毎年1,000人前後が住宅火災で亡くなっている

今年は暖冬とはいえ、3月でもまだ暖房をする機会は多い。暖房器具を利用する季節に心配なのは火災だ。
住宅火災による死者数は毎年1,000人前後で推移しており、特に65歳以上の高齢者が占める割合が多く、約7割となっている(消防庁『防炎の知識と実際』より)。その主な出火原因は「たばこ」「ストーブ」「コンロ」だ。たばこやストーブの火が布団やカーテンに燃え移るといったように、火種が布製品に燃え広がって住宅火災へとつながってしまうのだ。

このような火種から布製品への火災を防ぐ手段として、ぜひ知っておきたいのが防炎品の存在だ。

住宅火災による死者数と高齢者(65歳以上)の割合の推移。死者は毎年1,000人前後を推移している。高齢者の割合は増加傾向で約7割を占める(出典:消防庁『防災の知識と実際』)住宅火災による死者数と高齢者(65歳以上)の割合の推移。死者は毎年1,000人前後を推移している。高齢者の割合は増加傾向で約7割を占める(出典:消防庁『防災の知識と実際』)

消防法に定められた防炎性能基準を満たした製品

防炎品には「防炎物品」と「防炎製品」があり、前者は消防法に定められた防炎性能基準を満たした製品のことだ。1969年から消防法に導入された防炎規制において燃えにくい性質のことを防炎性能という。現在、旅館やホテル、病院など不特定多数の人が出入りする建物や高層マンション(高さ31m超)で使用されるカーテンやじゅうたんなどは防炎物品であることが義務付けられている。

防災製品とは、消防法の決まりではなく自由に使用することのできる製品のことだ。自由に使用といっても、その性能はけっして低くなく、日本防炎協会の制度により一定基準以上の防炎性能を有する製品のみを認定している。具体的な製品例としては布団、毛布、肌着、パジャマ、靴下、タオル、自転車カバーといったわれわれの生活に身近なものだ。詳しい防炎品の種類は消防庁の『防炎の知識と実際』などで確認してほしい。

●防炎の知識と実際(消防庁)
https://www.fdma.go.jp/relocation/html/life/yobou_contents/fire_retardant/pdf/bouen_01.pdf

主な防炎処理方法は4種類

布製品の防炎処理には次のような方法がある。

1.被覆による方法
ほう砂やほう酸といった物質を表面に付着させるとそれらが火災によって発泡、膨張、ガラス化する。このことで不燃性物質や断熱層が形成されて火炎をさえぎり、燃えにくくする方法。

2.不燃性ガスを発生させる方法
布製品は火災の際、加熱、分解されることで可燃性ガスを発生させる。そこで燃焼時に不燃性ガスが発生する薬剤(防炎薬剤)を付着させることで、可燃性ガスを希釈させて消火する方法。

3.吸熱反応による方法
熱分解時に大量の熱を吸収する防炎薬剤を加工処理することで消火する方法。

4.化学反応の変化および脱水反応による方法
防炎薬剤が燃焼の際に繊維に含まれる酸素と反応して水を発生させたり、繊維に含まれる炭素が燃えにくい黒鉛などに変わることで消火する方法。

たばこやライター程度の小さな火であれば簡単には着火しない

防炎品はこのような素材に特殊処理を施すことで、たばこやライター程度の小さな火であれば簡単には着火しない。ある実験で普通のカーテンと防炎カーテンの燃焼比較をしたところ、普通のカーテンは着火して45秒後には半分まで燃え上がり、1分30秒後には炎が天井まで達した。一方で防炎カーテンは、着火した部分が黒く焦げただけで燃え広がることはなかった。

また、実際に防炎品が火災被害の軽減に役立った事例も数多くある。たとえば、天ぷら鍋が調理中に発火し、換気扇のファンとその周辺が溶解したが、防炎カーテンが天井への延焼を阻止した、隣家からの火災に対して、窓の防炎ロールカーテンが開口部から室内への延焼を阻止した、といったものだ。

本文とは別の実験の様子。防炎品は普通の製品より明らかに燃えにくい(出典:消防庁『防炎の知識と実際』)本文とは別の実験の様子。防炎品は普通の製品より明らかに燃えにくい(出典:消防庁『防炎の知識と実際』)

まずは「防炎ラベル」と「防炎製品ラベル」の確認を

このように火災の延焼の防止に役立つ防炎品だが、その性能を有するか否かを外観上で判断するのは困難だ。そこで目印となるのが「防炎ラベル」と「防炎製品ラベル」だ。「防炎ラベル」は、一定の建物で使用が義務付けられている布製のカーテン、ブラインド、じゅうたんなどの防炎物品に付けられる。カーテンなどに関しては、水洗いまたはドライクリーニングを行うことにより防炎性能がなくなるものもある。そのため、耐洗たく性能の有無によってラベルに次のように表示することとされている。
「水洗い可。ドライクリーニングをした場合は要防炎処理」
「ドライクリーニング可。水洗いをした場合は要防炎処理」
「洗たくをした場合は要防炎処理」

「防炎製品ラベル」は、自由に使用できる布団、毛布、肌着などの防炎製品に付けられる。

このように防炎品の使用は、私たちが行えるもっとも容易な防災手段の一つだ。今後カーテンやパジャマなど布製品を購入する際は、まず「防炎ラベル」と「防炎製品ラベル」の有無を確認してはいかがだろう。

左がカーテンなどに付けられている「防炎ラベル」。右が寝具や衣類などに付けられている「防炎製品ラベル」。万一の火災延焼を防ぐため、ぜひその有無を確認したい(出典:消防庁『防災の知識と実際』)左がカーテンなどに付けられている「防炎ラベル」。右が寝具や衣類などに付けられている「防炎製品ラベル」。万一の火災延焼を防ぐため、ぜひその有無を確認したい(出典:消防庁『防災の知識と実際』)

2020年 03月07日 11時00分