11階以上の階にはスプリンクラーが原則義務付けられる

高層マンションでの防災対策についてお話を伺った高層マンションでの防災対策についてお話を伺った

近年の異常気象の拡大で大雨や台風などの災害が増え、また地震大国である日本では大地震による被害も後を絶たない。特に高層マンションではひとたび災害が起きると、電気・ガス・水道のインフラやエレベーターが停止するなど、日常生活に与える影響が大きくなることが懸念される。そこで今回は気になる高層マンションの防災対策のなかでも、特に消防法による火災対策について、総務省消防庁予防課 設備専門官・塩谷壮史氏にお話を伺ってきた。

高層マンションに限らず、建築物全般の火災対策は建築基準法と消防法によって規制されている。建築基準法では建物の構造や建築材料、避難経路などを対象としているのに対し、消防法の対象となるのがスプリンクラーや自動火災報知設備といった消防用設備だ。

例えばスプリンクラーは原則として11階以上の階に設置が義務付けられる。11階以上の高さははしご車が届かず、火災時の消火活動が困難になるためだ。

ただし、例外もある。住戸間の延焼が防止できる構造で、かつ、住戸の外の共用廊下が外気に面している、いわゆる「外廊下」(消防法では「開放廊下」)の場合で、玄関のほかにバルコニーに避難ハッチがあり2方向の避難経路が確保されているなどの条件を満たす場合は、11階以上でもスプリンクラーの設置が免除される。

また、床面積が一定の大きさ以上となる場合は屋内消火栓を原則設置しなければならない。ボックスの中にホースが収納され、赤い表示灯が付いている設備だ。この屋内消火栓も、開放廊下となっているなどの条件を満たせば設置が不要となる。

また、延べ床面積が500m2以上の場合は、自動火災報知設備の設置が必須となる。火災の煙や熱を感知して、建物全体に警報を鳴らす設備だ。ちなみに延べ床面積500m2未満でも住宅用火災警報器の設置が義務付けられているが、こちらは警報器ごとに個別に火災を感知して警報を鳴らす簡易なタイプとなる。

マンションで火災が起きても被害の範囲は限定的

高層マンションには前述のような一定の火災対策が義務付けられているため、火災が起きても大きな被害には及ばないケースがほとんどだ。総務省消防庁のデータで確認すると、ここ数年の高層マンション火災の出火件数は全国で年間500件前後となっているが、焼損した床面積の平均は1件当たり3〜4m2で済んでいる。死者数は年間10~15人である。

2017年6月に発生したロンドンでの共同住宅の火災では、24階建てマンションが炎に包まれる衝撃的な映像がテレビに映し出された。「日本のマンションは大丈夫なのか?」と不安を感じた人も多かったかもしれない。

だが、上記のデータからも分かるように、マンション全体が燃えてしまうような火災が日本で起きる可能性は極めて低いだろう。まず消防法では前述のような消防用設備の設置が義務付けられるほか、高層マンションの場合、住戸内のカーテンやじゅうたんなどには燃えにくい「防炎物品」に指定された製品を使用することも義務化されている。

さらに日本のマンションの多くは熱に強いコンクリートが構造躯体に使用されている。ロンドンのマンションも鉄筋コンクリート(RC)造だったが、外壁に燃えやすい断熱材が施工されていたことが大規模な延焼を招いたようだ。だが日本ではほとんどのマンションが躯体となるコンクリートの内側に断熱材を施工する内断熱工法になっている点も、ロンドンのケースとは条件が異なる。

また、建築基準法では建物の内部での延焼を防ぐため、火災や煙を一定の範囲内で食い止めるための「防火区画」も定められている。高層マンションの11階以上では、この防火区画を200㎡以内にしなければならない。マンションで火災が発生しても、ごく限られた面積の焼損で食い止められているのはこのためだ。

総務省消防庁データを参照して作成「11階建て以上の共同住宅における火災(全国)」総務省消防庁データを参照して作成「11階建て以上の共同住宅における火災(全国)」

火災時にはまず消火活動を試み、避難時は玄関ドアを閉める

このように火災対策が何重にも施されている日本の高層マンションだが、だからといって100%安全とは言い切れない。日常の生活やいざというときに、住民が適切に行動することが重要なことは当然だ。

たとえば建築基準法では高さ31mを超える建築物(およそ11階建てに相当)では非常用エレベーターの設置を義務付けている。だがこの設備は火災時に消防隊が消火活動を行うためのもので、住民の避難に利用することはできない。「一般のエレベーターは火災時に停電で停止したり煙に巻き込まれる恐れがあるので、避難の際は階段を利用するようにしていただく必要があります」(塩谷氏)

近年では高齢者などの避難に非常用エレベーターの使用を認めるケースも出てきているが、これは病院などで訓練を受けた自衛消防隊を設置している場合に限られる。一部のタワーマンションにも導入され始めているが、まだごく一部に過ぎない。

またマンション内には燃えにくいRCの壁などで仕切られた防火区画が設けられるが、仕切りには住戸の玄関ドアも含まれる。そのため、火災時には炎や煙が広がらないよう、玄関ドアは閉めて避難することが重要だ。現在の玄関ドアは自動的に閉まる構造になっているので、風通しを良くするためにストッパーなどでドアを開けっ放しにすることは厳に慎むべきだろう。

同様に、バルコニーの窓も避難時には閉めるとともに、日頃から燃えやすいものなどは置かないように心がけたい。バルコニーに置いてあった古タイヤに火が燃え移り、被害が広がったケースもあるのだ。

もしマンション内で火災が発生したら、消防に通報すると同時に、自力での消火等も試みるべきだと、前述の塩谷氏は話す。「自動火災報知設備が鳴ったときに管理人などがいなければ、まず住民自らが管理人室などにある受信盤で火元を確認し、消火活動を試みてください。火の勢いが強く、消火が難しければ無理をせず、窓や玄関ドアを閉じて空気を遮断した上で、避難してください。このような活動をスムーズに行うためには、日常的に訓練を行い、消火器や避難階段、避難器具の位置を確認しておくことが大切です」

防災というと地震対策にばかり注意が向かいがちだが、地震の後に火災が発生するケースも少なくない。火災に強いマンションだからこそ、より安全性を高めるために、日頃から火災対策にも気を配っておくことが需要だろう。

2018年 04月10日 11時05分