センスをDIYするために

家具は買うだけじゃないと思って、自分で作るのがDIY。そしてできれば、オシャレな家具にしたいと思って取り組むこともあるだろう。しかし、出来上がったのを見て、こんなはずじゃなかったという経験を持つ方もいるのではないだろうか。

それでは、DIYのお手本となるオシャレな家具はいったいどんなものだろうか。ひとつ、デザイン家具と呼ばれるものが思いつくかもしれない。デザイナーがオリジナリティを発揮して、デザインされた個性的な家具たちだ。手作りするDIYだけではなく、「センスをDIY」するためにも、今回はデザイン家具について探っていきたい。

自宅がまるで、デザイン家具の博物館

パスティルチェアでくつろぐカーツさんパスティルチェアでくつろぐカーツさん

インテリア好きならば、誰もが気になる「デザイン家具」。そんなデザイン家具に囲まれた家が、神奈川県にあるので取材に向かった。

出迎えてくれたのは、家のご主人カーツさん。「デザインパパ」として、ご自身のインテリアコレクションを基に、インテリア情報やデザインの考え方を発信されている。通されたリビングにはパッと見で、10脚ほどのデザインチェアが。いくら素敵なデザインチェアでも、これだけあると、雑多になりそうだが、椅子同士がセンス良く並べられている。

それもそのはず、カーツさんは本業が美容室「cover with earth(カバーウィズアース)」の代表で、美容師。ちなみに筆者は美容室の常連客。以前より、建築家の筒井紀博氏に依頼されたご自宅や、デザイン家具コレクションは知っていたが、実物を見るのは取材日が初めて。

カーツさんが座っているのは、コレクションの中でもお気に入りという「パスティルチェア」。「錠剤」の名を持つこの椅子は360度ゆらゆらと揺れるロッキングチェア。フィンランド生まれのデザイナー、エーロ・アールニオの名作。そして私は、イームズのラウンジ・チェア・ウッドに腰かけるという贅沢な取材。デザイン家具ファンから、ため息が聞こえてきそうなシチュエーションだ。

とにかく、本物を知ることが大切

そもそもだが、デザイン家具とは何だろう。「デザイン家具は、モダンデザイン。モード(流行)に乗って、モデル(型)から、つくられた製品だね」と、カーツさん。現物が1点しかない工芸品とは違い、ある程度の数が作られる家具達だ。

憧れの「デザイン家具」。しかも、カーツさんのコレクションはデザインされた例えば1960年代など当時に作られた本物ばかり。普段は雑誌や本、美術展でしかお見かけする機会がないかもしれない。私自身、カーツさんの美容室にあるデザインチェア達が初めてのご対面だった。「現在、市場に出回っているデザイン家具のほとんどが、ジェネリック、リプロダクトと呼ばれる現代に作られた複製品。これをデザイン家具の入口として買ってしまう人はすごく多いんだけれど、デザインされた当時に製造された本物の魅力を知れば、違いが分かるはず」

本物を知るために、一番の方法を教えてもらった。「ひとつ、本物を買うこと。買って眺めるのではなく、日常で使うこと」。かといって、ヴィンテージ品を買うとなったら気になるのは値段。「初めて買うなら、カトラリーでもいいんだよ」ナイフやフォーク、確かにそれならば椅子等に比べて、手が届きそうだ。

本物のデザイン家具ぞろいな「カーツ邸」本物のデザイン家具ぞろいな「カーツ邸」

本物のデザイン家具の魅力とは

アアルトチェアNO.69は木工技術のお手本アアルトチェアNO.69は木工技術のお手本

カーツさんが本物の魅力の例として見せてくれたのは、フィンランドの建築家アルヴァ・アアルトがデザインしたチェアNo.69。「デザイン家具」=「変わっている形」と、つい思ってしまいがちだが、No.69はシンプルで一見、普通の木の椅子。けれど、この椅子には色々と工夫がされている。

「脚の部分が、無垢の木を曲げてつくられているんだ。細い溝を入れて、加工しているんだよね」どれどれ、良く見ると、本当。しかし、秘密はこれだけではない。「座面が組木になっていて、中が空洞になっているんだ」確かに手前に、組木のつなぎ目が見える。座面なら無垢を使ってもよさそうだが。「軽さを出すために、組木になっているんだ」なるほど。持ち上げさせていただくと、見た目よりもずっと軽い。

作られてから、何十年も経っているのに構造がしっかりしている。「接着剤の成分なんて、飛んでしまっているけれど、組木がしっかりしているから、座面が剃ったり、はがれたりすることもないね」

そしてこの、アアルトチェアNo.69は日本人ならではの楽しみがあるそうだ。「正座できるんだよ」おや、この機会に試さない手はない。早速、正座させてもらった。意外なようだが、結構、落ち着く。

椅子は小さな建造物

ル・コルビジェの「哲学」に座れるLC4ル・コルビジェの「哲学」に座れるLC4

デザイン家具といえば、椅子のイメージが私にはある。「椅子は“小さな建造物”と呼ばれていて、有名な建築家もこぞって椅子をデザインしているんだ」とカーツさん。

リビングの窓際にあるのは近代建築の巨匠ル・コルビジェの椅子、LC4。
コルビジェは上野の国立西洋美術館の基本設計を手掛けている。もしも、コルビジェ設計の建築物を手に入れようとしたら至難の業だが、彼がデザインした椅子ならば、話は別だ。

「椅子の魅力は、建築家の“哲学”が表れているんだ。学校で使うのか、リビングで使うのか、それだけでも違ってくるしね」先ほど、例に挙げたアアルトも建築家だ。しかし、同じ建築家でもコルビジェの椅子とは素材も形も全く異なっている。「頻繁に美術館に行ったり、ピカソの絵を買って家に飾ったりするのは難しい。でも、良いデザイン家具に囲まれて過ごせたら、毎日が美術館だね」

「あれ? 今日って、DIYについての取材じゃなかったっけ」とカーツさん。はっ、そうでした。素敵なコレクションを前にして、つい目移りを。リビングにはカーツさん作の品々も飾られている。「デザイン家具の本物を知っていれば、いざ自分でDIYするときにも役立つんだ」

気になる「デザイン家具とDIYの関係」は、次回のお楽しみに。


■参考ブログ
デザインパパこと、カーツが使う暮らしの道具
カーツさんのインテリア情報ブログ:http://desinpapa.blog.fc2.com/

2014年 09月22日 11時05分