どこにでも設置可能な手すりも登場。手すりひとつにも進化あり

手すりは使う目的、場所、使う人に合わせて選択するもの。実際に握ったり、つかまってみると良い手すりは使う目的、場所、使う人に合わせて選択するもの。実際に握ったり、つかまってみると良い

2014年10月1日から3日間、東京ビッグサイトで開かれた国際福祉機器展は今回で41回目を迎える、アジアでは最大の福祉機器展。今年も3日間で12万7000人もの来場者があり、車いす利用者も前回で2000人超だったとか。福祉関係者だけでなく、自分で使う、自分の親のために必要という人も増えているようである。以下、見てきた中で役に立ちそうなもの、意外なものなどをご紹介しよう。

年齢を感じ始めて最初に導入するのは段差を解消するための手すりやスロープなどだろう。一般に手すりというと廊下や階段などの壁に取り付けるものという印象があると思う。その場合、壁の強度が必要になってくる。実際、分譲マンションなどではあらかじめ壁に手すり用の下地を入れている物件もある。が、最近では置くだけで良い手すりも出ている(写真左上)。これなら壁の強度を心配せずに使えるし、途中にステップを設ければ段差解消にも役立つ。

突っ張り棒を利用したタイプもある(写真右上)。このタイプのメリットは住戸内のどこにでも手すりを作れるということ。写真ではベッドサイドに設置されており、これを使えば自分で起き上がって室内を移動できるようになる。もちろん、キッチン、浴室などにも取り付けられる。多少、足が不自由でも住戸内での行動が助けられる効果が大というわけだ。

つるつるした面だけに限られるが、もっと簡単に吸盤を利用して手すりというか、グリップを付けてしまえる商品もある(写真左下)。浴室内、浴槽内、トイレなどでの設置が想定されており、工事不要で済むので楽ちんだ。

見た目も可愛いアイディア商品が「どこでもグリップ」なる、手すりに取り付けて使う商品(写真右下)。ギュッと握って体重、力を掛けるには手すりだけでは細すぎるが、そこにこの商品が取り付けてあればこれを握ることで力を入れやすくなる。既存の手すりに付けるだけで、使い勝手がよくなるというわけだ。

トイレ、お風呂の使い勝手で生活の質も変わる

自立してトイレが利用できるか否かは人の尊厳にも関わらるもの。できるだけ自分で行けるよう、設備などで工夫をしたい自立してトイレが利用できるか否かは人の尊厳にも関わらるもの。できるだけ自分で行けるよう、設備などで工夫をしたい

狭いと言われる日本の住宅の中でも特に狭いのが水回り。トイレ、お風呂が狭いと体が不自由な人の自宅暮らしは難しいように思われるが、日本の住宅事情に合わせた機器類も多く出ている。たとえばトイレ。高齢になるとベッドとトイレが4m離れているだけで遠く感じるようになるそうで、ベッドと近いところにトイレを置かざるをえないケースも出てくる。その場合、できるだけトイレ然としたものではなく、一見椅子に見えるような、来客が来ても恥ずかしく思わなくて済むような品をという傾向があるようだが、実際に木で椅子のように作ってしまうと洗えなくなる。そこで木のように見えるプラスチックを使い、洗えるようにしたというのが写真左上の品。これ以外にも手入れが楽、室内のどこにでも設置できる、臭わない、立ち上がりやすいなど、トイレのバリエーションは豊富。意外に選べるものだというのが感想だ。

トイレのドアが狭くて車いす、介助の人とでは入れないという場合にはドアを引き戸に変えてしまうなどの手(写真右上)がある。力を入れなくても開け閉めしやすい釣り式の引き戸があったり、中からも外からも開けられるタイプがあったりと、こちらも場所、体の状態に合わせていろいろ。施設用の品もあり、全部が一般住宅で使えるわけではないが、他のメーカーも種々出している。

トイレよりも面倒なのがお風呂。人力で入れようとすると介助者に負担がかかる。だが、これもコンパクトに使えるリフト(写真右下)などが出ており、負担はかなり軽減されそう。このリフトは手動式でユニットバスにも取り付け可能。さほど大がかりな改修は不要というのもありがたい点だ。

浴室では座って体を回すだけで浴槽に入れるというアイディア商品(写真左下)も。体が動きにくくなっても初期ならこんな品ひとつで、生活の質はキープできるはずだ。

ハウスメーカーがロボット、印刷会社が衝撃吸収床材?

来場者にも人気だった「パロ」。人間の呼びかけに反応、学習をするのだという来場者にも人気だった「パロ」。人間の呼びかけに反応、学習をするのだという

今回出展した企業は国内、海外合わせて585社。その中には福祉機器とは関係のなさそうな会社が意外なものを作っていたりもした。最初にへえっと思ったのが大和ハウス工業。ハウスメーカーだから、住宅に関する福祉機器かと思いきや、なんとロボット。「生活総合産業」を目指す一環だそうで、同社のブースではアザラシの赤ちゃんを模したメンタルコミットロボット「パロ」に人だかりが。パロには高齢者が犬と触れ合うことで癒されるアニマルセラピー同様の、ロボットセラピーという効果が期待されており、すでにいくつかの介護施設などに導入されているとか。その他にも同社では脚力が落ちた人が装着することで自立歩行を促すロボットスーツや全自動の排泄処理ロボットなども多岐に渡るロボットを製作している。

また、凸版印刷が出展していたのは床材。転倒しても衝撃を和らげる効果があり、衝撃音も吸収、傷、凹みが目立たないというもので、高齢者のみならず、乳幼児のいる家庭にも良さそう。印刷会社らしく、美しい木目も特徴。考えてみればマンションなどに使われているシートフローリングも大日本印刷など印刷会社製である。すでに印刷会社は住宅産業の一翼を担っているということなのだろう。

個人的なお勧めは採光ブラインドと展示会そのもの

採光ブラインド。軽くて手入れも楽だという。岡山のあかりカンパニーが企画、販売しているそうだ採光ブラインド。軽くて手入れも楽だという。岡山のあかりカンパニーが企画、販売しているそうだ

最後に個人的に興味を惹かれた、面白いと思った品をご紹介したい。ひとつは玄関などに設置する小さな、折り畳み式の椅子である。玄関にちょっと腰掛けられる椅子があると、子どもに靴を履かせたり、ブーツを履いたり、あるいは買い物の袋を一時置いたりするのに便利だが、いつもあるのは邪魔。だが、折り畳み式なら必要な時以外は畳んでおけばさほどスペースは取らない。これは高齢者だけでなく、子どもがいる家庭、ブーツを履いている人がいる家庭などであれば設置してみても良いと思う。

もうひとつは採光ブラインド。ブラインドは外からのまぶしい光を遮るために使われてきたものだが、その概念を覆し、室内に自然光を取り込むものにしたのがこの製品。直射日光はまぶしいだけでなく、日が当たっているところだけを明るくし、それ以外を影にしてしまうが、このブラインドはまぶしさを軽減、光を室内全体に拡散する。そのため、ブランドを閉めても室内が暗くならないので、照明が不要になり、省エネにつながる。外からの視線を遮るのは当然として、紫外線、赤外線は遮るという効果もある。

また、ブラインドだけでなくロールカーテンやカーテン、シェードカーテンでも同様の性能がある製品を作っているそうで、夜間の寝室など暗くしたいニーズがある部屋には使いにくいが、それ以外の部屋なら省エネにもつながる。元々、高齢者云々とは全く関係なく開発されたそうで、個人住宅やオフィスその他での使用は当然あり得る。岡山の会社で個人で使うには直接問い合わせを入れる必要があるなど面倒もあるようだが、新居を構える際には一考しても良いと思う。

最後にこうした国内外の展示会を上手に活用することもお勧めしたい。展示会であれば国内外の福祉機器が集まり、比較検討もできるが、実際に使う、選ぶ必要があってショールームなどを見に行く場合、これだけの品が揃うことはない。そのため、とりあえず、これでいいかとあるものの中で決めざるを得ないのだが、どんなものがあるかを知っていれば、もっと使う人に合ったものを選べる可能性が高まる。そのためにも、東京ビッグサイトのHPを確認するなどして、ぜひ一度見に行ってみることを勧めたい。ただし、会場では大量にパンフレット類を渡されるから、荷物が重くなることは間違いない。覚悟して出かけよう。


2014年 10月18日 11時39分