憧れの家づくりを始めるために

ウィリアム・モリスの「レッド・ハウス」が憧れだったウィリアム・モリスの「レッド・ハウス」が憧れだった

イラストレーターとして、都内の賃貸物件で生活している筆者。せっかくならば、もっと家に手をかけたいと常々思っていた。

憧れは以前テレビで見たウィリアム・モリスの「レッド・ハウス」。モリスは19世紀イギリスに、アーツ・アンド・クラフツ運動(美術工芸運動)を起こしたデザイナー。産業革命後の大量生産に反し、中世の手仕事に回帰して、生活と芸術を一体化することを目指した。「レッド・ハウス」はモリスや友人がインテリアを手がけ、自宅兼工房として暮らしていた家だ。

筆者が今すぐ家を建てるのは難しい話だが、もし現代に「レッド・ハウス」のような、自分の考えを反映した家を建てるとしたら、一体どうしたら良いのだろう。

そこで、ここはプロに聞くのが一番と思い立ち、知人で一級建築士の若杉賢一さんにお話を伺った。

さっそく、自分の家を持つには、何をすればいいのか聞いてみた。「先日も同様の内容で、知人の若夫婦の相談に乗りました。家を建てるのに、何から始めれば分からない、という声はよく耳にします」

まずは建築家を探すところから

一級建築士の若杉賢一さん一級建築士の若杉賢一さん

それでは、まず建築家を探すにはどうしたらよいのだろうか。「知り合いなど身近に建築家がいれば、その方に聞いてみるのが一番ですね。後、建築関係の雑誌には、建築事務所の連絡先が載っています。その他、建築家マッチングサービスを行っているWEBサイトなどもありますね」

そして、いざ建築家に頼んでみたいと思ったら、どうすればいいのだろうか。「まずは相談ですね。最初の打合せ、ご相談は事務所に来ていただくことが多いです。事務所を見ていただき、これまで手がけた仕事も見ていただけます。そして住宅の希望をお伺いします。例えば、北欧風がいいとか、座敷がいいとか、庭とつながっていたいとか、子どもをずっと見ていたいなど、大まかなイメージで大丈夫です」

「逆に具体的なイメージが最初から決まっている場合、実現するには高コストになる場合もあります」住宅に対する全体的なイメージがあれば、希望の優先順位を建築家からのプロ視点で考えられるそうだ。「重要なのは、住宅にかけられる予算です。どのくらいの住宅が建てられるか、それで決まります」

相談料と、設計費

住宅にかかる費用とは住宅にかかる費用とは

このところ人気のリノベーションだが、実際に行われるのは東京近郊が多いそうだ。「地方では、土地が安いので新しく建てた方が早いのです。一方、東京は地価も高く、場所も限られるのでリノベーションが盛んになってきています」

「個人的な感覚ですが、特に東京の東側が近年賑わっているなと感じています。下町で住まわれなくなった住宅や工場や倉庫が多くあり、山手線沿線に比べると安く、どこかゆとりがあるからかもしれません。利用する動きが増えました」ただ、課題もあるそうだ。「やはり費用ですね。工事をするわけなのですから、それは仕方ないのです。ただ、都心の狭い住宅事情を考えれば、今後はリノベーションのために、政府や自治体などが支援する体制があればと思います」

 では、実際にリノベーションをしようと思った時、何から始めればいいのだろうか。「リノベーションは用途変更確認申請が不要のケースが多いので、必須ではないですが、築年数のチェックは必要ですね。1981年の改正で耐震基準が大きく変わっているので、それ以前に建てられている場合は特に注意したほうが良いと思います。」
耐震診断は専門家、役所等に依頼して行う必要がある。

リノベーションを行っても、全てが希望通りに変えられるとは限らない。忘れていけないのが、衛生設備と呼ばれる、水回りの配置だ。マンションでは、給排水配管の都合上、動かせないこともある。

工事中の困った話

思わぬ工事費の増加にご注意思わぬ工事費の増加にご注意

この機会に、建築家として困った話を聞いてみた。「例えばなのですが、工事中に施主の希望で、照明を白熱電球からLED電球に換えたとします。建築家が現場にいればいいのですが、施主が直接、工事中の工務店に依頼して換えてもらい、建築家が知らない場合は困りますね」

具体的にどう困るのだろう。「実際の工事が始まると、設計図とは違う希望が出てくることが多いです。この場合、施主が『やっぱりLED電球がいいな』と依頼して、工務店も『交換できますよ』と請け合います。ただLED電球は値が張るので、その分の上乗せ費用が発生します。もちろん工務店から請求があり、結果として全体の施工費が高くなります。建築家抜きで、お金の話が出ないまま、変更だけ行われてしまうのは、問題です」

「もちろん建築家からの働きかけも大切です。家づくりにおいて、コミュニケーションは必要不可欠ですね。施主と建築課のつきあいは『建てて終わり』ではなく、大切なのは建築家からのアフターフォローです。家を通して『ずっとおつきあい』していく形になります」

賃貸物件でも出来る工夫

筆者の部屋と、壁面棚筆者の部屋と、壁面棚

ここまで話を聞いて、建築家に家づくりを頼んだ場合の大まかな流れは分かった。けれど、賃貸物件暮らしの筆者でも、現在の住まいに何か出来ることはないのだろうか。せっかくの機会なので、若杉さんに現在の住まいの写真を見ていただく。

「収納が少ないですね。そうすると、どうしても物があふれてしまいますよね」その通りで、物が増えるたび小さな棚を買って、なんとか押し込めている状況だ。仕事関連の資料もあるので、何でもかんでも捨てるわけにはいかない。そこで、若杉さんからのアドバイス。「例えばなのですが、壁一面に収納用として、壁面棚を新しく作るのはどうでしょうか?」

教えてもらったのは、店舗などでよく見かける壁一面の棚だ。「これがあるだけで、スッキリして、置く場所によって部屋を区切ることも出来ますよ」もちろん、素人の私では自作出来ない代物で、いざ壁面棚を作るとなったらプロに頼まなければならない。けれどオリジナルの家づくりを少しでも体験出来る機会である上、懸案である収納問題が片付くチャンスでもある。これは前向きに検討したい。

筆者の家づくりは先の話になってしまうが、今住んでいる家を快適にするための方法を知って、今後の住まい選びに役立てるのはとても良いことだろう。憧れのマイホームが少し近づいたような気がする。

2015年 09月16日 11時07分