キッチンプランの中でも収納は重要なポイント

新築やリフォームでキッチンを検討する際、多くの方が悩むのが収納だろう。キッチンには、鍋やフライパンといった調理器具、お皿やコップ、カトラリーなどの食器、保存食品や調味料などさまざまなモノが数多くある。それらをいかに効率的に、出し入れしやすく収納するかは、キッチンの使い勝手を左右する大きなポイントだ。

キッチンの収納計画の基本は、まず、収納したいモノ(手持ちのモノだけでなく新居で使うモノ)をリストアップすること。そして、それらをアイテムごと、使用する場所ごとなどに分類した上で、出しやすくしまいやすい収納方法を検討することが大切だ。

しかし、漠然とした不安から、「とにかくたっぷりとした収納スペースが欲しい」と願う人も。保有するアイテム、収納すべきアイテムを把握しないまま、むやみに収納スペースだけを確保しても有効活用できないケースもあるようだ。

数多くのアイテムを収納する必要があるキッチンだが、最近では、キッチン空間の保有物が減少傾向にあるというデータもある。クリナップ「おいしい暮らし研究所」が行った調査をみてみよう。

収納キャビネットやツールなどを上手に取り入れ、使いやすさと美しさを両立したキッチンをプランニングしたい [STEDIA]収納キャビネットやツールなどを上手に取り入れ、使いやすさと美しさを両立したキッチンをプランニングしたい [STEDIA]

食器類は4割減。使用が限られるアイテムも減少

「おいしい暮らし研究所」とは、楽しい触れ合いの場づくりに貢献するため、生活者の食や暮らしに関する情報の収集、調査・分析を行っている部門。「キッチンから見た生活者“いま”」をひも解くべく、食・物・空間の変化を3年ごとに調査・分析し発表している。今回発表されたのは、キッチン空間に保有される調理器具類、食器類の変化を中心にしたものだ。

特徴的なのは、キッチンアイテムの保有率が低下したこと。キッチン空間で保有されている調理器具・食器類の平均保有点数は、2011年と比較すると、調理器具も食器類も減少したという。

調査によると、調理器具類の平均保有点数(※)は、2011年は47.6点、2019年は35.6点と約2.5割の減少に。食器類は、2011年は136.1点、2019年は79.0点とこちらは約4割減っている。
※平均保有点数:3ヵ年調査において聴取⽅法が同⼀なアイテムのみの平均保有点数を⾜し上げ算出

ほぼすべての調理器具類の保有率は低下しているが、その中でも「泡立て器(電動・手動)」や「缶切り・栓抜き・コルク抜き」といった、使用用途が限られている調理器具の保有率の低下が目立っている。年代に関係なく全体的に減っているが、特に低下が大きいのは、20代、30代という。

瓶入りの飲料や缶入りの食品の保有率も緩やかに減少しており、そもそもそういった形態の食品を買わない層が増えている可能性もあるとか。また、プルトップが付いている缶詰が多くなったことやコルク栓のワインが減ってきたことなど、食品側の変化も影響もあるかもしれない。

「おいしい暮らし研究所」所長の手塚佐恵子さんは、「前々回から前回の調査では保有率の減少がみられるものもありましたが、これほど全体的な傾向でありませんでした。ミニマリストやシンプルライフなどのトレンドから多少は予想をしていましたが、ほぼすべてのもので、かつ全年代で大きく低下していたことは意外な結果でした」と話す。

■調理器具類や食器類の平均保有点数■調理器具類や食器類の平均保有点数

若年層は日本茶を急須で淹れない? ライフスタイルの変化も保有率に関係する

食器類でも同様で、すべての食器類の保有率の低下がみられ、特に「湯呑」「急須」の保有率の低下が目立っている。2011年では、湯呑は86.5%、急須は84.0%の人が保有していたが、2019年では、湯呑は62.2%、急須は59.6%となっている。

年代別にみてみると、湯呑は、20代が65.0%から36.8%、30代84.7%から47.1%、40代90.2%から66.9%と若年層での低下が著しい。

ペットボトルやティーパック、粉末タイプなども揃い、日本茶を急須で淹れるということが一般的とはいえなくなってきているのかもしれない。急須という和のアイテムだけでなく、ティーポットはどうか?
「ティーポットは、もともと急須ほど保有率が高くはなく、前回まではほとんど減少はみられませんでしたが、今回は、急須同様に減少しています」と手塚さん。急須以外でも「お盆・トレイ」や「ナイフ」など、改まった場、改まった食事で必要な物など、使用するシーンが限られるアイテムの低下が目立つという。

また調査からは、子どもの独立など家族構成やライフスタイルの変化を機に、断捨離を行っているということも見て取れる。

子どもが別居してから経過年数に伴い、「玉子焼き器」や「弁当箱」といったお弁当関連のアイテムの保有率が低下している。たとえば「玉子焼き器」の場合、別居して1~3年では78.4%の人が保有しているが、10年以上たつと65.0%となっている。

他、「ホットプレート・たこ焼き器・グリル鍋」や「ホットサンド・ワッフルメーカー」など、食卓や料理を楽しむための調理家電類の保有率も低下している。家族みんなで一緒に調理と食事を楽しむ、という時間が減ってくるとともに、これらの調理家電の出番も少なくなっているのだろう。

■湯呑と急須の保有率■湯呑と急須の保有率

若年層はシンプル。家事・料理の手間を省く傾向

食器や調理器具に対しての考え方は、年代によって異なるようだ。

「食器・調理器具などは必要最小限を心掛けている」「食器は形・色・デザインがシンプルな物を持っている」という考え方は若年層ほどあてはまると回答する人の割合が高くなっているという。

一方、年代が上がるほど「調理器具。家電はブランド・デザイン・使いやすさにこだわりを持って選んでいる」「キッチン空間のデザインやセンスにはこだわりを持っている」に対し、あてはまると回答する人の割合が高い。物理的なスペースや子育て中といった環境、経済的な面なども影響しているだろうが、年代によってアイテムへの意識が対照的なのも特徴だろう。

また、若年層ほど家事・料理の手間を省く傾向がみられる。
「家事は手間をかけないように工夫している」「キッチンが汚れる料理はしない」という問いに対してあてはまる、と回答する割合は若年層ほど高くなっている。また、「カット野菜・ミールキット・レトルト・惣菜加工食品等を活用している」に対しても若年層ほど当てはまると回答する人の割合が高くなっており、加工食品などをうまく活用することで料理の手間を省いている様子がうかがえるという。

システムキッチンの商品としても、シンプル志向や家事の省力化などから着想を得て開発したタイプの提案もみられるようになり、今後は機能充実のフルスペックなキッチンだけでなく、さまざまな価値観、ライフスタイルに適した商品の展開もみられるのではないだろうか。

家具メーカーとのコレボレーションによるシンプルなキッチン[HIROMA]家具メーカーとのコレボレーションによるシンプルなキッチン[HIROMA]

20代は収納量、60代は出し入れのしやすさを重視

年代によって持ち物が異なるのであれば、収納に対する重視点も異なるようだ。キッチン収納に関する理想を聞いてみると、20代は「収納スペースが多いキッチン」を求める割合が他の年代よりも高い。賃貸住宅に暮らしている場合であれば、収納スペースが不足しているケースも多いことからたっぷりとしたスペースを求めていると考えられる。また、将来的なライフスタイルの変化も考慮して、ゆとりあるスペースを希望しているケースもあるだろう。

60代をみてみると、「必要なものにすぐ手が届くキッチン」を理想としている割合が他の年代よりも高く、出し入れのしやすさにこだわっているという。定年を迎える年代、身体的にも作業を楽に行える収納方法を求めていることがわかる。

「収納容量を確保するためには、奥行きを最大限に活用できる引き出し収納や高さ方向のデッドスペースを活用したフロアコンテナなどを取り入れるといいでしょう。出し入れのしやすさを高めるには、使用頻度別に収納でき、効率的に出し入れができるツールポケットやスライドボックス、昇降機能付きの吊り戸などもおすすめです」(手塚さん)

今後の社会情勢によっては、住まいにおけるキッチンの役割、調理や食事に対する思いなど、大きく変化する可能性もある。手塚さんは「シンプル志向が今後も継続するトレンドなのか、さまざまな角度からアプローチをしてみたいと思っています。また、調理家電については今回調査から保有率を確認し始めたので、今後どう推移していくのを確認し、キッチンメーカーとしてよりよい商品の提案につなげていきたいとていきたいと考えています」と話す。
消費者が食に対して何を求めるのか、そのためには何を保有し、どう使用するのか、そしてどんな空間が必要になるのか。今後もキッチンプランのヒントとなるような調査発表を期待したい。

■取材協力 クリナップ

(上)奥行きを最大限に活用できる引き出し収納(下)吊り戸がアイエリアに降りてくることですっきり収納と使いやすさを両立できるハンドムーブ(手動)(上)奥行きを最大限に活用できる引き出し収納(下)吊り戸がアイエリアに降りてくることですっきり収納と使いやすさを両立できるハンドムーブ(手動)

2020年 05月06日 11時00分