「MUJI HOUSE」の1,000戸を超える団地リノベーションのノウハウを投入
マンション購入時の選択肢として、中古を購入しリノベーションを行うことは当たり前になってきた。ただし、中古物件探しから引き渡しまでには手間と時間がかかるのが悩みどころだ。
そんな住まい手のニーズをくみ、無印良品の住宅事業を展開する「MUJI HOUSE」では、団地・マンションのリノベーション済み物件の販売をスタートさせた。MUJI HOUSEが中古の分譲団地やマンション住戸を取得し、フルリノベーションを行ったうえで、完成品として住戸を販売するもの。
同社では、2012年よりUR都市機構とのコラボ企画として1,000戸を超える団地リノベーションを展開してきた。今回はそのノウハウも生かしながら、単独プロジェクトとして展開する。
買取再販のリノベーション物件販売の狙いやコンセプト、そしてプロジェクト第1号物件となる「港南台めじろ団地」の魅力をMUJI HOUSEの浅見一也氏に聞いた。
「港南台めじろ団地」は、性能向上と自由なカスタマイズがコンセプト
今回のプロジェクトでは、住戸のリノベーション方針として同社が2015年より展開する性能向上リノベーション「MUJI INFILL 0」を導入。「内装(インフィル)を解体し、一旦ゼロにして刷新することで性能向上を実現。と同時に住む人が自由にカスタマイズできることをコンセプトにしています」と浅見氏は説明する。
MUJI INFILL 0を採用する空間の特徴は主に4つほどある。まず1つ目は、なるべく個室をつくらない「一室空間」の設計だ。もちろん構造壁は残すが、なるべく部屋数は抑え、家具の仕切りによってライフステージの変化に柔軟に対応する考えだ。
2つ目は、性能向上リノベーションを謳うに欠かせない「温熱性能の向上」を実現する。リノベーションでは窓の変更が難しい場合も少なくないが、複層ガラスのインナーサッシを追加し、既存窓+2のトリプルガラスで対応する。当然、断熱性能や遮音性能が向上するが、壁にももちろん高性能の断熱材が施される。これらは、温熱シミュレーションで一戸ずつ診断のうえ、適切な施工が行われる。
また、3つ目は「スケルトン」へのこだわりだ。配線配管をやり直せることはもちろん、見えない下地などにも目を配れるため、高性能な改修が実現できる。そして4つ目が無印ならではの素材へのこだわりだ。キッチンはURとのコラボ企画「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」で共同開発したオリジナルキッチンを使用。ドアノブやハンガーなどの金物類も無印のオリジナル。洗面台やユニットバスなどもシンプルながらスタイリッシュという無印らしい世界観で統一される。
無印良品の家具やラックも備え付け、少しの準備ですぐに生活スタート
では、実際の販売物件を見てみよう。このプロジェクト第1号物件となるのが、新宿から電車で約1時間、JR根岸線「港南台駅」から徒歩約15分の「港南台めじろ団地」の一室だ。「団地の魅力は、なんといってもその環境です。ゆとりある敷地には緑が多く、棟と棟の間隔も広く開放感や抜け感が魅力」という浅見氏の言葉のとおり、敷地内は公園のように整備された緑豊かな落ち着きのある環境だ。
同社が手掛けたのはこの団地の5階の一室。築47年、51.18m2の広さの部屋だ。もとは2LDKの間取りを1LDKに変更している。玄関を開けると目の前には真っ白のシンプルなシューズラック。そして、左に行けばキッチンとLDK、右に進めば直接洗面台に行ける回遊できるつくりが面白い。昨今のコロナ禍では、帰宅したらまずは手洗いやシャワーを浴びるという人も増えていることだろう。そんなニーズにもフィットする間取である。
LDKに進むと白とナチュラルな家具で統一された広々とした空間が広がる。まずキッチンだが、こちらは前述のとおり「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」で共同開発したオリジナルのもの。シンクやガス台の下部が空いているシンプルなつくりだが、ゴミ箱などもすんなり入るため使い勝手もよさそうだ。「水栓口がシンクの横についているのも自慢のデザイン」と浅見氏がポイントを教えてくれた。
シンプルなキッチンの収納力をカバーするのは、背後に設置された無印良品のラックだ。今回の販売住戸では、家具や家電製品なども備え付けのものが多い。このキッチンラックに乗る電子レンジやポットなども付属する。後述するがデスクやランドリー周りのラック、収納などもあり、寝具と冷蔵庫や洗濯機などいくつかの家電さえ持ち込めば、すぐにでも生活が始められそうだ。
また、室内に入って感じるのは、予想よりも広く感じること。白を基調にシンプルな設備や家具で統一されている効果もあるが、浅見氏によれば、「マンションなどでは天井から下がった梁や柱が存在しますが、それがない分、体感として広く感じられるのだと思います。また隣の棟と十分に距離があり、開口部が広がっていることも、広さを感じさせる理由だと思います」と語る。
団地のレトロさも生かしながら、無印らしいスタイリッシュ空間に
LDK隣の個室に入ると、収納が目に入る。通常であれば個室収納といえばクローゼットが用意されているが、ここでは取り外し可能な無印良品のラックが設置されている。部屋の奥には、無垢のデスクとチェアが置かれている。通常であればこのデスクスペースをクローゼットにしがちだが、コンセプトの通り、生活の変化に合わせて家具などで空間を変えやすいように変化しにくい設備はなるべく排除しているのが感じられる。確かに、このコロナ禍ではリモートワークの需要が高く、自宅でもデスク周りのスペースは重要視される。だが状況が変わることも考えられるため、フレキシブルに空間を変えられるのは魅力である。
玄関からも直接入れるランドリースペースもやはり白で統一されており、広々と感じられる。洗濯機置き場の上やその横にも棚やラックがあり、収納は十分。ドレッサーもおしゃれなスクエア型のボウルタイプで、キッチン同様ボウル下が空いているので、自由な使い方ができそうだ。鏡面も収納タイプなので細かなものを収納するスペースを確保できる。バスルームは、給湯設備が外に張り出すもともとの形を踏襲しながらも、団地のイメージを刷新する清潔な空間に。トイレも元の配管を生かしてモダンな印象に仕上げられている。
リノベーション物件の流通ハードルを下げる施策となるか
窓は冒頭でも説明したが、複層ガラスのインナーサッシを追加して温熱性能を向上させている。実はこの物件、最近団地側でサッシも入れ替えていたため、よりすっきりとした印象になる。実は「この管理状態のよい建物を見つけられる点」もMUJI HOUSEがパッケージングしてリノベーション物件を販売する魅力だと浅見氏は強調する。
「非常にこの物件は管理体制がいいんですね。サッシも新しいものに取り替えられていますし、外壁などの大規模修繕もきちんとしています。住人の方も多く、先行きの管理体制にも不安がありません。リノベーションを行う上では、こうした管理体制も重要なポイントですので、この点をしっかりと見極めてご提供していきます」(浅見氏)
確かに集合住宅の場合は、管理体制は重要なポイント。その点で第三者の目がきちんと入っている点は安心だ。
現在同社が手掛けているのは、この港南台めじろ団地と車坂団地の2室だが、今後は東京、神奈川、千葉、埼玉などでリノベーション販売を進め、ニーズを見ながら地方の都市部への拡大を検討している。現在販売中の2つの物件は、2~3人の20~30代をターゲットに設定しているが、今後は単身者やもう少し人数の多い家族向けの物件も検討していく考えだ。
リノベーション物件の流通のハードルを下げる施策となるか、今後も注目したい取り組みである。










