地下へのアクセス性の向上という意味で、これもまちの一部であるための工夫です」

上/東側の出入り口からパッサージュを通り、施設内へ。店舗は全20店。京都でなじみのある飲食店もあれば、関西初出店の雑貨店、京都初出店のファッションブランドも並ぶ 左下/建物に囲まれるように設置された中庭。自然を感じる散歩道としてもぴったりだ 右下/こちらは旧新風館時代から使われている北側の出入り口上/東側の出入り口からパッサージュを通り、施設内へ。店舗は全20店。京都でなじみのある飲食店もあれば、関西初出店の雑貨店、京都初出店のファッションブランドも並ぶ 左下/建物に囲まれるように設置された中庭。自然を感じる散歩道としてもぴったりだ 右下/こちらは旧新風館時代から使われている北側の出入り口

地域に開かれた「エースホテル京都」は、新しい文化の発信地

新風館の中核をなすのが、エースホテル京都だ。今回の再開発で新たに作られた新棟の1階北側にフロントやロビーが、2~7階に客室やレストランがある。

エースホテルは1999年、アメリカ・シアトルに最初のホテルを開業。地域性を取り入れたデザインを施しながら、地域コミュニティーのハブという機能を果たすだけではなく、文化発信基地としての役割も担ってきたという。

「エースホテル京都ももちろん、同様のコンセプト。ホテル1階のロビーには椅子やテーブルが並び、コーヒーショップやギャラリーもあります。通勤通学の途中に立ち寄ってコーヒーを1杯楽しむ、アート作品を鑑賞するなど、地域の方にも日常的に利用していただきたいスペースです」

新風館には、地域に開かれた場所がもう1つ。それが、敷地内の南側、1階にあるポップアップスペースである。

「住民、団体企業の皆さんがイベントをやりたいとか、新製品のテストマーケティングをしたいというときに使っていただけます。京都は地域の祭りや行事も多いので、そういった際のサテライトスペースとしても使用可能です。大学の街ということで、学生さんに展示会などを開いていただくのもいいですね」

新風館は消費をするためだけの施設ではない。人との交わりのなかで新しい価値を見いだし、その価値と魅力を求めて、さらに人が集まる。これからそんな場所へと育っていくことだろう。

左上/エースホテル京都のロビー。左側がギャラリースペースである 右上/北側にあるエースホテル京都の正面玄関。木材の美しさも目を引く 下/エースホテル京都館内のインテリアデザインは、数々の受賞歴を持つロサンゼルスのデザイン事務所「コミューン・デザイン」が担当。日本を代表するクリエイターも参加している 左上/エースホテル京都のロビー。左側がギャラリースペースである 右上/北側にあるエースホテル京都の正面玄関。木材の美しさも目を引く 下/エースホテル京都館内のインテリアデザインは、数々の受賞歴を持つロサンゼルスのデザイン事務所「コミューン・デザイン」が担当。日本を代表するクリエイターも参加している 

2020年 08月16日 11時00分