刻々と進化する技術。未来の「暮らし」はどう変化する?

近未来的な印象を受ける入口スペース。施設名にもある「2020」は、東京オリンピックの予定されている2020年を一旦の目標とした「2020年の暮らし」を提案する意味が込められている近未来的な印象を受ける入口スペース。施設名にもある「2020」は、東京オリンピックの予定されている2020年を一旦の目標とした「2020年の暮らし」を提案する意味が込められている

1985年を舞台とした映画「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」で30年後の未来として描かれていた2015年がやってきた。技術が相当進んでいる未来として描かれていたが、映画に登場したワイヤレスのビデオゲームやタブレットコンピューターなどは既に私たちの生活に当たり前のものとして存在している。
では、既に「30年後の未来」である今よりさらに5年後の2020年、私たちの暮らしはどのようになっているのだろうか?
2020年といえば、誰もがまず思いつくと思われるのが東京オリンピックの開催。世界に向けて日本をアピールする機会でもあるこの東京オリンピックに向けて、各種インフラ整備や技術開発の機運が盛り上がっており、たった5年後だが今では想像できないような技術が当たり前になっているかもしれない。

実は、その2020年の暮らしを体感できる施設が東京にある。
パナソニック株式会社が、東京都江東区のパナソニックセンター東京内に2014年6月にオープンした「Wonder Life-Box(ワンダーライフボックス) 2020」だ。
「世界中の人の『暮らし』の向上と社会の発展に貢献すること」を基本理念とし、家電を始めとした暮らしに関わる商品を総合的に開発してきた同社。ここでフォーカスするのはクラウドを活用した次世代型の「自分らしく、快適な」暮らし。今回、実際に「Wonder Life-Box 2020」を取材させていただいた。実際に体感した「2020年の暮らし」、その様子をご紹介したい。

2020年のある日のキッチンの様子

白いキッチンには、メニューなどの表示の他、IHコンロの機能も搭載。さらには食材を切る大きさ目安の目盛りまで表示されるようになっている白いキッチンには、メニューなどの表示の他、IHコンロの機能も搭載。さらには食材を切る大きさ目安の目盛りまで表示されるようになっている

最も驚いた機能の進化は、キッチンにあった。2020年のキッチンは、このようになっている。

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配達されてきた荷物をキッチンの端に置くと、センサーが荷物に貼られたラベルから中身を認識しキッチン台にその食材に合ったおすすめメニューが表示される。「●●のメニューにするわ」と私が言うと、それに反応して調理アドバイスの音声が流れ、自動的にオーブンの予熱が開始。
調理アドバイスによると2人分の水が必要とのことなので、「2人分の水を出して」と言うと、水道の蛇口から自動的に2人分の量の水が出る。何もないように見えた白いキッチン台にIHコンロの青いマークが表示され、ポットの加熱開始。その間に食材をカットするのだが、音声アドバイスとともにキッチン台には目安の大きさの目盛りが表示される…。
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この、まるで料理の先生と対話をするように操作できるキッチンの秘密は、天井についたマイクで利用する人の声を認識する機能。パナソニックではこの機能を「くらしコンシェルジュ」と呼んでいる。人と音声アドバイスする「くらしコンシェルジュ」が文字通り「対話」しながら、もともと得意な人はもちろん、初心者でも料理を楽しめそうな仕組みだ。

この音声対話型の仕組みは、家族が集まるリビングでも応用されている。
白い壁に投映される「スマートスクリーン」では、テレビ番組の閲覧はもちろん、その人の志向に合ったコンテンツや旅行の行き先を「くらしコンシェルジュ」が提案してくれ、宿泊先の予約まで完了できる。またカーシェアの普及が想定された未来では、例えば近所の人から「車を貸してほしい」旨のメッセージの送受信ができるなど、コミュニケーションツールにも。テレビやHEMSなどをリモコンやマウスで操作するのではなく、ウェアラブル端末などを使い「くらしコンシェルジュ」に音声で依頼するイメージだ。

服もメイクも「バーチャル」で選ぶ

未来のサニタリーと寝室はどうなっているのだろうか?

鏡の前に立つだけで体重や体脂肪、心拍数を計測しデータが鏡に表示される洗面台では、クラウド上の履歴から毎日の健康状態をチェックすることができる。肌の状態や気分も測定し、それに合ったスキンケア方法や化粧品を教えてもらうことも可能だ。また、好みや行き先のシーンに合うメイク方法が鏡に映った自分の顔に施される「バーチャルメイク」は、身支度に忙しい女性にとってはとても嬉しい機能だ。

寝室では、質の良い眠り確保のため屋外の環境をセンサーが察知し、照明と空調を組み合わせて制御することで快適な睡眠環境を創り出すことができるようだ。また、ベッドに横になるだけで睡眠中のいびきや体温変化、眠りの深さの状態を測定し、クラウド上で管理することができる。これらは在宅介護や在宅医療にも応用できそうだ。パナソニック株式会社の生垣勉氏は、「この『Wonder Life-Box 2020』では暮らしに関わるサービスを提案していますが、実現すれば商業や行政サービスへの応用の可能性も大きいものばかりです」と話す。

体調管理は快適な暮らしに欠かせないが、面倒が勝ってしまいがちで自分で管理するのは難しいもの。でも、これらの機能がサポートしてくれると考えたらダイエットなども継続できるかもしれない。

(左上)画像では少しわかりにくいが、鏡の中にバーチャルメイクを施された自分の顔が映るようになっている</br>(右)「バーチャルフィッティング」では、鏡の前に立つだけでその日の行き先や照明に合った服や小物の色の提案が可能。写真では、持っているバッグは緑色だが鏡にはピンク色に映っている</br>(左下)ベッドに横になると天井に体温や心拍数の数値が表れ、睡眠状態をチェックする仕組み(左上)画像では少しわかりにくいが、鏡の中にバーチャルメイクを施された自分の顔が映るようになっている
(右)「バーチャルフィッティング」では、鏡の前に立つだけでその日の行き先や照明に合った服や小物の色の提案が可能。写真では、持っているバッグは緑色だが鏡にはピンク色に映っている
(左下)ベッドに横になると天井に体温や心拍数の数値が表れ、睡眠状態をチェックする仕組み

例えて言うなら宅配ボックスの”完全版”も

そして、現在既にあるサービスの完全版と言えそうなものもある。
集合住宅等にある宅配ボックスは不在時の荷物の受け取りを可能にしてくれたが、冷凍や冷蔵が必要なものはどうしても再配達が必要になる。
そこで提案される「スマートロッカーサービス」は、荷物に貼られたラベルの情報を読み込むと、その荷物のサイズに適したボックスが開き、温度調整も自動で行ってくれる。これがあれば、荷物の種類を問わず24時間365日、荷物の受け取りが可能だ。これによって、オンラインで購入した食材などを、より良い鮮度で食べることができそうだ。また、宅配事業者側は再配達の必要がほとんど無くなるので、コスト削減のメリットは相当な大きさになると思う。

玄関では、天井に設置されたセキュリティカメラが来訪者の顔を認識してクラウドに登録された来訪者リストの情報と照合し、自動的に玄関の扉が開くシステムも提案されている。これもSF映画などで見たことのあるようなシーンでワクワクするが、住人の帰宅時に利用できるのはもちろんのこと、高齢化社会で増加すると思われる訪問介護などの来訪サービスを円滑化することも可能になる。

(左上)ロッカーの端にある部分に商品のラベルをタッチすると…</br>(右上)荷物の大きさに適したボックスが自動で開き、保管に適した温度に設定される</br>(下)上部に設置された黒いものがセキュリティカメラ。これで来訪者の顔を認識し、</br>クラウド情報と照らしあわせて自動で扉が開く(左上)ロッカーの端にある部分に商品のラベルをタッチすると…
(右上)荷物の大きさに適したボックスが自動で開き、保管に適した温度に設定される
(下)上部に設置された黒いものがセキュリティカメラ。これで来訪者の顔を認識し、
クラウド情報と照らしあわせて自動で扉が開く

2020年、暮らしは本当にここまでくるのか?

今回お話を伺った、パナソニック株式会社の永岡誠司氏(左)と生垣勉氏(右)今回お話を伺った、パナソニック株式会社の永岡誠司氏(左)と生垣勉氏(右)

ここまで展示を見てきて、まるで昔のアニメや映画で表現された「未来」をそのまま実現したような便利な機能にとても驚かされた。
しかしこの「Wonder Life-Box 2020」で提案されるサービスは、展示を通して未来の暮らしの可能性を提案し、サービスの実現に必要な企業や行政との連携を目指している段階だといい、中には実際に実現に向けて準備を進めているものもあるそうだ。

本当に実現可能なのか?とも思ってしまいそうなものばかりだったが、考えてみれば一般的なスマートフォンの日本での初登場は2008年。たった7年で私たちの生活にすっかり欠かせないものとなった。例えば通勤途中にたった数回画面をタップするだけで買い物から決済まで完了できたり、iPhoneのsiri機能のように会話をするように調べ物ができたりという事は、それ以前は想像もしなかったのではないだろうか。それを考えると、ここで提案されているサービスも、近い将来にいずれも実現されていくのだろうとも感じる。

しかし技術の進化に感動しつつも、これだけ暮らしを網羅してくれると、それらを使う側の人間が怠けてしまうような危機感も感じた。説明してくださったパナソニック株式会社の永岡誠司氏に率直に質問してみると、「あくまでも”暮らしをサポートする”という考えで開発をしています。例えばこれからの超高齢化社会で生活の助けを必要とする高齢者が増える中、快適に暮らすために機器が全てやってあげるのではなく”快適にスムーズに動けるように手伝う”という考え方です」と説明してくれた。身の回りが便利になる一方で私たちは、技術による恩恵を受けながらも頼りきるのではなく、自律して機器と付き合うスタンスを身につける必要があるのかもしれない。

今回、「Wonder Life- Box2020」を見学させていただき技術は進化していると確信できた。「技術大国」と呼ばれる日本であるから当然と言えば当然なのだが、新しい商品やサービスが登場し、私たちの暮らしもどんどん変わっていくのだろうと感じる。ここで見た機能が商品化した際に、「あの時に見たものだ」と思い出すのも楽しみだ。
この「Wonder Life-Box2020」は、週末は一般の方の見学も可能だ(要予約)。見学で未来の暮らしに触れ、あれこれ想像するのも楽しいだろう。その便利さ・進化ぶりに、きっと驚かれる人も多いと思う。


【取材協力】
パナソニック「Wonder Life-Box2020」:http://panasonic.co.jp/center/tokyo/floor/floor_01/lifebox2020/

2015年 02月01日 11時29分