名古屋で生まれた地域コミュニティ「八の会」が主催

楽八オンラインイベント紹介ページより楽八オンラインイベント紹介ページより

2020年10月、「名古屋を楽しくカッコよく 楽八オンライン」と題したオンラインイベントが開催された。

主催は、「名古屋・中部をもっともっと格好良い街にしよう、ビジネスを盛り上げよう!」を掛け声にしている地域コミュニティ、八の会。同会は、2017年末に飲み会で発し、2018年から本格活動スタート。もとはIT従事者が集まってのことだったが、2019年からは製造業、流通業、飲食業など名古屋を中心にビジネス展開している人々が参加している。

八の会代表で、株式会社コラボスタイル代表取締役社長の松本洋介氏は、開催のあいさつで「コミュニティ理念は、“名古屋をカッコよく”。カッコいいはあえて定義せず、多様なカッコよさで名古屋を好きになってもらって、ビジネスの発展を」と説明した。

今回のオンラインイベントは、「チャンス チェンジ NAGOYA」と題し、これからのワークスタイルや名古屋ライフを見つめ直すことがテーマに。ニューノーマル、ノーノーマル時代の働き方や名古屋(地方)の今後の展望について、ゲストが語った。3時間半におよぶイベントで熱いトークが展開されたが、そのなかから2つのセッションをご紹介する。

リニアの開業により名古屋の生活、ビジネスの発展へ

上/岐阜大学 工学部客員教授の加藤義人氏。(写真提供:八の会)下/2027年開業予定のリニア中央新幹線は、品川~名古屋間を40分で結ぶとされる上/岐阜大学 工学部客員教授の加藤義人氏。(写真提供:八の会)下/2027年開業予定のリニア中央新幹線は、品川~名古屋間を40分で結ぶとされる

本イベントの後援をしている名古屋市の河村たかし市長のあいさつに続いて登壇したのは、国立大学法人岐阜大学 工学部客員教授の加藤義人氏。現職の前は長くシンクタンクで働いていた加藤氏のトークテーマは「リニア時代の名古屋のポテンシャル」。

リニア中央新幹線の名古屋~品川の開業は2027年の予定だ。工事の影響で遅れも見込まれているが、「なくなるわけではないので、2030年代の名古屋はリニアを前提とした立地になる」と加藤氏。

その経済効果は約10.7兆円と推計されている(大阪まで開業すると約16.8兆円)。「交通単独プロジェクトとしては歴史的な大きさの経済効果を生み出す」とのことだが、それが全国の都道府県に均一に行き渡るわけではない。愛知県は他府県に比べれば経済効果が大きい方ではあるが、最も大きいのはやはり東京。「愛知・名古屋は大きな効果を得るポテンシャルが高く、より大きな効果を発現せる役割がある。そして、日本経済のけん引的役割を担う必要がある」と指摘した。

リニアが開通すれば、名古屋を起点にすると2時間以内で移動できる範囲が拡大。東京、名古屋、大阪という3大都市圏の2時間圏人口は名古屋を中心に形成されることになり、立地的に優位になる。「名古屋駅から2時間で行ける範囲にある事業所の数は約8倍にふくれあがります。つまり、名古屋にいる方々は、商談できる東京の企業が8倍に」

しかし、そういったポテンシャルはありつつも、「名古屋の企業と取り引きしたり、投資が増えたり、就職する若者がいるかというとそれは別問題」と加藤氏。「やはり、名古屋から能動的な仕掛けが必要ではないか。それが八の会の“カッコよくしよう”という活動とシンクロしていってくれるといいなと思う」と話した。

そして「発展し続けるための戦略一考」を明かした。

「2040年の東海3県の人口は、2015年時点より約111万人減、愛知県のみだと41万人減と推定されています。人口が減ると家計消費が減ります。約41万人の人口減少で年間約4,000億円地域内消費が減少してしまいます。経済発展をし続けるためには、交流増加による消費増加が期待できる一方で、人口減少による消費消失が少し負け越すことが計算されます。さらにアフターコロナでは交流も減少するでしょう。だから、人口減少分を補う経済活動や移動を伴う交流の減少を補うこと、税収の構造的な増進を図ることが必要です」

最後に「望ましくは名古屋に企業立地トレンドをつくること、名古屋ベースの広域ビジネスの壁を無くすこと、企業が入居できるオフィスを供給すること。そのために企業の発想を名古屋市に届けてほしい」との提案で締めくくった。

ものづくりのまちとIT化

次にピックアップするのは、IT業界をけん引する3人の社長によるパネルディスカッションから。ゲストの3人は、この企画の直前のセッションで「コロナ禍で気付いた新しい働き方」というテーマでバーチャル環境を取り入れた多様な働き方を進めていることを話したサイボウズ株式会社 代表取締役社長の青野慶久氏。“納品のない受託開発”というシステム開発が注目されている株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長の倉貫義人氏。18歳で起業して24年目となるという、さくらインターネット株式会社 代表取締役社長の田中邦裕氏。

まず、田中氏が「ワークスタイル変革の一歩が踏み出しにくい?ものづくりの街へのヒント」というテーマを選択すると、「東京、大阪、名古屋と行ったのですが、新宿(東京)はすごく人が減っているんです。でも、名古屋も大阪も人が減るどころか、前よりも多いんじゃないかと。結局、ものづくりだからなど理由付けしているんだけれども、シンプルにITの導入が遅れているところほど人出が多いという気がしています」と指摘した。それに続いて「ITで解析すると、実は人の流れが変わった、それによってなにか新しい価値が生まれたという相互関係が見つけられると思うんです。ですから、ITを導入するだけでなく、目に見えて変わっていることをITでバロメーターにして、分析をして相互関係を見つけることで、なにかまちづくりのヒントができるんじゃないかなと思っています」とIT化に対する考えを述べた。

IT化について倉貫氏からも意見が。「今回のコロナ禍は、テレワーク、リモートワークの全国一斉お試し期間だったと思うんですね。そこで前向きに取り組まれた企業さんは、そのあとも続けられていると思います。緊急的にやってみようとか、やりたくないけれど緊急事態宣言だからやらなきゃ、という企業さんとは、そのあとの動きがぜんぜん変わってきたなという感じがしていて。前向きにチャレンジした会社はオフィスに戻ったとしてもIT化が進んだ状態になるので、圧倒的に生産性の差が出てくるのだろうなと。おそらく3年、5年したときに、かなり企業ごとの成長に影響が出てくるのでは」と語った。

愛知・名古屋は製造業が多く、“ものづくり王国”として発信している。そんななかでのIT化の鋭い指摘は実に興味深いものだった。先の加藤氏の話にあったように、リニア時代に向けて、せっかくポテンシャルの高い土地なのであるから、まちの発展のためになり得る、かなり大きなヒントではないだろうか。

「これからの働くについて思いをぶつけるパネルディスカッション」登壇者。右上から時計回りに、サイボウズの青野氏、さくらインターネットの田中氏、ソニックガーデンの倉貫氏、モデレーターを務めた八の会代表の松本氏(写真提供:八の会)「これからの働くについて思いをぶつけるパネルディスカッション」登壇者。右上から時計回りに、サイボウズの青野氏、さくらインターネットの田中氏、ソニックガーデンの倉貫氏、モデレーターを務めた八の会代表の松本氏(写真提供:八の会)

ニューノーマル、ノーノーマル時代の行政

パネルディスカッションからもう一つご紹介。IT化の話の流れから、青野氏がパネルから「ニューノーマル、ノーノーマル時代の企業や行政のありかた」をピックアップし、とくに行政について話し始めた。

「IT化でいえば、企業だけじゃなくて行政にもプレッシャーがかかったなと感じています。というのは、新型コロナウイルスの情報収集をしないといけないんだけれど、病院と自治体はアナログで、電話とFAXでやりとりをしていた。そこで僕らの会社が作っているシステム・kintoneなども使われ、一気にIT化が進んむところもありました。給付金も行政のシステムが機能していないじゃないかということが明らかになって、もうちょっとデジタルガバメント(※デジタルを活用した行政サービス)をと。そこで、デジタル庁をつくることになり、動きが変わってきたなと感じています」と青野氏。

そのデジタル庁について田中氏は「デジタル庁でいいなと思っているのは、外注をする人を育成するのではなく、デジタル庁のなかにエンジニアを雇って、デジタル庁の職員がシステム開発をしようとしていること。コロナがなかったらそんな話が受け入れられるわけもなかったのでは」と語った。

倉貫氏も「世論というか、国民の声として、ハンコをやめようとか、これまでどちらかというとマイノリティだった声がマジョリティになってきた。もはや無視できないくらいの総量になってきたんだろうなと感じますね」と話した。

青野氏は「システムは、アジャイルにつくっていかないといけない。これからの行政システムは市民が使いこなしてくれないといけないので、倉貫さんのところがされているような改善しながら運用していくようなシステム開発に切り替えないと結局失敗するような気がするんです」と提言。さらに、事例としていくつかの自治体でそういった動きが起きていると話した。

名古屋市も(東海地区のすべての自治体も)、よりよい市政のためにこういった動きにいち早く取り組んでもらえるとありがたいと強く感じた。

取材協力:八の会 https://hachinokai.qloba.com

新しくできる予定の”デジタル庁”への期待から活発な意見も交わされた新しくできる予定の”デジタル庁”への期待から活発な意見も交わされた

2020年 12月03日 11時05分