お気に入りの家具やファブリックを選ぶように、壁も自由に選べる時代に
日本で「壁」と言えば「壁紙(クロス)」が主流であり、「貼る」意識はあっても「塗る」という認識はあまり一般的ではない。
インテリアといえばファブリックや家具に目が向きがちで、壁はいわば背景。絵で例えれば、壁はあくまでもキャンバスであって、描く対象ではないと言ったところか、白や生成りなど、オブジェクトの妨げにならない色が無難に選ばれている。
しかし見方を変えると、マンションでも一戸建てでも、住まいにおける壁の占める割合は非常に大きい。言い換えれば、部屋の印象を左右する影響力も大きいということだ。
そうした住まいにおける「壁」を「塗る」という方法で暮らしを豊かにするという提案をしたのが、日本ペイントだ。同社の主力製品であるペイントを用いて、暮らしを考えるために立ち上げた一般ユーザー向けの新ブランドが「ROOMBLOOM(ルームブルーム)」である。
その情報発信基地が東京のみならず、このたび大阪にも誕生した。現地を取材し、「ペイントから暮らしを豊かにする」という新発想について、同社事業開発プロジェクト 空間デザインチーム マネージャー 中澤淑子氏にお話を伺った。
塗料をもっと身近に、暮らしに取り入れて楽しんでいただくために。
日本ペイントは、明治14年に創業、創立130年を超える。海外を含めたグループ売上高が5,000億円に迫り、国内では自動車用・建設用・工業用など産業向け塗料を中心に手がける同社が、ユーザー向けの新ブランドを設立したのには、どんな背景があったのだろうか。
「自動車や船舶、橋梁など、産業用の塗料を主に取り扱ってきた当社にとってROOMBLOOMブランドの取り組みは画期的な試みでした。
工業製品については海外生産が増えている上、国内人口は減少しており、将来的に国内塗料需要は先細りの懸念があります。そこで、新しいマーケットの模索が必要となり、『塗っていいはずなのにまだ塗られていない場所はどこだろう?』と私たちは考えました。その答えが家の中、そう、『壁だ!』と気づいたのです」と、中澤氏。
世界では壁はペイントするのが一般的であるのに対し、壁紙文化は日本と韓国ぐらい。そこに可能性を感じたのと、もう1点。
「当社の企業体質はそれまでの主要製品が産業向けが主流であったことからも明らかですが、男性寄り。『女性をもっと起用したい』という気運が社内で高まっていたのも、新ブランド発足の起爆剤になったと言えます」。
女性の視点やアイデアを生かし、
色(塗料)を売るのではなく感性を売るーー
そうした思いから、ユーザー向けの「ROOMBLOOM」が生まれたのだ。
ワークショップに参加してペイントのコツや楽しさを実感!
東京・西新宿に次ぐ2つめの情報発信拠点であるROOMBLOOM大阪では、実際に塗ってみることでペイントの楽しさをユーザーに実感してもらうための各種ワークショップを行っている。
取材日もちょうどワークショップが行われており、スタッフのサポートのもと、親子連れが壁を塗る作業をしていた。
「こうしたワークショップは、東京でも大阪でも、定期的に開催しています。最近はリノベーションが流行ですので自分で壁を塗り替えたいなと思うお客様も多いのですが、よほどDIYに手慣れた方でない限り、いきなり自宅の壁一面を塗るのは勇気がいるもの。まずはこうしたワークショップに参加して、スタッフとワイワイ、楽しく壁塗りに挑戦するのがおすすめです」。
せっかくなので、壁塗りのポイントを質問してみた。
すると中澤氏から「要領は、子どもたちが大好きな塗り絵と大差ありません」という意外な答え。まずははみ出さないように外枠や狭い部分をハケで塗ってから、面積の広い部分はローラーで一気に塗り上げるときれいに仕上がるというのだ。
「大胆にジグザグ塗っちゃってくださいね。気になる塗り足し部分も、乾けば均一になって、目立ちませんよ」。
ワークショップに参加する親子も最初は遠慮がちだったものの、次第に大胆に楽しそうに笑い声も増えていく。ペイントは、子どもも楽しく参加できるDIYとして家族のコミュニケーションの一助にもなる。
また、ワークショプの参加は、「楽しい」以外の意義もあるようだ。
「見本などで見た色と、実際に壁に塗った色とでは、微妙に印象が異なる事があります。色見本は小さな面積でしか色をお伝えできませんが、実際の壁は何十倍も広いもの。色というのは面積が大きくなればなるほど、白っぽく、明るく見える効果があるんです」実際に広い面積を塗る機会も、普通に過ごしていたらそうそう無いだろう。感覚的なズレの軽減にも、ワークショップでの実体験は役立つ。
壁を塗り変えることで、暮らしも“自分好みに塗り替える”きっかけに
従来のペイントとROOMBLOOMの違いは、色や暮らしにかける「想い」と言っていい。「自分の部屋を塗り変えるということは単に壁の色を塗り変えるのではなくて、暮らしを塗り替えていくことなんです」ROOMBLOOMの新規立ち上げに関わった中澤氏の言葉からも、その「想い」が感じられた。
部屋の印象を大きく左右する壁に無難な色のクロスを張って済ますのではなく、ペイントで、楽しみながら好みの空間を作る。その色に飽きたり気分が変われば、また家族で一緒に塗り替える。そんな風に、自分たちの手で暮らしをつくることができる「壁」と「ペイント」の可能性を、私たちはもっと楽しんで良いだろう。
100種類以上ある色はいずれも、価値観や生活シーンを想定した「ショッピングマニア」や「パリの朝」など、女性らしい視点で考案されたユニークなネーミングが付けられている。知らなかった色や、自分の意外な好みの発見もあって、選ぶ段階からもうペイントの「楽しさ」は始まるというわけだ。そうした発見の場として、ワークショプで家族と楽しむ場として、インテリアの選択肢を見つける場として、暮らしとペイントの情報発信基地であるROOMBLOOMのショップは、これからさらに賑わっていきそうだ。
■取材協力
ROOMBLOOM:http://room-bloom.com
2014年 11月07日 11時15分