消費税率引き上げ後の低迷が続く

年末恒例の「今年の漢字」(日本漢字能力検定協会主催)だが、2014年は「税」に決まった。不動産市場も例外ではなく、まさに「税」に翻弄された1年だったといえるだろう。言うまでもなく消費税率の引き上げである。

消費税率は2014年4月1日に5%から8%へ引き上げられたが、増税前の駆け込み需要および増税後の落ち込みは、住宅市場においてもあらかじめ想定されたものであった。ところが、増税後にいったん冷え込んだ市場が思うように回復せず、当初の予想より低迷が長引いている状況だ。

国土交通省の集計による新設住宅着工戸数では、2014年3月から11月まで9ケ月連続の前年割れとなっている。また、不動産経済研究所がまとめた新築マンション市場動向でも、首都圏の発売戸数は2014年2月から11月まで10ケ月連続の減少であり、3割あるいは4割を超える大幅な落ち込みも散見される。

駆け込み需要の発生とその反動減を抑制するために、消費税率の引き上げに合わせて住宅ローン控除の拡充および「すまい給付金」の導入が図られたものの、その効果が十分に発揮されたとは言い難い。とくに「すまい給付金」では予算額1,600億円に対して、9月末まで半年間の給付額は約19億7,000万円にとどまっている。その一方で、消費税率引き上げの影響が少ないとみられた中古住宅も、増税後は厳しい状況が続いている。中古住宅の主な需要層であり、かつ「すまい給付金」の対象となる所得層において、消費者心理の冷え込みが色濃く表れているのだろう。

ただし、新築マンションの落ち込みに関しては販売側の供給抑制も考えなければならない。地価や建築費の上昇、人手不足などにより着工時期を遅らせたり、どこまで価格転嫁ができるのか市場の動きを探ったりする動きもみられる。平均販売価格の上昇も、売れ行きが好調な都心部の割合が増えていることを考慮しなければならない。

相続税対策が盛んになった2014年

2015年1月1日に実施される相続税の課税強化を控えて、不動産を活用した対策が盛んになったことも2014年の動きとして挙げられるだろう。さすがに7月以降はやや息切れしてきた感もあるが、2014年6月まで貸家の着工戸数は前年を上回る状態が続いた。また、消費税率引き上げ後の低調な不動産市場の中で、相続税対策として都心の高層マンションや高額マンションを購入する動きも目立った。一般の消費者が動きにくくなったぶんを、相続対策の需要が補っているともいえるだろう。

その相続税に大きな影響を与える土地価格であるが、2014年3月に発表された公示地価(1月1日時点)では3大都市圏で住宅地、商業地とも6年ぶりの上昇となった。7月に発表された相続税路線価でも、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府など8都府県が上昇となっている。実際の取引価格は公示地価などよりも大きな上昇を示しており、とくに条件の優れた土地は取得が困難として、マンションデベロッパーが苦戦する一因にもなっているようである。

東京都心部では「虎ノ門ヒルズ」の開業(6月)と環状第二号線(新橋〜虎ノ門間)の開通(3月)、日本橋エリアの再開発ビルの開業(3月)などが2014年にあったほか、2020年の五輪開催に向けた湾岸エリアの再開発、渋谷駅周辺の再開発、山手線新駅の設置を伴う品川再開発なども動きだし、地価上昇に拍車をかけている。大阪で「あべのハルカス」が全面開業したのも2014年3月だ。

都心部は投資や相続対策需要を取り込み、好調な売れ行きを示す物件もあった都心部は投資や相続対策需要を取り込み、好調な売れ行きを示す物件もあった

空き家問題が改めてクローズアップされた

総務省が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」の2013年分(速報集計)が7月に公表され、空き家数は約820万戸と過去最高になった。5年前の調査と比べて約63万戸増加し、国内の住宅総数約6,063戸に占める空き家の割合は13.5%に達した。マスコミなどでも頻繁に取り上げられたため、改めて空き家問題を認識した消費者も多かったのではないだろうか。

その一方で、2014年5月には「日本創成会議」が「消滅可能性都市」を発表して注目を集めた。これは2010年から2040年までの30年間で若年女性人口が半数以下となる自治体を「消滅可能性都市」として集計したもので、全体の49.8%にあたる896市区町村がこれに該当するという。

空き家問題や人口減少問題は何年も前から議論が交わされているものの、有効な対策は見いだせないでいる。そのような状況の中で、住宅ストック活用への機運は高まりつつあるようだ。既存住宅や既存商業ビルにおけるリノベーションなど、さまざまなアプローチも次第に熱を帯びてきた。リクルート住まいカンパニーによる2014年の調査(対象:首都圏の住宅購入検討者)では、「リノベーションという言葉も内容も知っていて関心がある」との回答が51%で、2007年時点の19%から大きく増えている。「リノベーション」という言葉の認知度だけをみれば約96%という高い率である。

空き家対策法が11月に成立し、従来よりも一歩進んだ対策がとられるようになるだろう。また、老朽化した建物の出口戦略にあたる法整備も徐々に進められている。2014年12月24日に施行された改正マンション建替え円滑化法による「マンション敷地売却制度」もその一環だ。

空き家対策は喫緊の課題となっている空き家対策は喫緊の課題となっている

不動産業界のあり方も変わろうとしている

不動産取引の実務関係者にとって2014年の大きな動きといえば、「宅地建物取引士」への名称変更と、重説IT化に向けた動きが挙げられるだろう。宅地建物取引業法の一部改正案が2014年6月18日に成立し、同25日に公布された。2015年4月1日から、これまでの宅地建物取引主任者の名称が「宅地建物取引士」へ変更されるが、それと同時に宅地建物取引士以外の従業者も含めた全体で資質向上を図るような措置も盛り込まれている。

2014年10月に実施された宅地建物取引主任者資格試験では、史上最年少(12歳4ケ月)の小学生が合格したという。試験のレベルや、「士業」としてふさわしいのかどうかを疑問視する声もあるが、取引実務の中で技能を向上させていくとともに高い倫理観を保つことが肝要だ。

契約前の重要事項説明のあり方についても、2014年中にさまざまな議論が交わされ、IT化について一定の方向性が示された。宅地建物取引主任者(宅地建物取引士)による重要事項説明は、これまで買主や借主と対面で行うことを原則としていた。これを改め、スカイプなどテレビ電話を使用したオンラインによる重要事項説明を認めようとするものだ。2015年半ばから最大2年程度を「社会実験」期間として、賃貸借契約および法人間取引を対象とした実験が進められる。

自然災害を忘れてはならない

住宅や不動産について考えるとき、自然災害をしっかりと念頭に置いて忘れないことが大切だ。2014年も数多くの自然災害が発生した。2月には各地で記録的な大雪となり、7月から10月にかけて相次いだ台風の上陸や接近で大雨被害も続出した。1時間に100ミリを超えるような猛烈な雨が降ったところも多いようだ。さらに9月は御嶽山が噴火し、多くの犠牲者を出してしまった。

大きな住宅被害を伴う災害としては、広島市北部で起きた8月の土砂災害を忘れるわけにはいかないだろう。夜明け前の住宅地を襲った土石流で250棟以上が全半壊し、74名にのぼる尊い命が失われた。11月に長野県北部を襲った地震では最大震度6弱の大きな揺れを観測し、全壊した住宅は50棟にのぼったようだ。

大きな自然災害があると、しばらくはそれに類似する立地条件の住宅は敬遠される。東日本大震災後に湾岸エリアが売れなくなり、内陸部の物件が人気を集めたことは記憶に新しいだろう。ところが、いつしかその警戒心は薄れ、再び湾岸エリアが活況を呈している。いまなら山裾の新興住宅地には注意が向けられるだろうが、やがてはそれも薄れてしまうのかもしれない。

広島市が特殊だったのではなく、短時間であれだけの大雨が降れば土砂災害の危険性が高い住宅地は日本各地に存在する。毎年のように繰り返されるさまざまな自然災害を心に刻み、「どこにでも起こり得ること」という意識でしっかりと災害リスクに向き合うことも欠かせないのだ。

2014年 12月30日 10時59分