バブル後に徐々に名前を聞くようになった任意売却

家の売却方法には「一般売却」、「強制競売」のほかに、「任意売却」という方法もあることを知っておきたい家の売却方法には「一般売却」、「強制競売」のほかに、「任意売却」という方法もあることを知っておきたい

オリンピックにむけて各地で開発プロジェクトが進み、景気のいい話も聞くが実際のところどうなのだろうか。所得に関して言えば大手企業の従業員の賃金は上がっているというが、全体から見ればごく一部だ。中小企業に勤める人の年収はほぼ横ばい、または下がっているというのが実情だという。

不動産価格も上がっているというがそれは都心のごく一部の地域しか該当しない。1990年代のバブル以降、不動産価値は大きく下落。例えば、当時1億円で購入した土地でも、不動産価格は下がり3,000万円程度の価値しかないと査定されるケースがある。その場合、既に住宅ローンが完済していれば特に問題ないが、まだ5,000万円も残っていた場合、問題だ。こうした物件を売却してもローンが残ってしまうような状態のことをオーバーローンと言う。こうした話は最近よく聞く話ではないだろうか。実は不動産流通経営協会のデータによると現在、不動産を住宅ローンを利用して購入した人の約77%がこのオーバーローンということだ。

オーバーローン状態だけなら住宅ローンを月々支払っていれば特に問題はない。しかし、景気による収入減や離婚などによる世帯変化など、各ライフステージにおける突発的な出来事もいつ起こるか分からない。このように生活が苦しくなったとき、住宅ローンの支払いが滞ると、どうしても考えざるを得ないのが「家の売却」である。しかし、こうしたオーバーローンの家の場合、例え売れても住宅ローンが残ってしまう。ではもう一つの選択肢として考えられる「競売」はどうか?もしも裁判所経由で競売に出されてしまった場合、差し押さえや近所にも広く知られてしまうなど精神的なデメリットも大きくあまり選択したくないのは言うまでもない。

家の売却と言うと、こうした「一般売却」、「強制競売」の2種類しかないと思いがちだが、困ったときにもう一つ前向きに検討したい選択肢があるのはご存じだろうか?それは「任意売却」である。バブル崩壊後に新しい選択肢として徐々に広がっていった任意売却。いったいどういう仕組みなのか改めて整理してみたい。

少しずつ定着してきた任意売却だが・・・

今回「任意売却」について、任意売却119番を運営する、任意売却支援機構株式会社の代表取締役 富永順三氏に話をうかがってみた。

まず任意売却の仕組みについて見てみよう。一般売却と大きく異なる点が「金融機関」の存在が メインであるということだ。一般売却だと売り手と買い手の間に不動産会社が存在して仲介するという形になるが任意売却の場合には金融機関が窓口で、売却価格を決めるのも売主ではなく金融機関が価格決定権を持つことが多い。

流れとしては、任意売却を実施出来る専門会社に相談することから始まる。今回お話を伺った同社や、 任意売却ができる一部の不動産会社が該当する。しかし、注意したいのが、全国何万もの不動産会社があるものの、任意売却をきちんとできる人材がいる企業は数百程度だという。相談する先の実績等をきちんと精査したいところだ。

<任意売却の流れ>
任意売却を行える機関に相談→その機関を通して不動産の査定をしてもらう→金融機関に提出→両社交渉の上で価格を決定→その後は通常の不動産売却と同じフロー

最初の相談から価格決定まで実に1~2カ月という短期間で進むのが特徴的だ。それに対して、競売になってしまった場合には申し立てから落札まで約8カ月もかかる。競売と比べても期間も短期間で終わる、そしてプライバシーが守られるという点がメリットだと言える。

「金融機関からしても実は競売だと様々なデメリットがあります。債務者と同様に売れる価格が低くなる、時間がかかるという点です。また競売では申し立て金が必要で、裁判所に債権者側つまりこの場合には金融機関が80~100万円程度経費として収める必要があります。そういう事から言っても、任意売却で和解をしたほうが、結果的に金融機関も価格も競売より高く売れて、期間も短い。そして心理的にも追い出すようなことではないので、メリットが多いと言えます。ただし、やはり返せるのなら住宅ローンで普通に返してもらいたいという金融機関側の根本的な意向があるため、積極的に任意売却を広報をしていないのが現状です」

競売も含めて売却に関するそれぞれのメリットとデメリットを下記にまとめてみたので参考にしてほしい。

売却に関するそれぞれのメリットとデメリット(HOME'S PRESS編集部作成)売却に関するそれぞれのメリットとデメリット(HOME'S PRESS編集部作成)

任意売却を知るタイミング

今回お話を伺った任意売却支援機構株式会社の代表取締役 富永順三氏。テレビメディアなどにも多数出演今回お話を伺った任意売却支援機構株式会社の代表取締役 富永順三氏。テレビメディアなどにも多数出演

では、任意売却を知るタイミングとはどんな時なのだろうか?

「ほとんどの方が任意売却についてご存じない状態です。認知は正直あまり高いとは言えません。通常、皆さまが知るきっかけになるのが住宅ローンを滞納して金融機関から送られてくる督促状の中にある案内からです。滞納し始めてから3~6カ月経つと、そこで初めて金融機関から任意売却のすすめについて送られてきます」。

この時点で任意売却の存在を知り、相談してくる方が多いようだ。同社に寄せられる相談件数の内、6~7割は既に何らかの滞納をしている人であり、残りの2~3割がまだ滞納はしていないが今後不安な方だという。金融機関から通知されるタイミングが遅いため状況が悪化して相談するというケースが多くなるが、早めに相談したほうがいいようだ。

「病気と同じで早期に相談していただいたケースであれば、ほとんど売却は成功します。しかし競売が進行している末期だと時間的な余裕がなくタイムオーバーになり、任意売却が成立しないケースがあり ます。そして、不動産と同じく立地によっても成立し難いケースもあります」。

気になる相談内容の内訳や残債について

同社に相談される内容を見ると、相談に至る原因1位は収入減。次いで離婚や病気、高齢・年金暮らし、投資物件が続く。ギャンブル等が原因の任意売却相談はほぼなく、95%が真面目に働いている人によるものだという。

だからこそ、こうした支援制度があるのだからきちんと使ったほうがいいと富永氏は言う。

「住宅ローンが払えない状況になった経緯に自身の責任が全くなかったとは言えないと思いますが、家の不動産価格や給料は全てがその方の責任ではありません。日本の経済がバブル以降病んでいるのも大きな原因です。だからこうした任意売却という制度があるのです。払えないからとカードローン等の借金をするのではなく、こうした制度を使いもう一度前向きにスタートをしてほしいと思います」。

そして、もう一つ気になるのが任意売却をした後に残る残債の存在だ。
残債は既に住宅ローンという存在ではなく、ただの借金の塊だ。ではその残りの借金の塊をどうするのか?手段としては3つある。
1:少額での分割返済
2:法廷処置(自己破産や個人再生)
3:サービサー制度等の利用

分割ベースの場合には、残ったお金を住宅ローン並みの額で支払うという事ではなく、金融機関との交渉で家庭環境や年金暮らしの場合は月々5,000円~2万円といった少額の支払で済む場合も多いようだ。法廷処置の個人再生については、企業の法人再生と同じく認められれば5~10分の1以下に残債を減らすことができる。3つ目のサービサーというのは国が認めた債権を扱う専門会社で、残った残債は交渉の末、10分の1以下に減らせた事例も多いとのこと。

しかし、こうした売却だけでなく新たな選択肢も出てきている。
例えば、毎月のローン支払いは厳しいが、「出来れば子供が学校を卒業するまであと数年は住み続けたい」、「高齢の両親も住んでいるので出来れば住み続けたい」と、希望を持つ人も実際のところ多いようだ。そんな時に売却ではなくそのまま住み続けられるリースバックの制度が考えられるという。リースバックとは、一度不動産を第三者に買取ってもらい、家賃を払いながらそのまま住み続けられるという方法。実施するにはいくつかの審査や基準があるが、売却しても今の家に住み続けられる有効な手段なので売却だけでなくリースバックについても、もしもの時に知っておきたい制度だ。 

今後の展望と課題は

多くの人が相談を受けられるよう、任意売却市場の”教育”に力を入れていきたいと富永氏は語る多くの人が相談を受けられるよう、任意売却市場の”教育”に力を入れていきたいと富永氏は語る

任意売却はただの不動産売買ではなく、個人や法人の再生支援を担っているという。不動産が先ではなく、まずは支援ありきでその中で最終的に不動産がどう動くかそれが重要なのだ。そのため、こうした任意売却の本質についてきちんと理解しておらず見よう見真似で任意売却を行う会社は、“売る”が目的として先行してしまい話がすれ違うことがあるという。

現状、こうした任意売却市場の課題はあるものの、だからこそ富永氏は今後の“教育”に力をいれていきたいと語る。

「今後は教育に力をいれたいと思います。10年間培ってきたノウハウを広め、より多くの方々の相談が受けられるよう受け皿を拡大していきたいです。また、最終的に金融機関との連携もやりたいですね。金融機関と良い連携ができることで、もっとたくさんの方を救えると思います。」

今回取材するまで筆者も任意売却について漠然とした認識しかなかった。こうした救済制度があるのだから、難しい状況に立たされた場合でも諦めることを選択せず、こうした機関を頼り前向きに新たなスタートを切って欲しいと切に願う。

取材協力:任意売却支援機構株式会社(任意売却119番)

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2016年 01月25日 11時05分