借りる人を考えていない併用住宅では入居者は集まらない

当日集まったのは50人ほど。熱心に解説に耳を傾けた当日集まったのは50人ほど。熱心に解説に耳を傾けた

5月某日。青山の設備機器メーカーサンワのショールームでプライベート対談が行われた。語るはデザイナーズ系賃貸併用住宅で人気の建築家進藤強さんと有名不動産ブロガーオオカミさん。もともと、オオカミさんはハウスメーカーが提唱する賃貸併用住宅には否定的だったという。

「賃貸併用住宅はオーナー部分半分、賃貸部分半分で作るわけですが、自分が住む家だからとオーナーは4LDKとか、大きな家を作ってしまう。理論的には家賃は40万円くらいになるけれど、そんな賃料で借りる人なぞいやしない。それに賃貸経営では借りる人がお客さん。その人たちにいい場所を提供しなくちゃいけないのに、ハウスメーカーにとってのお客さんはオーナー。そこでオーナーの住まいをいい場所に作る。そんな併用住宅を作ったって失敗するに決まっている。だから、止めておいたほうがいいと言い続けてきたんです」。

賃貸併用住宅はローン負担を家賃で軽減する仕組みである。それで家賃が入らないとなったら、返済計画に齟齬が出る。にも関わらず、借りてもらえない家を作るとは何事だ!というわけである。

「ミストサウナは当たり前とか、風呂にテレビを付けるとかで競争力が上がるというけれど、若い人はテレビなんか見ない。そんな感覚で若い人に借りてもらえる物件が作れるわけはないでしょう」。

部屋で選んでもらう賃貸併用なら滞納なし、きれいに住んでもらえる

横須賀にある、スケルトンハウスと名付けられた物件。真ん中から分割して売却できるようになっており、室内も壁を抜いて広くできるなど、様々な事態に合わせて使える設計になっている横須賀にある、スケルトンハウスと名付けられた物件。真ん中から分割して売却できるようになっており、室内も壁を抜いて広くできるなど、様々な事態に合わせて使える設計になっている

一方の進藤さんは入居者を確実に集める賃貸併用住宅を作る建築家として有名な存在。進藤さんが手がけた中には最寄駅から歩いて20分というのに、ぜひともここに住みたいとオーナーに直談判した人がいるほどの物件も。オオカミさん曰く「進藤さんの物件はイエスの人とノーの人がはっきりした物件。気に入る人は一目で気に入るけれど、そうでない人は絶対にダメ。でも、面白いのは部屋が気に入って入居した人は滞納をしない。きれいに住む。オーナーにとっては理想的な入居者になります。こういう、入居してもらうことを考えた物件なら賃貸併用住宅もありかなと思うようになりました」。

私も実際、その、駅からとんでもなく遠い物件を見せてもらったことがある。入居者の部屋にもお邪魔させていただいた。男性のひとり暮らしというのに、女性の私が恥ずかしくなるくらいきれいに、センス良く暮らしていた。この部屋が大好き!という気持ちが伝わってくるような空間だった。

進藤さんも言う。「単身者だと2年弱で出て行く人が多い。でも、ウチの物件は4年くらいは住む人が多い。物件によっては寒いし、暑い。でも、ミニスカートを履くためにちょっと無理するのと同じように、その部屋が好きなら、それでもいいという人がいる。だから逆に駅前で建てたいという人は断っています。駅前で探す人は利便性しか見ない。部屋を見て好きになる人でないとダメ、そう考えています」。

自分だけの家を建てる感覚ではダメ、10年後、20年後を考えて建てよう

ショールーム内部。各種設備機器が並び、家づくりのイメージ固めには役にたちそうショールーム内部。各種設備機器が並び、家づくりのイメージ固めには役にたちそう

とはいっても極端に高い部屋でも借り手は見つからない。その昔のデザイナーズでは10万円、20万円も平気だったが、今は相場よりちょっと高いくらいで建築家の建てた家に住める。貸す際の坪単価で見れば普通のアパートでも、デザイナーズでもそんなに変わらない。だったら、最初にお金をかけるのは無駄じゃないかと考える人もいるだろう。しかし、勝負は10年後だと進藤さん。

「新しさという価値が無くなっても戦える物件、そういうものを作らないと経営にはならない。だから、僕の建てる物件は例えば10年後に仕切りを外して広くしたり、オーナーが違う住戸に移ったりと、家族構成、社会情勢に合わせて可変に広さ、間取りを変えられるように作ってある。設備も新築時にはそれほど入れない。でも、10年後に新しいものを入れたら、それでもう1回戦える。併用住宅は自宅を建てるものではあるけれど、経営をするものでもあるわけです。だから、そのくらい、長いタームでモノを考えないと成功しません」。

ちなみに併用住宅の場合には、嫌でもオーナーと隣り合って住むことになる。世の中にはオーナーと一緒を嫌がる入居者もいるのではないかという声があるが、これに対してオオカミさんが一言。「オーナーが近くにいることを嫌がる人は、かつてポイ捨てを叱られたなど、属性が悪いことが多い。だから逆にオーナーがいるからと避けてもらったほうがいいくらいですよ」。

全体を聞いて思ったのは、自宅を建てるからついでにという感覚では賃貸併用住宅は成功しないということ。自宅でありながら、お客様に貸すものであり、住んでいる限り、経営をするものなのである。その意識を持って建てないと、ローン返済を楽にしてくれるどころか、逆に負担を重くするだけになってしまう。これから建てようと思っている人は意識を切り替えて取り組んで欲しい。

最後にひとつ。会場になったサンワカンパニーのショールームには手頃なのに、洒落た雰囲気の各種設備が並んでいた。若い人向けの併用住宅にしようと思っている人なら参考になるはず。一度行ってみてはどうだろう。

<取材協力>
進藤さんの事務所 ビーフンデザイン
http://be-fun.com/

オオカミさんのブログ「狼旅団の地下に潜った不動産ブログ」
http://siokaraiookami.blog.fc2.com/

サンワカンパニー
http://www.sanwacompany.co.jp/shop/

2014年 06月02日 12時31分