宮大工によって受け継がれてきた「木組み」工法

写真右から、株式会社創建の木村さん、岡村さん、奥谷さん写真右から、株式会社創建の木村さん、岡村さん、奥谷さん

日本人が住む家には昔から木が使われてきた。
国土の約7割が森林であり木材が豊富なことや高温多湿の気候に通気性の良い木が適していたことなど様々な理由が考えられる。

世界最古の木造建築「法隆寺」のような歴史的建築物が今もなお残っている。木で建造物をつくりあげるにあたり、地震の多い国である日本では、耐震性や耐久性が求められた。クギなどを使わず、吸湿性、柔軟性を持つ木と木をはめ込む「木組み」工法は、この国の地震などにも耐えうる頑丈な建築物をつくることができるように磨いた技の積み上げだといえる。そしてこの工法は、宮大工などによって現代まで受け継がれているのだ。

テクノロジーが発達した現代において、いわゆる在来工法では、耐久性・耐震性を高めるために構造部分に金物を使っている。しかし、木と金物は材質が違うので、どうしてもひずみが出てくることもあるようだ。木組みの工法では木同士の組み合わせによって、伸縮率、膨張率がほぼ同じという特徴を生かして、耐久性、耐震性を上げるという工法である。ただし、この工法は宮大工などの高い技術を必要とする。

この度、京都府京田辺市にある株式会社創建の分譲宅地「ルナシティ同志社山手」に、伝統の「木組み」工法と、近代の住宅性能を併せ持った家のモデルハウスが新しく誕生したという。
一体どんな建物なのか、現地へ行き話を伺った。

コストと工期をおさえつつ宮大工の技を現代に

株式会社創建が何故、伝統的な技である「木組み」を使って家を開発したのかというと、創建のグループ会社「木の城たいせつ」の先代社長が宮大工出身で、将来、宮大工技術を受け継いだ職人が減っていくことを危惧したことから始まる。

従来の木組み工法は、1本1本の木を削ってから組み上げることにより、相当な技術と時間とお金が掛かる。「木の城たいせつ」では、それを宮大工でなくてもつくれるようにプレカット工場で木を削り、現場で組み上げられるような形にした。ただし、プレカット工場の設備投資に多額を投じた後、経済情勢悪化などの要因が重なり倒産。その後、縁があり、その技術力に感銘を受けた吉村氏により、創建のグループ会社として再建されることとなった。

その技術力が生きた仕事が、2015年の北海道札幌市にある石山神社の100周年建替え事業だった。石山神社の建替えは、周辺住人の方々から寄贈があったが、それでも、他社で見積りを取ると、資金が足りない上に工期が長くかかることも分かったという。しかし、「木の城たいせつ」のプレカット資材を使えば予算内かつ短期間で建替えられる。神社建築の実績はなかったが、木の城たいせつ社内に宮大工の技術を用いた三重塔を建てた経験があったため、取り組むこととなった。
「本当にこんな低予算でできるのか?」と初めは心配していた地域住民の方々も、実際に神社ができあがると大変喜んでくれた。それと同時に、「神様が住む家も作る会社になった」と喜びの声が上がったことが、吉村氏と社員の心に深く残り、以降、年に1棟ずつ震災で被害を被った地域を対象に無償で社殿を建て寄贈する「災害被災神社再建・地域復興プロジェクト」を行うようになった。

そして、この経験を生かして、木組みの技術を一般住宅にも取り入れようと取り組んだのが、このモデルハウスである。

契機となった北海道札幌市にある石山神社の建替え契機となった北海道札幌市にある石山神社の建替え

モダンな外観からは想像がつかない、木の温かみがある内観

実際にモデルハウスを訪れると、宮大工の木組みの家……という純和風の家ではなく、外観は黒を基調としたモダンなデザインの一戸建て住宅だ。

しかし、玄関からつながる土間の引き戸を開くと、木組みの耐久性を生かした大空間で視界が広がり、木の香りに包まれる。使われている材質は、北海道産のカラマツ材。直径約24cmの大黒柱と幅約60cmの梁の迫力は木の家の醍醐味だ。この家は、建築基準法の耐震性をクリアするために最低限の金物は使っているが、それ以外はジョイント部分にも「やとい」や「こみ栓(木の釘)」を使うなど基本的に木材のみを使用しているという。

カラマツはヒノキ以上に強度があり腐敗しにくい特徴があるが、その半面、反ったり割れや狂いが生じたりしやすく板材としては使いにくくあまり普及してこなかった。しかし、乾燥技術の発達により極力ブレをなくすことに成功。この家では、乾燥窯で乾かしたカラマツを貼り合わせて集成材として加工して使用している。このことにより、木材のコストもおさえられるという。

構造材にはスギやヒノキより強度のある北海道産のカラマツが使用されている。</br>宮大工の伝統技術を取り入れた工法が生きた木のすがすがしさが感じられる内観構造材にはスギやヒノキより強度のある北海道産のカラマツが使用されている。
宮大工の伝統技術を取り入れた工法が生きた木のすがすがしさが感じられる内観

「木組み」の技術にプラス、レジリエンス機能と断熱性で命を守る

この家では、木組みの技術により建物自体の耐震性、耐久性を備えたうえに、実はプラスαの命を守る様々な工夫がされているという。
災害時の停電、断水時にも電気、水などのライフラインが途絶えないように、太陽光発電、蓄電池、空気から水をつくる製水器のエネルギー・水・レジリエンスシステムを装備。有事には停電断水時にも生活を続けられ、平時には光熱費、飲料水代などが削減できる。また、津波や水害から命を守る備えとして「防災・救命シェルター」が装備されている。

命を守るのは、災害時だけではない。
壁、天井、床、基礎など家全体を断熱材でくるむ断熱工法を採用することにより、夏・冬とも住宅内の温度差がほとんどなく、日本で年間1万4千人以上が亡くなるというヒートショックを防ぐことにも貢献している。
わずか1台のエアコンの稼働で家全体を暖房、冷房することができ、結露によるダニ・カビの繁殖を防ぎ、構造体の耐久をアップさせる効果があるという。

この家は、災害大国日本において、あらゆるリスクに対応し命を守り切る家を目指し、「INOCHI」と名付けられている。
現在、千葉県印西市と京都府京田辺市でモデルハウスを公開している。宮大工の技術とテクノロジーでできた新しい木の家。興味のある方は、現地で実際の建物をみていただきたい。

■取材協力:株式会社 創建 https://www.k-skn.com/

京都府京田辺市の創建の分譲地内にある「千年品質伝統工法の家 Kinoshiro2020『INOCHI』」のモデルハウス京都府京田辺市の創建の分譲地内にある「千年品質伝統工法の家 Kinoshiro2020『INOCHI』」のモデルハウス

2020年 03月27日 11時05分