屋上菜園のある緑豊かなコーポラティブハウス

世田谷区弦巻、緑の並木道に沿って瀟洒な邸宅が建ち並ぶ美しい住宅街の一角に『弦巻noie』が竣工した。住民たちによって「ツルマキノイエ~弦巻の家~」と名づけられたこのマンションは、入居希望者が事業主となって設計・デザイン・建設にまで携わる自由設計のコーポラティブハウス(コーディネイト:株式会社コプラス)だ。

“住む人同士のつながり、子どもたちの成長、緑豊かな住環境を、育てるすまい”をコンセプトに掲げた『弦巻noie』。建物屋上に設けられた共用の『屋上菜園』は、住民たちの住まいへの想いを表す象徴的な存在となっている。

今回は、竣工後初となる入居者全員参加のワークショップ『菜園開き』と、マンション内での親密なコミュニティ形成が新生活にもたらす効果について取材した。

▲緑豊かな住宅街に竣工した『弦巻noie』。<br />9世帯が暮らす4階建てのモダンな建物で、館内には屋上菜園をはじめとした“4つの庭”を設けるなど<br />緑と共に家族を育むための様々な工夫が採り入れられている▲緑豊かな住宅街に竣工した『弦巻noie』。
9世帯が暮らす4階建てのモダンな建物で、館内には屋上菜園をはじめとした“4つの庭”を設けるなど
緑と共に家族を育むための様々な工夫が採り入れられている

きっかけは東日本大震災。3.11以降の集合住宅に求められているのは
『適度な距離感のご近所づきあい』

▲各住戸に1区画用意された屋上菜園では、それぞれの区画に手作りのネームプレートが掲げられている。このネームプレートは、竣工前の1回目の入居者ワークショップで各自が手作りで仕上げたものだそう。このように、住民同士が時間を共有することで、マンション内の連帯感が育まれていく▲各住戸に1区画用意された屋上菜園では、それぞれの区画に手作りのネームプレートが掲げられている。このネームプレートは、竣工前の1回目の入居者ワークショップで各自が手作りで仕上げたものだそう。このように、住民同士が時間を共有することで、マンション内の連帯感が育まれていく

「企画の段階から契約者同士が顔を合わせ、何度も打ち合わせをしているので、入居時にはすでに“みんな顔見知り”の状態なんですよね」。インタビューをした入居者のAさんがそう教えてくれた。

入居者全員が顔見知りというのは、コーポラティブハウスならではの特徴と言えそうだが、こうした“ご近所の顔が見える集合住宅”は、2011年の東日本大震災以降、ニーズが高まっている。

「東日本大震災を経験して、はじめて“家族以外で頼れる人が、近くに存在していることの安心感”の必要性を痛感しました。以前暮らしていたマンションでは、隣に住んでいる人のことを気にかけたこともありませんでしたが、今の住まいでは『マンションの中に知らない顔がいない』ということが安心感につながっています。

子どもたちも、入居者ではない部外者を見かけると『さっき知らないおじちゃんが外にいたよ』と、ちゃんと警戒することができるようになりましたし、帰宅時間が遅くなりそうなときはお隣に電話して『ちょっと子どものこと、みててもらっても良い?』とお願いすることもできる…こういうご近所づきあいができるマンションに暮らすことができて、本当に良かったと思っています」(入居者Aさん談)。



「入居者同士で顔を合わせる機会が増えることで、『ひとつ屋根の仲間』という意識がどんどん芽生えてきました。最初は“ご近所づきあいがうまくできるかな”と不安もありましたが、同じ街、同じマンションを選ぶひとたちは志向が似ているせいか、自然に意気投合することができましたね。

ただし、都会のご近所付き合いには、ベタベタしすぎない関係を持続することも大事。お互いに“適度な距離感のお隣さん”でいることが、円満の秘訣なんでしょうね」(入居者Bさん談)。


家族でもなく、友達でもなく、一緒に暮らす仲間を作る…集合住宅における『円滑なコミュニティ形成』を、現代の都心生活者の多くが求めているようだ。

子どもたちの自主性や社交性を育む『屋上菜園』でのワークショップ

▲屋上菜園には、いつでも水やりができるように雨水を利用した給水システムや、作業道具をしまう倉庫、休憩用のベンチなどが設置されている。子どもたちも積極的に苗植え作業に参加。植えたばかりの小さな苗に勢いよく水をやると、「野菜が痛そうだから、お水はそうっとね」と、やさしい気遣いを見せるシーンも。子どもたちにとっては、ここが『故郷』となり、一緒に過ごすひとつ屋根の下の仲間たちは『幼なじみ』となる▲屋上菜園には、いつでも水やりができるように雨水を利用した給水システムや、作業道具をしまう倉庫、休憩用のベンチなどが設置されている。子どもたちも積極的に苗植え作業に参加。植えたばかりの小さな苗に勢いよく水をやると、「野菜が痛そうだから、お水はそうっとね」と、やさしい気遣いを見せるシーンも。子どもたちにとっては、ここが『故郷』となり、一緒に過ごすひとつ屋根の下の仲間たちは『幼なじみ』となる

『弦巻noie』では、共用の屋上菜園がコミュニティ形成の場となっている。

先日おこなわれた『菜園開き』では、小さな子どもたちが楽しそうに苗植えに参加している様子が印象に残った。

キュウリ、トマト、ナス、枝豆、ピーマン、ネギなどなど、各世帯で事前に選んだ野菜の苗が配布され、次々に植えられていく。

ちなみに、屋上菜園は通常の畑と違って強風の影響を受けやすいため、苗が倒れないように成長に合わせて支柱を立てるなどの工夫が必要になる。野菜の育て方については、建物全体の植栽管理を受託した箱根植木(株)の菜園チームをアドバイザーとして招き、今後も半年に1回程度の割合で菜園ワークショップをおこなう予定になっている。収穫祭などの菜園を中心としたイベントも検討しているそうだ。


「初めて畑仕事を体験した子どもたちが、率先して土おこしをしたり、水やりをやったり…自分たちで自主的に動いている様子を見てビックリしました。

最近の子どもたちは、親や祖父母と学校の先生以外の大人との交流がなく、社会に出てから人間関係作りに苦労をする…なんて言われますが、こうしてマンションの中で“褒めたり、叱ったりしてくれる近所の大人”と交流を持つことで、社交性も育まれるのではないかと期待しています」(入居者Cさん談)。

コミュニティ形成は、住まいに対する愛情育成!
資産価値の維持にも嬉しい効果を期待

『マンション内コミュニティ形成』がもたらす嬉しい効果に満足している住民の方が多いようだが、今後、こうした入居者参加のワークショップは、誰が運営していくことになるのだろうか?

『弦巻noie』をコーディネイトした株式会社コプラスの管理部マネージャー・野村都さんによると、「基本的には、入居者の皆様の管理組合によって自主的に企画・運営がおこなわれますが、運営のサポートは、今後も物件を担当したコーディネイター2名が継続していく予定です。

わたしたちコーディネイト会社は、入居者の皆様に“交流のきっかけ”をご提案するのが最初の大切な仕事です。過去10棟のコーポラティブハウスでコミュニティ形成をサポートしてきましたが、環境や目的が同じ方が集まる集合住宅では、ひとつのきっかけを作ることができれば、その後のコミュニティはスムーズに育まれていくように感じています。

集合住宅のコミュニティ形成は、住民同士が交流を深めるだけでなく、“住まいに対する愛情育成”にもつながりますから、いずれはマンションの美観の維持、防犯性の維持、つまり資産価値の維持にも、嬉しい効果をもたらしてくれるのではないでしょうか」(野村さん談)。


五月晴れのさわやかな空の下でおこなわれた『弦巻noie』の菜園開き。この日植えられた野菜の苗は、住民たちの手で大切に育てられ、90日後に収穫祭を迎えることになる。“我が家の屋上で育った野菜”を口にする瞬間は、コミュニティ形成がもたらす“豊かな暮らし”を実感する至福のときとなることだろう。


■取材協力/株式会社コプラス
http://www.co-plus.co.jp/


▲屋上菜園で、竣工後初の『菜園開きワークショップ』を終えて、記念撮影をする『弦巻noie』入居者の皆さん。<br />この後、幹事が予約した近くのレストランで、打ち上げが開かれたそう。<br />畑仕事の後の一杯はさぞかし美味しかったことだろう▲屋上菜園で、竣工後初の『菜園開きワークショップ』を終えて、記念撮影をする『弦巻noie』入居者の皆さん。
この後、幹事が予約した近くのレストランで、打ち上げが開かれたそう。
畑仕事の後の一杯はさぞかし美味しかったことだろう

2014年 05月27日 11時27分