小学校2年生は車の速度が認識できず、危険でも渡ってしまう

小学生の場合、速度をうまく認識できていないケースが少なくない小学生の場合、速度をうまく認識できていないケースが少なくない

2016年2月20日、土木学会の土木計画学研究委員会が「少子高齢化における子育てしやすいまちづくり ~親の視点と子どもの視点~」と題したワンディセミナーを開いた。当日の様子から、安全な子育てのために知っておきたいことをご紹介しよう。

セミナーは最初に5人の研究者の発表があり、その後に国土交通省担当者2人による取り組みの現状説明、そして最後にパネルディスカッションという構成。冒頭の発表は日本大学理工学部交通システム工学科の稲垣具志助教による「子どもの道路横断時の判断特性と保護者の意識の実態」と題したもので、これは小学生の場合には道路を横断する際に車が見えていても、速度の判断を誤りやすいことを明らかにしている。

稲垣助教は研究にあたり、小学校2年生、5年生、成人それぞれ12~13人に横断歩道に立ち、異なるスピードで近づいてくる車を見て、どこまでだったら渡れると思うかを手にしたボタンで合図するという実験を行った。結果、小学校2年生の判断能力の未熟さは顕著で、30km/h超の高速車両の場合には誤判断率80%以上が6割近く、30km/h以下の低速車両に対しても誤判断率80%以上が4分の1となっている。

学校の交通安全教育では「右を見て、左を見て、安全だと思ったら渡りましょう」となっているが、小学校2年生の場合、車が見えていて、実は危険でも安全と判断して渡ってしまう可能性が高いということである。

学校任せにせず、親や地域が判断能力を養う指導を

親が子どもに直接教えることで子どもは速度について学んでいく親が子どもに直接教えることで子どもは速度について学んでいく

では、5年生になると判断能力は高くなるのか。これについては個人差が大きく、高速車両で見た場合、成人以上に正しい判断をする子どもも半数近くいるものの、誤判断率80%以上の子どもも3割強いる。5年生になったから大丈夫と判断するのは早計。子どもによっては未熟なまま、成長していることもあるわけだ。

ちなみに成人になっていても判断能力の低い人は一定数おり、研究発表中には「慎重さの欠落が習慣化、判断能力が未熟」との厳しい言葉があった。大人になっているから大丈夫と思いこまず、自分の判断が正しいか、これまでヒヤリとすることがなかったか、反省することも大事だろう。

さて、本題に戻ると、この研究結果からは親や学校がよく言う「よく見て渡りなさい」はそれだけでは不十分であることが分かる。交通事故防止のためには道路の見通しをよくするという手もあるが、それもまた、不十分である。では、どうすれば良いか。稲垣助教は親や地域の人たちがこうした研究結果を踏まえ、子どもの事故が発生しやすい区市町村道、つまり日常の生活道路で運転時にはスピードを考慮する、子どもの姿を見たらこれまで以上に減速するなどの注意を払うことが大事だという。

同時に子どもに判断を教えられるのは親や地域の人たちではないかという指摘もあった。学校の教室や校庭で行われる交通安全教育では環境が違い過ぎ、実際に道路を走ってくる車の状況がイメージできない。であれば、たとえば外出時、信号のない横断歩道で親が子に近づいてくる車に対して「あのスピードで、あの距離に来たら危険」などと実地で教えることが役に立つのではないかというのである。何度か教えれば速度、距離に関する判断能力が養われるはず。そうなれば危険な状況で渡ることはなくなる。もし、小さな子どもがいる家庭であれば、ぜひ、実践していただきたいものである。

幼児を乗せた自転車は頻回、短距離の移動が特徴

前後に子どもを乗せられる幼児同乗自転車。利用時は安全面に注意を前後に子どもを乗せられる幼児同乗自転車。利用時は安全面に注意を

もうひとつ、興味深かったのは都内での幼児乗せ自転車の利用実態に関する研究だ。都内に関わらず、子育て世帯にとって自転車はなくてはならない交通手段だが、時折、見ているほうがひやっとする光景を見かけることがある。スーパーの駐車場に子どもだけが残された自転車が転倒、周囲の自転車が無ければ子どもが地面に投げ出されたであろう場面や、ヘルメットをかぶっていない子どもや大量の荷物を乗せてかなりのスピードで走る自転車などなど。こうしたひやっとする場面がそのままで良いのかと思うこともしばしばである。

研究に携わった八千代エンジニヤリング総合事業本部社会計画部の上田真紀子氏も「安全基準に適合していても、幼児2人同乗自転車は重くてふらつきがち。それでも法律では車道を走ることが原則とされている。急いでいたり、子どもに気を取られて注意が散漫になつている人も多く、安全運転まで意識が及んでいないのではないか。子どもにヘルメットをさせていないケースも多い。幼児乗せ自転車には一般的な自転車利用とは異なる課題があるのではないか」という問題意識が発端だという。そこで都内在住の男女で、幼児乗せ座席が1人用、2人用、無しの3種類と電動アシストの有無を掛け合わし、6つの属性でそれぞれ100人、計600人にアンケート調査を行い、利用の実態、ルールの遵守状況などを聞いた。

調査結果からは、一般の自転車利用者よりも幼児乗せ自転車のほうが週当たりの利用回数が多く、さらに幼児1人乗せより2人乗せのほうが多いことが分かった。また、1回の移動あたりの平均移動距離は一般よりも幼児乗せのほうが短距離という傾向があった。子どもと一緒に、自由に、安全に移動できる交通手段として主に送迎に使われており、子どもの数が多いほど、その必要が増すというわけである。

子どものための安全ルールが無視されている実態

だが、調査結果からは安全に子どもを連れて移動できる手段として選択されている幼児乗せ自転車利用者が必ずしも安全のためのルールを遵守していないという問題が明らかになった。たとえば、6歳以上の子どもの同乗は法令違反だが37%の人が同乗させており、そもそも同乗させてはいけないことを知らない人も51.3%。子どもはヘルメット、シートベルト着用が推奨されているが、4割以上の人がさせていないことがあるとしている。子どもを乗せたまま、自転車を離れてはいけないことを知っていながら、守っていないこともある人に至っては22%にもなっている。

子どもが2人もいれば忙しいことはよく分かるし、ヘルメットやシートベルトを嫌がる子がいて、面倒に思うかもしれない。子どもを乗せて車道を走るのは不安だろうし、6歳以上を乗せてはいけないとしても他の交通手段がなければやむを得ないと思っているのかもしれない。ルール軽視の理由までは調査されていないため、各人の事情は明らかにはなっていない。だが、こうしたルールは子どもの安全を守るために作られているはず。様々な理由、事情があるにせよ、我が子の安全をないがしろにしてはいけないのではないだろうか。

また、調査では事故や危険の経験も聞いており、それによると幼児乗せ自転車利用者の41.5%の人が事故、危険を経験しているが、警察に届けるほどの事故は数%以下で、10%を超す一般の自転車よりも少ない。事故、危険を感じた場面では一般自転車の95%以上が走行中なのに対し、幼児乗せ自転車では停止時、乗降時に危険を感じた割合が3割前後と高い。車両自体の重さに加え、子どもが乗っていてさらに重い分、停止時、乗降時にふらついて転倒、自損するケースがあるわけだ。

自転車が走りやすい道路の整備が遅れていることや、自転車利用時のルールが周知されていないことなど、日本での自転車利用を巡る状況は欧米に比べ、かなり遅れていると言われる。だが、その状況下でもルールは守るべきだし、守っていないことで危険にさらされるのは子どもたち。子どもを乗せて自転車を利用する際にはルール遵守を心がけていただきたいものだ。

自転車利用安全五則 警視庁
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotu/bicycle/five_rule.htm

「幼児2人同乗用自転車」をご利用の皆様へのお願い 一般社団法人自転車協会
http://www.jitensha-kyokai.jp/info/up_img/1386639359-536678.pdf

2016年 03月21日 11時00分