”マンションは管理が楽”だという幻想

「集合住宅に住む」ということを理解していなければマンション管理運営は語れない「集合住宅に住む」ということを理解していなければマンション管理運営は語れない

皆さんはマンション購入の際、管理についてどうお考えだろうか?修繕積立金や管理費を払っているから、「戸建よりマンションは管理が楽」「全部管理会社がやってくれるから…」と思っていないだろうか?近隣の方とのわずらわしいやりとりも最小限で済むし、自分で判断しなくても管理会社にまかせておけば、すべて大丈夫というイメージを持っている人が多いのではないだろうか。

実際は、複数のいわゆる”区分所有者”を有するマンションほど管理が大変なものはないのだという。今回、数々のマンション管理のコンサルティングを務めている株式会社さくら事務所の土屋輝之さんにお話を伺った。

「実際入居してみると、自分自身で決められることは部屋の中のことだけです。例えば、マンションのエントランスが暗くて怖いので、防犯カメラをつけてほしい、なども個人の意志だけでは何も決められないのがマンションなんです。何か困ったことがあった場合、変えたい・直したい、と思ったことが共有部分で起こることであるなら、すべて管理組合総会や理事会を通さなくてはならない」

ところが、ほとんどのマンション購入者は、そういったことを購入当時には強く意識していない、という。
「私たちは、大切な住まいのお金や不動産にまつわる契約などの知識を、義務教育で受ける機会がありません。さらにマンション購入時には、修繕や管理のことを合意しながら進めていかなくてはいけないむずかしさについて考えて購入する人は稀だし、販売会社も『共有部分については、個人の自由はほばないですよ』などといって売っていない。”集合住宅に住むこと”の知識と、理解した上での覚悟がまずは必要だと思います」

あなたは、集合住宅に住むことに向いていますか?

「マンションの管理運営は、小さな国家のようなものです」さくら事務所:マンション管理コンサルタント 土屋輝之さん「マンションの管理運営は、小さな国家のようなものです」さくら事務所:マンション管理コンサルタント 土屋輝之さん

「マンション購入を考えている方に考えていただきたいのは”そもそも私はマンションに住むことに向いているか”という自問自答です」と、土屋さんは言う。
「マンションは、すべてのことが他の住民との合意の世界です。当初から計画されている長期修繕についても、やるかやらないかはその時々の理事会で方向を決めても、管理組合総会で多数の強い反対を受けてしまったら予定どおりには何も修繕されないんです。管理会社は管理は請け負ってくれるが、すべてのことを決定していくのは住民であり、意志を表明し合意で決めなくてはいけない…。小さな直接民主主義の国家のようなものです」

国家を運営していくのと同じことなので、管理会社に丸投げして無関心を決め込んでしまうと”税金の無駄遣い”のようなことが起こる場合もある。管理会社をどうマネジメントしていくのかも管理組合の役割なのだ。
「分譲マンションを買い、住むということにどんな権利と義務、継続的な理解や努力が必要なことを意識して、覚悟していかなくてはならないと思います。自分のことしか考えたくない、そういったことは煩わしい、と思う方はそもそも集合住宅に住むことに向いていないと思います」

「マンションを買うなら、管理を買え!」の本質

マンションを買う時によく言われるのが「マンションを買うなら、管理を買え」という言葉である。
マンションを購入する際には、”できるだけ管理のちゃんとしたマンションを買いたい”と思うのが普通であろう。ただ、この言葉には”誰かがちゃんと管理してくれているマンション”であり、”自分がそこに参加する意識”はあまりないように思われる。

が、先に述べたように管理組合はすべてを合意で決める組織なのだ。できるだけの全員が主体的に動かないと「管理の優れているマンション」にはならない。また、マンションは年数を重ねるごとに修繕工事が大掛かりになり、排水管や水道管のメンテナンスをするようなインフラ工事には合意も必要だが、お金も必要なのだ。そこに向けての計画まで住民全体が理解をして、管理組合で決議をしなくてはいけない。「他人事」ではすまされないのだ。
もちろんすべての人がそのことに気が付いていないのではない。マンション管理の大切さを気が付いている人は立候補して理事になり、管理に積極的にかかわる人も多いという。特にタワーマンションなど、大規模で棟数も多い管理組合は運営も難しい。そういったマンション管理に関わる理事の勉強会を積極的に行っている「RJC48(アールジェイシーフォーティーエイト)」という任意の集まりもできている。

土屋さんの知っているケースでは、理事会に管理会社のみならず、清掃やセキュリティの委託を受けている会社の方を呼び「何か困っていることはないか」をヒアリングしている管理組合があるという。「自分たちの住んでいるところを仕事場にしている人たちが、生き生きと働きやすく仕事をするのが楽しい場所だと思ってほしい」…というのが理事会が参加をお願いしている理由だという。
「ここまでいけば、管理組合は大丈夫です。オーナーという意識をもって、ビジョンをもって運営していますからね」まさに、”管理を買いたい”マンションなのだ。

新築なら、管理にまつわる様々なことを覚悟して
中古なら、今の管理がどうなっているかをしっかり調べる

マンション購入をする際にどういったことをチェックすればよいのかを土屋さんに聞いてみた。
「新築マンションの場合は、管理会社が決まっているくらいで、管理組合自体どう運営していくのかはこれから…といったところですので何を見るか、というよりは管理のことをまずは勉強すること、どこに運営決定がひびくのかを理解することだと思います。あとは、主体的に取り組む意思をもってマンションを購入してください。戸数に対して積立金が安すぎないか、この管理規定でよいのか、と疑問に思った時にはプロに相談するのも一つの手です」
それでは、中古マンションの場合はどうだろうか?
「中古マンションの場合は、資産価値や立地だけでなく、管理に対して今までの活動の状況や修繕積立金の残高や修繕履歴を仲介会社さんに出してもらって判断するのがよいと思います。また、ゴミ置き場や自転車置き場、エントランスなどの共有部分をしっかり見ておくこともひとつです」

「マンションに住むのであれば、管理は管理会社がするものでなく自分たちが決めるのだということを意識して、楽しんでやるくらいの姿勢で参加することが必要だと思います」
マンションで起きることはすべて管理組合の、ひいては暮らしていく自分たちの責任である、という認識が大切であると感じた。

2013年 12月29日 10時49分