関連事業者の連携が安心して買える中古住宅、リフォームに繋がる

中古住宅・リフォームトータルプランの概要中古住宅・リフォームトータルプランの概要

平成24年、国土交通省では平成22年6月18日に閣議決定された新成長戦略に示された「中古住宅・リフォーム市場の倍増」に向け、「中古住宅・リフォームトータルプラン」を策定している。これは新築中心の住宅市場から、リフォームによって住宅ストックの品質・性能を高め、中古住宅流通を推進することで循環利用されるストック型の住宅市場への転換を図ることを目的としている。

と、書くと何やら難しいが、簡単に言えば消費者が安心して中古住宅を購入、リフォームして住めるようにしようというのが目的である。そのためには住宅の流通、リフォーム市場の整備、中古住宅の質の確保その他、いろいろな課題があるわけだが、中でも重要なのは関連事業者の連携である。

新築物件と異なり、中古住宅にはいろいろな業種が関与する。建物の質を確認するにはインスペクターが必要だし、耐震補強やリフォームをするにはリフォーム会社、工務店、取引の安全を確保するための瑕疵保険に関する事業者、もちろん取引自体には不動産会社が介在、その他不動産鑑定士や地盤調査、地籍調査が必要な可能性もある。特に建物の質が比較的評価しやすいマンションと異なり、一戸建ては建物ごとに状況が違い、多くの業種が関わる必要があることも。連携なくして中古住宅流通の推進はありえないわけだ。

工務店と不動産会社、大きな違いはスピード感

シンポジウムではワーキンググループを作り、実践、勉強をしてきた4工務店とコーディネーター、不動産会社などが意見を交換し合ったシンポジウムではワーキンググループを作り、実践、勉強をしてきた4工務店とコーディネーター、不動産会社などが意見を交換し合った

策定された方針を受けて関連する事業者はそれぞれに取り組みを進めているが、今回、工務店の全国組織であるJBNが中古住宅流通推進に関するシンポジウムを開いた。中古住宅流通とリフォームを一体化した仕組み作りに取り組んできた工務店4社が自らの経験、各地の成功事例を訪ねた分析などを発表するというものである。この中で課題とされたのは中古住宅流通を担う宅地建物取引業者を始めとする他事業者と工務店との連携である。

考えてみるとおかしな話だが、不動産会社は建物を知らない。不動産会社には宅地建物取引主任者という取引の専門家はいるが、この資格試験では法令が重視され、建物についてはごくわずかに触れる程度。そして、その逆も同様。工務店は不動産市場を、ユーザーのニーズその他を知らない。今後の協業が不可欠と思われるが、そこでキーワードとなっているのはスピード感だという。

シンポジウムに不動産会社の立場から参加した武蔵野不動産相談室の畑中学さんによると「不動産会社としては土日に物件を下見してもらったら、月曜日にはリフォームの見積りを発注、その週中には見積をもらって次の週末には契約まで進めたいところだが、工務店からするとそれは難しいということもある」のだとか。その他の参加者からも何度かスピードの違いが指摘され、連携、協働にあたっては工務店が不動産会社のスピードに追いつくことが重要と考えられているように思われた。

消費者が望むのは早さよりも質、安全ではないのか?

だが、早さがすべてだろうか?

不動産会社と工務店のスピードの違いは、やるべきことの違いによる。不動産会社は売買までが仕事だ。だが、工務店は買った人の希望に合わせて補強し、リフォームし、その後はメンテナンスにも携わる。となると、長い目でものを考え、精査する必要があり、きちんと責任を持った返事をするためにはある程度の時間が必要になる。また、不動産会社に早く、早くと急かされて嫌な思いをした人の話なども聞く。そう考えると、スピードだけが問題ではない気もする。もちろん、可能な範囲でスピードアップを図ることは必要だが、不動産会社のスピードに合わせるまでの必要があるのだろうか。それよりも、なぜ、時間が必要かを工程ごとにきちんと説明し、納得してもらうほうが大事ではなかろうか。

また、不動産会社との間では利害を調整する必要があるようにも思う。限られた予算の中で住宅購入、リフォームをするとなると、不動産会社は物件価格が高いほうが手数料が増えてうれしいし、工務店はリフォームにお金をかけてほしい。その利害の違いを曖昧にしたままの協働は互いの不信感につながりかねないし、そういう人たちからモノを買うことになる消費者にも不幸だ。シンポジウムではこの立場の違いについては取り上げられていたが、解決策については触れられず。今後の課題ということだろう。

中古を買ってリフォームのために役立つ一言

さて、以下、今回のシンポジウムで、これから中古を買ってリフォームしたい人のために役立ちそうなコメントをご紹介していこう。

首都圏近郊では場所によるが、新築適地が少なくなっているようである。神奈川県大和市で4代続く青木工務店の青木哲也さんによると「神奈川では土地を買って家を建てるのが難しくなっている。お金の問題だけではなく、土地が足りないことも理由で、昔は住まなかったような場所に住むしかない。そこで、どうしてもこの土地に住みたいという場合には中古に目を向けると選択肢が広がる」とのこと。かつて住まなかった場所とは何か問題があるかもしれない土地という意味であろう。土地購入は慎重にしたいところだ。

中古住宅流通に関する執筆も多いクオリアの阿久津浩之さんによると「首都圏では物件選びからローン、リフォームなど中古購入に関連する一連の業務をワンストップで提供する会社はすでに一般的。リノベーションもここ2年くらいで知られるようになり、確立してきた。ただ、地方ではまだまだ。難しい問題」という。幸いにして首都圏に住んでいるのなら、こうしたサービスを提供する会社を探して利用、上手に購入からリフォームまでを実現して欲しい。

また、リフォームとリノベーションの違いについて三重県志摩市の坂下工務店の坂下託一さんは「リフォームには技術力が必要、リノベーションは新しいものを作る作業だから考え方が大事」と発言されていた。施工業者を選ぶ際、この視点で考えるとどの会社に頼むかが選択しやすくなるのではないだろうか。

最後にタイトルの問に対する答えである。「中古は安心して購入、リフォームできるようになったか?」。今回のシンポジウムを聞いた限りでは事業者を選べば可能というところまでは言えるようになったのではないかと思う。今後、中古住宅+リフォームで住まいの質、安全を担保する大きな役割は工務店が担うはず。もっと多くの工務店が他事業者と連携し、安心できる住まいを提供してくれることを期待したい。

2014年 06月11日 10時25分