ユーザーが誤解する瑕疵保険

中古住宅が長く使われ、資産性が維持されるためには、買主(所有者)が建物の知識を身につけ、点検やメンテナンスを行うことでしか達成できない中古住宅が長く使われ、資産性が維持されるためには、買主(所有者)が建物の知識を身につけ、点検やメンテナンスを行うことでしか達成できない

「何かと不安の多い中古住宅ですが、瑕疵(かし)保険がついてるから大丈夫です。安心です」

こういった営業トークは、ただちにやめてほしい。これでは瑕疵保険は、ただの目先的な中古住宅流通促進の道具にしかならない。せっかくの制度も運用を間違えれば台無しである。

中古住宅が長く使われ、資産性が維持されるためには、結局のところ、買主(所有者)が建物の知識を身につけ、適度に点検やメンテナンスを行うことでしか達成できない。

中古マンションの買取再販や、リフォーム・リノベーションをセットにした不動産仲介が増加するにつれ、トラブルや不具合もそれに比例して、いやそれ以上に増加していることを、さくら事務所では把握している。

保険で建物が長持ちするわけではない

瑕疵保険適用のための現場検査は「保険期間中に瑕疵が発生しないか」といった観点で検査が行われる瑕疵保険適用のための現場検査は「保険期間中に瑕疵が発生しないか」といった観点で検査が行われる

瑕疵保険適用のための現場検査は「保険期間中に瑕疵が発生しないか」といった観点で検査が行われる。
つまり、1年や5年を経過した後に瑕疵が発見される可能性は考慮しないわけだ。実際には、3年後6年後などに瑕疵が発見される可能性があっても、とりあえず保険は適用になってしまう。こうした事情・可能性を説明し、買主に入居後の建物ケアを促すなら話は別だが、販売の現場においては、そんなケースはごく稀だろう。

例えば築古の中古マンション。たった今は上下水道の配管が利用できても、10年以内にはメンテナンスや交換が必要なケースもある。こういう案件について、前述のようなセールストークを使ってしまったら、どういうことになるだろうか?

これまで、新築住宅は、あたかもパソコンや自動車などの工業製品を売るかのような売り方をされてきた。その結果、点検やメンテナンスを行わず、建物の寿命を縮める結果となっている。実際には建物は手作りの部分も多いし、時間の経過とともに劣化する事実、したがって手間ひまをかけて点検とメンテナンスを行う必要性について、説明不足だった。

建物の長寿命化・資産化のために

あくまで買い手責任を原則とし、買主側から購入判断、入居後の参考のためにホームインスペクション(住宅診断)を入れる。買うことになった場合に瑕疵保険の加入を検討する、といった制度設計にするのが自然ではないだろうかあくまで買い手責任を原則とし、買主側から購入判断、入居後の参考のためにホームインスペクション(住宅診断)を入れる。買うことになった場合に瑕疵保険の加入を検討する、といった制度設計にするのが自然ではないだろうか

タイトルに誤解を招く可能性があることはお詫びしておく。
「保険がついているから安心だ」などといううわべの営業トークに利用されるような瑕疵保険は不要だと言いたいのだ。

保険は文字通り「保険」であり、万が一のための備えにすぎない。行き過ぎた消費者保護は建物の寿命延長につながらない。まずは、あくまで買い手責任を原則とし、買主側から購入判断、入居後の参考のためにホームインスペクション(住宅診断)を入れる。そして買うことになった場合、万が一に備えて瑕疵保険の加入を検討する、といった制度設計にするのが自然だ。

消費者保護的な制度設計は、建物の長寿命化・資産化にはつながらない。業界が保険をうわべの営業トークに利用するのも同じことだ。
国交省には、建物の長寿命化、資産化に寄与する制度設計を望むし、業界にはやはりそれらに向けた運用を望む。

2014年 07月02日 10時53分