防災士の活動に空白をつくらないために

防災士とは、防災に対する意識、知識や技能を有していると日本防災士機構が認証した人に与えられる民間資格。防災や災害の復旧には、自治体などの公的な組織の働きや支援に頼るだけでなく、自助や共助も必要との認識が広まるのに伴って、資格を取得する人が増えている。防災士には、防災意識の啓発にあたるという役割もあるのだが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、防災に関するセミナーや訓練などの実施が難しい状況が続いている。

そこで、フリーアナウンサーの黒田典子氏をはじめ宮城県の防災士たちが中心となって、9月5日、コロナ禍における防災を考えるセミナーをオンラインで開催した。タイトルは「コロナ禍で防災を伝えていくためにー私たちにできること」。100名限定の参加者には、全国の防災士が含まれていた。

黒田氏は、防災や災害の教訓などのすべてをオンラインで伝えることは不可能だが、防災士の活動に空白の時間をつくらないようにするにはどうすればいいか、といったことを考えるきっかけになるとセミナー開催の意義を説明。オンラインでの活動を次のステップに進めたり、リアルとの融合を考えたりすることに、セミナーを生かしてほしいと訴えた。

オンラインセミナー「コロナ禍で防災を伝えていくためにー私たちにできること」冒頭で挨拶した黒田典子氏オンラインセミナー「コロナ禍で防災を伝えていくためにー私たちにできること」冒頭で挨拶した黒田典子氏

「行動変容」の実現まで継続して取り組みを

コロナ禍での防災活動事例を紹介した防災士の鈴木正規氏コロナ禍での防災活動事例を紹介した防災士の鈴木正規氏

続いて防災士の鈴木正規氏が、コロナ禍におけるオンラインを使った防災活動の状況について解説。オンラインツールを使ったことのない人が多いことや、参加者が限られることなどが、活動の障害になっていると指摘する一方で、防災講座、ワークショップ、防災訓練などをオンラインで行う取り組みは、着実に広がってきていると紹介した。仙台市では、各町内会の防災活動を調査し、それぞれの活動を横展開するために、ネットで情報を共有する取り組みがスタートしている。

「仙台市の例のように、オンラインの特性をうまく生かしながら、足りない部分をリアルで補うハイブリッド型の取り組みが、今後は増えるのではないでしょうか」と、今後を展望する鈴木氏。そのうえで「オンラインであれ、リアルであれ、大切なことは防災について伝えて理解を得ることではなく、行動を変えること。そうなるまで繰り返し、しつこく伝えてください」とアドバイスしていた。

災害から高齢者を守るために実行すべきことは

死亡時の発見状況。出典:熊本県災害対策本部資料(令和2年8月5日付)湯井氏スライドより
<br>防災士で一般社団法人福祉防災協会の上級コーチである湯井恵美子氏死亡時の発見状況。出典:熊本県災害対策本部資料(令和2年8月5日付)湯井氏スライドより
防災士で一般社団法人福祉防災協会の上級コーチである湯井恵美子氏

避難活動や避難生活のポイントを取り上げた湯井恵美子氏は、防災士で一般社団法人福祉防災協会の上級コーチ。コロナ禍であっても、避難するうえで重要なのは、新型コロナウイルス感染症にかからないことではなく、命を守ることであるとし、湯井氏は「新型コロナウイルスを正しく恐れ、正しく対処することが必要」と訴えている。各自治体では現在、避難所にマスクや消毒剤、体温計などを用意したり、健康チェックを行い、健康状態によって収容場所を分けたりと、さまざまな感染症対策を実行中だ。「安心して避難所を利用してほしい」と湯井氏は勧めている。

熊本県災害対策本部の資料によると、「令和2年7月豪雨」で犠牲となった高齢者の多くは屋内で発見されている。湯井氏は「屋内で亡くなるのは避難が遅れたことを示しています」と指摘。避難を促すうえで大切なのは、家族や友人、周囲にいる人など、よく知っている人が呼びかけることが、テレビの情報などよりも効果がある。「遠方からでもいいので、電話やSNSなど、あらゆる手段を使って避難を呼びかけてください」と湯井氏。また、近くにいる場合は、率先して避難することで、躊躇している人の後押しができるという。

誰ひとりとして避難や避難生活から取り残さない

湯井氏自身は、次男に重度の知的障がいがあることから、警戒レベル3の「避難準備・高齢者等避難開始」で避難を開始し、レベル4の避難指示までに完了することを目標にしている。障がい者の避難にあたっては、個々の障がい者に必要な支援や注意事項などを、わかりやすくまとめたメモのついたビブスやカードなどを用意している団体もある。

「ひと目で障がい者をどのように手助けすればいいかが理解できます。このような工夫と、周囲にいる人の支援によって、ひとりで逃げられない障がい者や高齢者を助け、誰ひとりとして取り残さない避難と避難生活を目指すことが必要です」と、湯井氏は強調した。

湯井氏スライドより湯井氏スライドより

全国20万人の防災士の力を結集することが必要

防災士でソーシャルグッドプロデューサーの石川淳哉氏防災士でソーシャルグッドプロデューサーの石川淳哉氏

セミナーの参加者がいくつかのグループに分かれて、防災について話し合うテーブルトークをはさんで、セミナーの総括にあたったのは、防災士でソーシャルグッドプロデューサーの石川淳哉氏だ。

石川氏は、防災士は今や全国に約20万人もいるので、その力を、防災を伝えることだけでなく、鈴木氏の言う「行動変容」の実現に活用することを提案。「全国の防災士がつながれば、できることはもっと多いはずです。命を守る取り組みをもう一歩進化させましょう」と呼びかけ、今回のセミナーがそのきっかけになるとした。最後に黒田氏から、東日本大震災から10年となる2021年3月にもオンラインでのイベントを検討していることが伝えられ、オンラインでのセミナーは幕となった。

テーブルトークでは、参加者から「行政との協働、若い世代の認識の改善が課題」「防災の取り組みは継続することが大切」「マイノリティの防災を考えるうえで、まずは知識と情報の共有を図りたい」などの意見が出たことから、オンラインでのセミナーは、防災士自身が活動を振り返るいい機会になったようだ。

オンライン防災Facebookページ
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