住み替えを機に起こる可能性も? 音の問題

株式会社ピアリビングの博多ショールーム。防音製品を見て体験することができる株式会社ピアリビングの博多ショールーム。防音製品を見て体験することができる

転勤や進学などをきっかけに、住み替えが多く発生する3~4月は、不動産業界の繁忙期にあたる。慣れ親しんだ土地を離れ、新しい住まいとまちに移り住む…大きな環境の変化が起こるこの時期において、意外にも増えるのが「音」に関する相談だ。「ちょうど住み替えが多く発生する時期からそれ以降、去年ですと4~5月あたりは特にお問合せが通常の1.5倍ほどに増えました」と話すのは、株式会社ピアリビングの上田和正さんだ。

ピアリビングは防音商品の開発・販売を20年以上専門に手掛けている。防音というと、大がかりなリフォームが必要で、高額な費用がかかりそうなイメージがあるが、ピアリビングは、自分ですぐにできる防音対策商品を製作している。「引越しをしてみたら、周りの音が気になる」「隣の人から音について注意を受けた」など、いざ住み替えをしてから気がつく音の問題や、トラブル。賃貸物件の場合は、原状回復が必要であり、当然、大家や管理会社の許可がなければ勝手にリフォームをしたりすることはできない。何か対策をしたくとも取れる方法は限られてはいるものの、音の問題は生活に直結する問題だ。賃貸物件でもできる簡易的な防音対策についてうかがった。

階下から足音がうるさいと言われたら…

(画像上)静床ライトの色見本<br>
(画像下)防振ベースはピアノなどの防音、防振対策用マット(画像上)静床ライトの色見本
(画像下)防振ベースはピアノなどの防音、防振対策用マット

「音に関する相談のなかでも、多いのは階下の人からうるさいと言われた、なにか方法はないかというご相談です。階下から棒のようなもので床を突かれたり、直接注意をされたり、みなさん急ぎで対応をしたいという方が多いですね」と、上田さん。

そういった場合におすすめしているのが、床の防音対策としてマットを敷くことだという。子どもやペットの足音などは振動を伴うため、その振動を吸収する必要がある。ピアリビングで取り扱っている静床ライトは、一般的なカーペットが2重構造であるのに対し、3重パッキング構造でパッキング層の部分が立体になっており、振動を吸収するそうだ。「タイルカーペットなので並べるだけでOKです。カッターナイフで切って部屋の床に合わせて設置できます」
異なるマットを重ねることでさらに防音効果が期待できるともいう。「足音マットという、吸音層のポリエステルと遮音層ポリエチレンで3層構造になった商品がありまして、それと静床ライトを併用して使用することで遮音等級△LL-6を実現することができました」

△L(デルタエル)等級とは、床材が単体で衝撃音をどれくらい軽減できるかを表した指標のこと。△LL-6は衝撃音などが「まず聞こえない」レベルを表しているという。

外の音が気になって眠れない

住宅が幹線道路のそばにある、電車が通るときの音や人の話し声が気になるなど、外の音が気になるときはどうだろう。

「工事の音など大きな振動を伴う音は抑えるのが難しいのですが、窓やサッシに防音のカーテンを設置する方法があります。まず手軽な方法としてはもともと利用されているカーテンにフックでひっかけて取り付ける防音ライナー(遮音布が2枚構造になったもの)です。さらに防音効果を高めたい場合には、防音カーテンと、防音ライナー、さらに防音レースカーテンと3重にすることで静けさが実感できると思います。窓ガラスはどうしても薄いため、音の大きさや家の構造によっては、3重にしてやっと効果が実感できるというケースもあります」

防音カーテンは5重構造になっていて平均で12~18デシベルの音を吸収するという。持ってみた感じ、ずっしりと重たくて分厚い生地だ。防音レースカーテンは、生地面にウレタン樹脂コーティングが施されており、防音効果が期待できてかつ光を取り入れることもできる。

それでもどうしても音が気になる、または完全に窓をふさいでしまいたいという要望もあるという。
「窓のサイズに合わせて作成する必要があるためオーダーメイドになりますが、グラスウールと遮音シートの3重構造になった防音ボードにゴムパッキンを付けた窓用ワンタッチ防音ボードを窓にはめ込む方法もあります。以前、道路沿いにお住まいがある方から夜中も車のクラクションが聞こえて眠れないと相談をいただき、この防音ボードをご提案したところ、窓周辺だけでなく家も静かになったと喜んでいただけて、追加でほかの窓用に防音ボードを発注いただきました」と、ピアリビング代表取締役の室水房子さんは話す。窓枠の内側にきっちり収まるように設置ができるため窓を傷つけずに2重サッシのような効果が期待できるという。音のせいで眠れないなどより防音効果を求める場合はこの窓用ワンタッチ防音ボードが選ばれるそうだ。

(画像左と右上)防音ライナー、防音レースカーテン、防音カーテンを3枚重ねた設置例。上部にカーテンレールカバーを設置し窓を覆ってしまうとさらに防音の効果が期待できるという<br>
(画像右下)窓用ワンタッチ防音ボードを設置した窓(画像左と右上)防音ライナー、防音レースカーテン、防音カーテンを3枚重ねた設置例。上部にカーテンレールカバーを設置し窓を覆ってしまうとさらに防音の効果が期待できるという
(画像右下)窓用ワンタッチ防音ボードを設置した窓

隣の部屋からの音が気になる、隣に音が聞こえていないか心配…

さて、隣の部屋の掃除機や話し声、テレビの音など隣の壁から聞こえてくる音の対策はあるのだろうか。そういった場合は、さきほどの窓用ワンタッチ防音ボードと同じ素材でできた、吸音材であるグラスウールで遮音シートを挟み込んだワンタッチ防音壁を壁に設置する方法があるそうだ。また、いったんは音が気になる壁面に家具を配置してみて音の軽減具合を試してみるという方法もある。ワンタッチ防音壁は両面テープや、専用のジョイナー、突っ張り棒で挟み込んだりして壁面を傷つけずに設置が可能。

「音楽教室をやっていらっしゃる方が、ワンタッチ防音壁を突っ張り棒で板状にしてそれで周辺を囲って簡易に防音室を作成されていました。そこで音楽教室もされているそうで、上手にDIYをされて活用してくださっている方もいますね。ワンタッチ防音壁の、一度設置した後も自由に移動したり配置を変えたりできるところも好評です」と、室水さん。

ちなみに現在、顧客からの要望に応えてダンボールでできた小型の防音室を開発中だという。弦楽器くらいの音であれば十分軽減できそうだという。防音カーテンや防音壁など、ピアリビングではさまざまな防音に関する悩みに応じて柔軟に商品開発を続けている。

ワンタッチ防音壁を突っ張り棒で設置した例ワンタッチ防音壁を突っ張り棒で設置した例

トラブルになる前に、住み替えるときは早めの対策がおすすめ

株式会社ピアリビング 代表取締役の室水房子さん株式会社ピアリビング 代表取締役の室水房子さん

代表取締役である室水さんが会社を設立したのは1995年。内装工事をやっていた旦那さんの仕事の関係で一般には流通しない防音カーペットと出合ったことがきっかけだった。その防音カーペットをインタネットオークションで販売したところ、大きな反響があったという。

「階下の人から怒られて怖い、子どもの足音がうるさいと、自分だけにではなく子どもにも言われたなど、みなさん音の問題で苦しんでいらっしゃいました。当時、いまでも多いとは言えませんが、あまり防音の製品というのは流通していなかったんですね。大手のメーカーは、音は個人の感じ方の問題と、及び腰で防音対策商品は扱っていない。それならと、自分たちで開発することにしました」
なかには音のトラブルにより引越しを余儀なくされたり、訴訟にまで発展する例もあるという。

「一度、音でトラブルになった方は次の住み替えの時は最初から防音マットをフローリングに敷く方が多いですね。音のトラブルは深刻化してしまうケースもありますし、階下の方がどれくらい音を気にされる方かは分かりません。どうしてもフローリングは音が響きやすいので、最初から防音マットを敷くことをおすすめしています」と、室水さん。

もしこれから住まいを探す人は、昼と夜で外の音がどれくらい聞こえるか時間を変えてチェックする、また壁を軽く叩いて音の伝わり具合をチェックするなどもしておきたい。立地や設備など、物件探しで見るべきポイントは山ほどあるが、音の響きやすさについてもチェック項目に入れておこう。また、気になる人は防音のための準備もしておくと自分自身のためにも安心かもしれない。

取材協力:株式会社ピアリビング
https://www.pialiving.com/

2020年 03月24日 11時05分