待ったなしのテレワーク対応が求められている

新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界中の経済と企業活動は、大きな試練に直面している。日本国内も人の移動に大きな制限がかけられている今、企業活動を継続・維持していくためにはテレワークの推進が欠かせない。

近年、働き方改革の大きなテーマの下、行政の旗振りでテレワークが進められてきた。本来の予定では東京五輪の今年、大企業を中心にその実績を積み重ねる予定だった。ところが、ここにきての予期せぬコロナ禍の大波である。もはや、あらゆる業種で準備もままならぬ状況の下、待ったなしのテレワーク対応が求められている。

出勤できない、人と会えない、話せない。そんな環境の中で、企業規模を問わず、事業の存続にかかわるテーマになってきている。そこで、テレワークを実践するためその問題点を整理し、国や行政の様々な助成制度やノウハウの導入方法を紹介したい。

働き方改革のひとつとして、行政の旗振りでテレワークが進められてきている働き方改革のひとつとして、行政の旗振りでテレワークが進められてきている

テレワークが進まない理由と問題点

国土交通省が実施した「テレワーク人口実態調査(平成27年)」によれば、全労働者に占める週1日以上在宅で就業するテレワーカー数の割合はわずか2.7%にすぎない。
調査では企業がテレワークを導入するのにあたって、克服すべき課題や取組みの例を、以下のように挙げている。

1. セキュリティー
在宅勤務で大きな障害となっているのが、個人情報、機密情報のセキュリティー問題。普段から情報漏洩を防止するため、社内PCの持ち出し禁止や機密データの保存禁止、アプリのインストール禁止等を規約として設けている企業も多い。在宅での個人PCから共有データサーバへのリモートアクセスなど不可能で、セキュリティーを主眼とした、新たなICT投資が、必要となる場合が多い。

2. コミュニケーション
情報を共有化し意思決定をはかるため、会議、ミーティングの場を重要視する企業は多い。普段からウェブ会議やSNS、チャット、メール等を駆使し、ICT危機によるコミュニケーションを実践している企業は多いが、セキュリティーを考慮する場合、新しい投資が必要になる場合もある。

3. 勤怠管理
自宅での勤務となるとオンオフの切り替えが難しく、見えないことによる個人の残業状況や仕事に取り組む姿勢など、管理者にとっては評価がしにくい側面がある。そこで、勤務開始時、終業時の報告や、PCでの作業状況のモニター等を行っている企業もある。

4. 人事評価
評価者と被評価者とのコミュニケーションが重要となる。作業内容や課題、テーマの報告と、それに対するアウトプットや成果の共有が必要となる。テレワークは働き方改革の大きな流れの中で、成果重視の人事評価となる。

厚生労働省「雇用型テレワークの現状と課題」より抜粋厚生労働省「雇用型テレワークの現状と課題」より抜粋

費用の助成とノウハウの公開で、大企業でなくても導入可能に

前出の国交省の調査でも“テレワークを実施するメリットは”という質問の答えとして「突発的な事象発生時の対応」(19%)を挙げる企業も多いなど、企業の災害時等の事業継続戦略は欠かせない。その他のメリットとしても、従業員のモチベーションアップや生産性の向上、優秀な人材の確保などが挙げられている。
厚生労働省が公表する「雇用型テレワークの現状と課題」によれば、現状テレワークを導入していない企業の中でも約40.5%もの企業がそのメリットを考え導入したいと考えている。全雇用者中平成28年度で7.7%でしかなかったテレワーカー人口を令和2年度には倍増の15.4%にまで引き上げるのが政府目標だ。

ところが、これだけ多くの関心を集めて政府が導入を推し進める中で、実際に導入に踏み切る企業はまだまだ少ない。平成29年の総務省の調査によれば、サンプル数2580企業のうち導入しているあるいは導入予定企業は18.2%で、その中でも、従業員300人未満の企業は10.2%という結果だった。
同調査で導入しない、あるいはできない理由を挙げてもらうと、「テレワークに適した仕事がない」が73%。その他の理由については「情報漏洩が心配だから」「業務の進行が難しいから」「テレワークのメリットがよくわからない」と続く。
特に「適した仕事がない」以外の理由については、情報通信機器(ICT)の導入により、可能な部分が多い。しかしそこには、設備投資が伴ってくる。中小企業でテレワークの導入が進まない大きな理由もそこにある。そこで、紹介したいのが厚生労働省が以前から進める「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」と追加して新しく創設されたのが以下の制度。

■厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000622075.pdf
新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを導入する中小企業事業主に、機器の導入費用等の1/2を上限100万円まで、助成する制度。

■厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000622080.pdf
中小企業向けテレワーク助成制度。

■経済産業省「IT導入補助金2020」
https://www.it-hojo.jp/
自治体等でも中小向けにテレワーク推進に向け、助成金制度等を創設している。

■東京都「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/03/05/27.html

■公益財団法人 東京しごと財団「はじめてテレワーク(テレワーク導入促進整備補助金)
https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/telework.html

■東京都 TOKYOはたらくネット「ワークスタイル変革コンサルティング」
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/hatarakikata/telework/workstyle/
都内の中堅中小企業向けにテレワーク導入のため、専門のコンサルタントが訪問し、問題解決などの支援を無料で提供している。

厚生労働省「雇用型テレワークの現状と課題」より抜粋厚生労働省「雇用型テレワークの現状と課題」より抜粋

働き方を変えて、コロナ後の日本経済再生へ

移動の自由が大きく制限され、企業活動が停滞する今、スマートフォンやPCを使用して在宅で仕事をこなせれば、テレワークの範囲でできる仕事は意外と多いようだ。もちろん、まだセキュリティーなどが不備が見られるという課題もある。紹介した公的な助成制度やノウハウの提供を活用し、できるだけ多くの企業がテレワークを進め、この困難を克服したいものだ。

多くの紙の書類と大量の資料を抱え、顧客やクライアントとの商談は、対面の面談で決まる。企業の意思決定には承認のハンコは欠かせない。コロナ以前まで普通だったこの動きが、これで様変わりするかもしれない。ICTの進歩で、時間や場所などの制約がなく、労働効率が高まるワーキングスタイルが望まれている。

今、官民一体となって進むテレワーク。
コロナ危機が去ったその後には、人的資源を最も効率よく活かせる働き方として、経済再生のカギとなるかもしれない。

時間や場所などの制約がなく、労働効率が高まるワーキングスタイルとして今後もテレワークは進むであろう時間や場所などの制約がなく、労働効率が高まるワーキングスタイルとして今後もテレワークは進むであろう

2020年 04月25日 11時00分