全国各地の地域活動を支える警視庁発行「防犯パトロールマニュアル」とは?

水と安全はタダ…。治安が良い国として知られる日本では、長らく「安全は当たり前のもの」だと言われてきた。ただ、近年は、ひったくりや侵入窃盗などの身近な犯罪に加え、振り込め詐欺が社会問題化するなど、高齢者や子どもを狙った悪質な犯罪が増加。私たちの日常は、決して安全とはいえない状況へと変わりつつある。
こうした犯罪を抑止し、安全なまちを守るために欠かせないのが警察の存在だ。ただ、警察の取り組みだけで、全ての犯罪が防げるのかといえば、それは難しい。
そこで今、全国各地に広がりを見せているのが、主に自治会等の地域団体を中心に実施される自主的な防犯活動、防犯パトロールである。警察庁の資料によれば、平成15年末時点で3,056だった全国の防犯ボランティア団体は、平成28年末時点で4万8,160まで急増。構成員の数も17万7,831人から272万5,437人と約15倍にまで増えているという。

こうした全国各地に広がりを見せる防犯パトロールにおいて、その活動のベースになっているのが、警視庁がインターネット上で公開する「防犯パトロールマニュアル」である。
このマニュアルは、警視庁生活安全総務課生活安全対策第一係が作成。防犯パトロールの人数や服装、携行品などを紹介するほか、具体的な実施要領についても詳しく解説。パトロール参加者自身が犯罪や事故に遭わないための注意事項や保険加入についても記載されている。

防犯パトロール活動が全国各地で盛んに行われている背景には何があるのか。また、警視庁では、なぜ防犯マニュアルを作成し、ウェブ上で公開するに至ったのか。そして、実際の活用状況はどうなのか。マニュアルを作成・公開する同庁生活安全総務課生活安全対策第一係の担当者に話を聞いてみた。

防犯ボランティア団体の団体数と構成員の推移(警察庁ホームページより)防犯ボランティア団体の団体数と構成員の推移(警察庁ホームページより)

地域の防犯力を高めると同時に、規範意識の向上や絆の強化を図る目的で作成

――「防犯パトロールマニュアル」を作成するに至った経緯は?
平成14年、都内の刑法犯認知件数は、戦後最多の約30万件を記録しました。その増加に歯止めをかけるため、官民一体となった犯罪抑止対策が推進されることになりました。そして、犯罪抑止は警察活動だけでなく、関係機関や地域住民との連携が必要であり、各地域における住民の自主的な取り組みを支援していくことが必要とされました。

地域の防犯の核でもある地域住民の方々による防犯パトロールは、地域の防犯力の向上を図り、規範意識の向上と地域の絆の強化に繋がるものです。そこで、安全で安心して暮らせるまちづくりの実現に向け、一人でも多くの方に参加していただき、また、継続して防犯活動を実施していただけるように、防犯パトロールを始めるにあたっての注意事項や、具体的な活動要領、事故防止などについてまとめることになりました。

――インターネット上で公開した時期とその理由は?
防犯パトロールマニュアルは平成16年に作成され、当時は各警察署に配布し、地域における自主防犯活動支援に活用されました。インターネットに掲載した時期や公開に至った経緯についての記録は確認できませんでしたが、一般的に、インターネット上に掲載することで、各地で行われる自主防犯活動に役立てていただき、かつ多くの方にその活動が安全で安心なまちづくりに役立つことを広報できることなどから、公開に至ったものであると考えています。

警視庁が公開する「防犯パトロールマニュアル」の一部(警察庁ホームページより)警視庁が公開する「防犯パトロールマニュアル」の一部(警察庁ホームページより)

江戸川区役所や町田市役所はウェブに転載。八王子市役所ではマニュアル作成の参考に

八王子市「防犯パトロールマニュアル」八王子市「防犯パトロールマニュアル」

この防犯パトロールマニュアルをインターネットに公開したことで、実際に地域の防犯パトロール活動に活用する自治体も現れているという。

――ネットで公開後、どのような反響や問い合わせがありましたか?
防犯ボランティア団体から、パトロール活動を行うにあたって参考になる資料が欲しいとの問い合わせを受けた際、防犯パトロールマニュアルを紹介しました。そして、警視庁ホームページからダウンロードし、メンバーに配るなどしてご活用いただいています。

また、江戸川区役所や町田市役所のように、防犯パトロールマニュアルを自治体ホームページで掲載している例もありますし、八王子市役所では、自治体独自の防犯パトロールマニュアルを作成する際の参考にしています。

――マニュアルを作成するにあたり、気を付けた点は?
実際活用する人の気持ちになって理解しやすいような表現で、詳細に説明できるように留意しています。これまで防犯パトロール活動を行っていない方や、経験のある方、どちらの方々にも活用いただけるように、防犯パトロール活動の事例などを示した後、具体的な実施要領について記載しています。また、不審者発見時は、活動している方々自身が、事件・事故に巻き込まれないようにするため、警察への通報を促すことを記載するなど、事故防止についても明記しています。

防犯パトロールを開始しようと考えている人たちの参考になることに期待

――今後、このマニュアルをどのように活用して欲しいですか?
警視庁では、検挙と抑止の両面で、犯罪を減少させることに取り組んでいますが、複雑・多様化する犯罪には、警察の力だけでは犯罪を抑止することが困難となっており、地域住民の理解と協力が重要となっています。これから防犯パトロール活動を始めようとしている方々が、安全かつ効果的に活動していただく参考となることを期待しています。

多様化する犯罪の抑止には、警察だけでなく地域住民自らの力で防犯意識を高めていくことが重要である。また、都市部を中心に核家族が増え、地域の繋がりが希薄化した現在においては、防犯パトロール活動を行うこと自体が、住民同士の交流を深めるという点でも大きな意味を持つだろう。地域の「犯罪抑止」と「絆の醸成」の両面で、今後も「防犯パトロールマニュアル」は大きな役割を果たしていきそうだ。

■参考資料
警視庁/防犯パトロールマニュアル

2018年 02月28日 11時05分