東日本大震災が再認識させてくれたエネルギーの大切さ

電気などエネルギーの大切さをもっとも重く感じたきっかけは、2011年3月に起こった東日本大震災だった、という人は多いはずだ。
電気は基本的に蓄えることができないため、電力会社は変化し続ける電力消費量を見越して発電量を調整する必要がある。ところが東日本大震災の発生によって、複数の発電所が停止したために供給できる電力量が減少した。つまり、需要と供給のバランスが崩れる可能性が生じたのだ。特に懸念されたのが電力消費ピーク時の供給量不足だ。対策として計画停電などが行われたことを覚えている人は多いだろう。

このような経験を踏まえ、政府はエネルギーの供給状況に合わせて消費量を変化させる取り組み(ディマンドリスポンス)を行っている。その一つが2017年4月1日から開始された「ネガワット取引」だ。

普段当たり前のように使っている電気。それがある日突然、自由に使用できなくなることがあり得る。<BR />そうならないための取り組みの一つが「ネガワット取引」だ普段当たり前のように使っている電気。それがある日突然、自由に使用できなくなることがあり得る。
そうならないための取り組みの一つが「ネガワット取引」だ

ネガワット取引は電力の需要と供給のバランスを保つ調整力

ネガワットとは、節電により生み出された電力には、発電した電力と同等の価値があるとみなす考え方だ。今回開始された取り組みは、電力消費のピーク時などに、節電する契約を「アグリゲーター」と呼ばれる仲介会社を通じて電力会社と結び、電力会社からの依頼に応じて節電した場合は報酬を得ることができる、というもの。対象は企業などの大口需要家だけでなく一般家庭も含まれるので、すそ野は広い。そのため、ネガワット取引は電力の需要と供給のバランスを保つ調整力になるとして期待されている。

具体的な取り引きの流れは次のようになる。

1. 電力会社が需給状況を予測
2. 需給状況に基づき、電力会社がアグリゲーターに節電の要請
3. アグリゲーターが家庭や企業などの需要家ごとに節電量を設定
4. アグリゲーターが各需要家へ節電要請を行う
5. 各需要家による節電の実施
6. アグリゲーターは各需要家へネガワットの対価として報酬を支払う
7. アグリゲーターは各需要家との間でネガワットと報酬を集約管理する
8. 需要逼迫を回避した電力会社が、アグリゲーターにネガワットの対価として報酬を支払う

ネガワット取引の流れ。電気需要者と電力会社の間に立つアグリゲーターが司令塔となる<BR />(出典:『ネガワット取引の普及に向けた取組』経済産業省)ネガワット取引の流れ。電気需要者と電力会社の間に立つアグリゲーターが司令塔となる
(出典:『ネガワット取引の普及に向けた取組』経済産業省)

契約するには、まずアグリゲーターへ連絡を

このようにアグリゲーターが司令塔となり、需要家は省エネを行うことで報酬を得ることができる。その契約までの流れはこうだ。

1.まずは、アグリゲーターへ相談。アグリゲーターは複数あり、各連絡先は経済産業省が発行する『ディマンドリスポンス(ネガワット取引)ハンドブック』の最終ページ(http://www.meti.go.jp/press/2016/12/20161228004/20161228004-1.pdf)を参考にすればいいだろう。

2.アグリゲーターからネガワット取引の仕組みなどの説明を受ける。

3.くわしい説明を聞いて納得できたら、契約電力や抑制可能なkW、抑制方法などを打ち合わせして決める。

4.打ち合わせ内容に納得できたら契約を締結。あとは要請が来るのを待つ。

指令の伝達方法はメールや電話などで事前に決めておく。また、抑制方法はエアコンや照明を消すなどがあり、こちらも事前に決めておくことになる。

すでに約36億円の取引事例も

政府はこのような取り組みによって、2030年度までに最大電力需要の6%を活用する、という目標を立てている。
節電に役立ち、報酬も得られるネガワット取引。メリットはほかにも以下のようなものが考えられる。

・発電設備の適性化などによる電気料金の引き下げ
・ピーク時間帯に発電するための焚き増しが抑えられることによる燃料費のコストダウン
・ピーク時間帯の電力需要を抑制することによる電力開発投資の抑制
・地球温暖化の抑制

例えば、2013年の東京電力における電力需要を例にすると、1年間(8,760時間)の1%にあたるピーク需要88時間がディマンドリスポンスによって抑制されることで、最高ピークの5,093万kWの約7.5%にあたる384万kWの電力供給設備の稼働・維持管理・更新が不要になると試算されている(出典:「ディマンドリスポンスについて」(省エネルギー庁))。

ネガワット取引は始まったばかりだが、このように大いに可能性を感じることができるのではないだろうか。実際に関連する大きな取引事例もある。2016年秋に一般送配電事業者(10社)によって、公募による調整力の調達が行われた。その結果、東京電力パワーグリッド、関西電力、中部電力、九州電力の4社が総額約36億円で落札したのだ。このような大きな市場に私たち一般家庭も参入できるのがネガワット取引だ。今後の市場拡大に期待したい。

2013年の東京電力における電力需要の例。ネガワット取引を含むディマンドリスポンスには発電所の稼働が不要になったり、発電所の維持管理・更新が不要になるといったメリットもある(出典:『ディマンドリスポンスについて』(資源エネルギー省))2013年の東京電力における電力需要の例。ネガワット取引を含むディマンドリスポンスには発電所の稼働が不要になったり、発電所の維持管理・更新が不要になるといったメリットもある(出典:『ディマンドリスポンスについて』(資源エネルギー省))

2017年 05月31日 11時05分