外の「音」だけでなく、中の「音」も問題に

「音の問題はなかなか気づきにくいものですが、多様な建材があるのでショールームで実際に確認を。さまざまな音を体感できる当社のショールームも上手に活用いただければと思います」と井上さん「音の問題はなかなか気づきにくいものですが、多様な建材があるのでショールームで実際に確認を。さまざまな音を体感できる当社のショールームも上手に活用いただければと思います」と井上さん

在宅勤務のスタイルも一般化しつつある。自宅で過ごす時間が長くなると、今まであまり気づかなかったこと、気にならなかったことが悩みのひとつになるケースもあるようだ。オンとオフ、それぞれの時間を快適に過ごすためには、家族構成や生活のスタイルに適した空間づくりが求められるが、間取りプランやインテリアはもちろん、「音」の問題も大きく関わってくるだろう。

建築音響製品の開発・製造・販売を手掛ける大建工業の音響製品部 サウンドセンター長 井上直人さんによると、「音の問題というのは昔からあることですが、最近ではその内容に変化がみられるようです。たとえば、近隣との関係性が希薄になり、個が進んだことにより、今までは問題とならなかった音でも騒音となるケースもあります。また、建物自体が高気密高断熱となり、窓サッシなどの性能も高まってきています。そのため、外の騒音は聞こえにくく、外部の音よりは建物の中の音の方が気になる、といったことも増えてきています」と話す。

建物の中の音とは、戸建ての場合は自分の家でおこる音だが、マンションの場合は他室の音も含むので、ライフスタイルなどによっては、それなりの配慮が必要になる。

気になる「音」は、家族や自分が立てる「音」

大建工業が行った調査(下記グラフ)によると、一番気になるのは「家の中で、家族や自分が立てる音(43.1%)」だという。次いで「戸外から聞こえる音(40.3%)」、「室内に響く音(39.0%)」「隣人が立てる音、隣家から聞こえてくる音(27.3%)」が続く。

室内の音が気になるというのは、外からの騒音が聞こえにくくなったという理由だけでなく、間取りプランも影響しているという。「以前に比べ壁で細かく仕切るようなプランよりも、大空間のLDKであったり、吹き抜けを設けた住まいも多くみられます。そのため、たとえば、大型テレビのボリュームは大きくなり音が響きすぎて聞き取りにくい、リビングからドアひとつ隔てただけのトイレの音が気になる、といった不満が聞かれます」(井上さん)

また、アンケートによると、リフォームするなら少し余分にコストをかけてでも積極的に生活音を解決したい人が多いという。具体的には、最も多いのが「ドア・引き戸・窓の開閉音」、「掃除機をかける音」、「テレビやラジオの音」。他に「子どもが遊んだり走り回る音」、「換気扇の音」、「食器洗浄機の音」なども挙げられている。

このような家の中の音に関しての悩みや困りごとは、数としては若干増えているという。今後、働き方などの変化によっては増加することも考えられるのではないだろうか。

家を建てる前に知っておきたい気になる音についての大建工業による調査。
(左)■生活環境における「音」について 
(右)■リフォームするならコストをかけてでも改善したい「音」について
家を建てる前に知っておきたい気になる音についての大建工業による調査。 (左)■生活環境における「音」について  (右)■リフォームするならコストをかけてでも改善したい「音」について

家の中で静かにくつろぎ、気がねなく過ごすためには

周囲からの騒音などはもとより、わが家からの音漏れ、生活音に配慮した住まいをつくるためには、周辺環境に合わせ建物の配置や間取りを検討すること、窓サッシなど開口部に配慮することなどはもちろんだが、プランに合わせて適する建材を用いることも大切なポイントだ。

たとえば、あまり意識されていないのが外壁に設置されている給気口や排気口。24時間換気システム設置の義務付けにより、一般的な住宅では、給気口から給気し、排気口に換気扇(ファン)を設けるシステムを取り入れることが多い。そのため、これらから屋外の騒音、家の中から外への音漏れが問題となるケースがみられるという。「戸建ての場合、給気口にはフードが設けられていますが、これを防音タイプにすることで、フードから漏れる室内の音を小さくすることが可能です。油や熱、湿気に強いタイプのキッチンにはレンジ用の防音フードもあります。また、自然給気用のサイレンサーを換気口のパイプに入れるだけで、外からの音はもちろん、家の中からの音漏れを抑えることもできます」(井上さん)

また、室内に響く音や不快な生活音を和らげるには、音の響きを緩和させることができる吸音性能を持つ天井材なども適している。たとえば、リビングで用いることで、テレビの音や話し声が聞き取りやすい環境が生まれるという。「『吸音材』というと音が無くなる、音量が下がるようなイメージがあるかもしれませんが、正しくは、音を整える、調整できる性能、ということ。そういう意味では、日本家屋で用いられる畳も吸音性能を持った建材です。置き畳などをインテリアに取り入れることでもゆったりと過ごせるでしょう」(井上さん)

最近では、ペットと一緒に暮らす方も増えてきている。特に夜行性の猫の場合、高所から飛び降りたり、走り回る音が階下に響くことも多いだろう。たとえば、フローリングの下に設置する防音床下地材、反響音を抑える天井材などを取り入れるのもひとつの方法だ。また、寝室や書斎への鳴き声などの音漏れを軽減できる扉も検討したい。

井上さんは、「音を抑える配慮を施した扉には性能によってさまざまなタイプがありますが、当社の場合は、いずれも特殊な気密パッキンを施すことで性能を高めています。もちろん、扉を閉める音を和らげることにもなります。その他、音漏れを軽減しつつ通気が可能なトイレ用のドアもあるので、扉を選ぶ際には、デザインだけでなく性能面もチェックしてほしいですね」と話す。

友達が来ても気がねなく過ごすためには、屋外への音漏れを配慮したい。(左上)フードから漏れる室内の音を小さくする[防音フード21型] (右上)換気口から出ていく音を減らす[自然給気用サイレンサー] (左下)キッチンの換気扇からの音漏れを減少させる[レンジ用防音フード] (右下)室内に響く子どもの声や不快な生活音を和らげる天井材[クリアトーン9 ラインアート]友達が来ても気がねなく過ごすためには、屋外への音漏れを配慮したい。(左上)フードから漏れる室内の音を小さくする[防音フード21型] (右上)換気口から出ていく音を減らす[自然給気用サイレンサー] (左下)キッチンの換気扇からの音漏れを減少させる[レンジ用防音フード] (右下)室内に響く子どもの声や不快な生活音を和らげる天井材[クリアトーン9 ラインアート]

より「音」を楽しむ防音室。目的に合わせてプランニングを

「音」には、このような日々の暮らしの中での生活音や周囲からの騒音などの困りごとの「音」と映画や音楽などの楽しみたい「音」がある。よりよい「音」を追求する、楽器の練習室や映画を楽しむ場として、防音室にあこがれる方も多いだろう。

ひとくちに防音室といってもプランニングは多様だ。施工方法によっては、部屋の中にもうひとつの部屋を作るようなユニットタイプ、部屋そのものを防音室にする現場施工式のタイプがある。ユニットタイプは、組み立て式なので短期間で設置が可能なことがメリット、現場施工式は、間取りや建材、防音レベルを自由自在にプランニングできること、要望に合わせて細かく性能を選べることが魅力だ。

現場施工式の場合では、たとえば、仲間と一緒に楽器を楽しみたいのであれば、防音ドアやフローリングなど仕上げ材に敷きこむ遮音マット、防音性能を持つ換気システムなどを検討したい。また、響きすぎを抑える吸音天井材を用いることでクリアな音を楽しむことが可能。吸音性能を持ち音の響きを調整するパネルなども揃っている。使用する楽器や楽しむ映像、ジャンルなどによって、プランニングは多様。目的や使用方法を明確にして相談することが必要だろう。

仲間と一緒にセッションを楽しむためには屋外への遮音設計としたい。(左)音漏れが気にならない[防音ドアA25 ]、壁に取り付けるだけで適する音響空間を実現する[オトピタ04 くさび]、響きすぎを抑える吸音天井材[オトテン アコースティックブロック+オトテンモダン15] (右上)防音機能を持つ換気システム[防音ダクト換気扇32型 32C型] (右下)下の部屋に足音や衝撃音が響くのを抑える[遮音マットS09]仲間と一緒にセッションを楽しむためには屋外への遮音設計としたい。(左)音漏れが気にならない[防音ドアA25 ]、壁に取り付けるだけで適する音響空間を実現する[オトピタ04 くさび]、響きすぎを抑える吸音天井材[オトテン アコースティックブロック+オトテンモダン15] (右上)防音機能を持つ換気システム[防音ダクト換気扇32型 32C型] (右下)下の部屋に足音や衝撃音が響くのを抑える[遮音マットS09]

少しの配慮で改善できることも。「音」の感じ方を明確に

家づくりの際には、なかなか「音」まで十分な検討ができないケースも多いのが現実だ。暮らし始めてから、また、ライフスタイルや家族構成の変化によって気になる場合などもあるだろう。本格的な防音仕様ではなく、ある程度改善できれば十分という場合には、比較的手軽なリフォームの提案もみられる。

たとえば、テレビの音や話し声が聞き取りにくい、赤ちゃんの泣き声や子どもの声、室内犬の声が気になるなど、部屋の音が響きすぎる場合は、吸音性能を持つ天井材に変えてみる。寝室で隣の部屋の音が気になる場合は、壁や天井の下地に遮音パネルや吸音材を、また、防音ドアを取り入れてみる。希望と予算に合わせて検討することが大切だ。

新築やリフォームの際に、音に関して何かしらの不安がある場合は、早めに設計者に相談を。井上さんは「最初は、どういう悩みがあるのか、こだわりがあるのかを明確にすることが大切でしょう。どんな音が気になるのか、どんな音を抑えたいのか、どの程度であれば大丈夫なのかを設計者と共有することがポイントなのではないでしょうか」とアドバイスする。

「音」に関しては個人によって感じ方が異なるものだ。年齢によって、また、生活スタイルによっても変化することもある。快適な毎日を送るためには、目に見える居心地の良さだけでなく、「音」のように目に見えないものにも十分に配慮した住まいづくりを心掛けることが重要だろう。

取材協力  大建工業 

■快音提案プラン・トイレ簡易防音プラン(リモデルプラン)
トイレの音が隣の部屋に聞こえる、流水音で夜中に目覚める、などトイレの音が気になる場合の防音プラン。通気・音配慮タイプのトイレドアや遮音シートを用いることで音漏れを軽減できる■快音提案プラン・トイレ簡易防音プラン(リモデルプラン) トイレの音が隣の部屋に聞こえる、流水音で夜中に目覚める、などトイレの音が気になる場合の防音プラン。通気・音配慮タイプのトイレドアや遮音シートを用いることで音漏れを軽減できる

2020年 07月12日 11時00分