管理状況の届け出の義務化などを規定

2019年3月、東京都は「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」を制定した。条例は、良質なマンションストック及び良好な居住環境の形成等を図ることを目的としたもので、都や管理組合、事業者等の責務や役割の明確化、マンションの管理状況について、管理組合などからの届け出の義務化、管理状況に応じた助言や支援の実施の3本柱で構成されている。

管理状況の届け出項目は、管理組合や管理者の有無、総会の有無、管理規約や管理費、修繕積立金などの設定や金額、大規模修繕工事の実施などとなっている。届け出の対象になっているのは、管理組合に関する明確な規定のなかった1983年の区分所有法改正以前に建築された6戸以上のマンションだ。届け出は2020年4月から開始される予定で、対象となるマンションは、1984年以降築のものに順次拡大されることになっている。また、届け出のないマンションや、管理に問題のあるマンションに対しては、管理組合や代表者などの協力を得た上で、調査を行ったり、必要な指導・勧告を行うこともあると定められている。

このような条例が東京で生まれた背景について、東京都住宅政策本部住宅企画部マンション課の担当者は「都内にある分譲マンションの増加と、そこに暮らす人と建物の〝ふたつの老い〞が関係しています」と説明する。

(上)都内の総世帯数に占めるマンションの戸数は右肩上がりに増えている[資料:住民基本台帳による東京都の世帯と人口/東京都総務局、住宅着工統計/東京都都市整備局を基に作成]、(下)建築年代別に世帯主の年齢を見ると、1980年以前に建てられた物件では60歳代以上が半数以上を占める[資料:住宅・土地統計調査/総務省](上)都内の総世帯数に占めるマンションの戸数は右肩上がりに増えている[資料:住民基本台帳による東京都の世帯と人口/東京都総務局、住宅着工統計/東京都都市整備局を基に作成]、(下)建築年代別に世帯主の年齢を見ると、1980年以前に建てられた物件では60歳代以上が半数以上を占める[資料:住宅・土地統計調査/総務省]

「ふたつの老い」が進む都内のマンション

都内のマンションは、1986年に約50万戸、2001年には約100万戸と一貫して増え、2017年には約181万戸に達している。その戸数は全国の約30%を占め、都内の世帯の約4分の1がマンションで暮らしている計算になる。マンションが増える中で、居住者の意識にも変化が見られるという。
「国土交通省の調査によると、かつては、いずれはマンションから住み替えたいという人が多かったのですが、現在はマンションを〝終の棲家〞にするつもりであるという人が半数を超えています」と担当者。

マンションに暮らす世帯主の年齢は年々高まっており、1980年以前に建築されたマンションでは、世帯主が65歳以上という高齢世帯が半数を超えている。一方で、着工から40年以上になるマンションも増え、2023年には約43万戸に達する見込みだ。担当者は「築年数の経過したマンションほど高齢者が多く暮らす傾向にあり、居住者と建物の〝ふたつの老い〞が進行しているのです」と指摘する。

(上)着工から40年以上になる都内マンションの推移をみると、2013年から2023年にかけて、3倍以上になる見込みだ[資料:住宅・土地統計調査/総務省、住宅着工統計/東京都都市整備局]、(下)マンションに永住するという人の割合は50%を超える[資料:平成25年度マンション総合調査結果(2014(平成26)年4月公表)/国土交通省](上)着工から40年以上になる都内マンションの推移をみると、2013年から2023年にかけて、3倍以上になる見込みだ[資料:住宅・土地統計調査/総務省、住宅着工統計/東京都都市整備局]、(下)マンションに永住するという人の割合は50%を超える[資料:平成25年度マンション総合調査結果(2014(平成26)年4月公表)/国土交通省]

管理不全の兆候が現れる前に対処を

「ふたつの老い」の進行によって懸念されるのは、維持・管理や修繕が適切に行われない、管理不全に陥るマンションが発生することだ。東京都が2013年に公表したマンションの実態調査でも、「マンション管理に無関心な居住者が多い」「役員のなり手がいない」といった管理上の問題に対して、「ある」とした回答は築年数の経過したマンションほど多くなっていて、「管理不全に対する潜在的な不安があります」と担当者は危惧している。

今はまだ、マンションの管理不全は顕在化していない。しかし、担当者は「問題が発生する前に対処することが重要と考えています」と言い、「管理をしっかりして、管理不全を予防する」ことを、条例の基本的なスタンスとしている。また、管理状況の届け出を義務にしているのも、「まず、管理状況を把握し、必要な助言・支援につなげるため」と担当者。
「2013年に公表したマンションの実態調査は、任意回答だったために回答率は約17%にとどまり、追跡調査やヒアリングを行うなど、実態の把握には苦労しました」。届け出の義務化は、こうした経緯も踏まえているようだ。

建築年別にマンション管理に関する日常的な問題を調査した結果。1971年以前の物件では、役員のなり手がいない、マンション管理に無関心な居住者が多いといった項目が目立つ[資料:マンション実態調査結果(平成25年3月公表)/東京都都市整備局]建築年別にマンション管理に関する日常的な問題を調査した結果。1971年以前の物件では、役員のなり手がいない、マンション管理に無関心な居住者が多いといった項目が目立つ[資料:マンション実態調査結果(平成25年3月公表)/東京都都市整備局]

適切な管理に向けて、さまざまな制度を用意

届出はこのように「管理不全を予防するための必須事項」や「適正な管理を行う上で重要な事項」について、取組みの有無を尋ねる形式を予定。書面のほか、Webでの申請も受け付けるなど工夫していくとのことだ届出はこのように「管理不全を予防するための必須事項」や「適正な管理を行う上で重要な事項」について、取組みの有無を尋ねる形式を予定。書面のほか、Webでの申請も受け付けるなど工夫していくとのことだ

東京都では、管理状況の届け出を促進するために、当面は条例および届け出の義務化の周知に力を入れることにしている。「そのために条例や施策に関するセミナーなどの開催も検討しています」と下田氏。届け出は、届出書の提出によって行うだけでなく、インターネットでも行えるようにするなど、届け出がしやすく、負担の少ない環境づくりも進めるとしている。管理組合のないマンションに対しては、「区分所有者ひとりひとりにヒアリングをすることなども検討しています」と言う。
東京都では、こうした取り組みを通じて、マンション管理の全体像をできるだけ早期に把握したいと考えているようだ。その上で、管理組合の設立を考えている区分所有者や、運営や管理費、修繕積立金などについて悩んでいる管理組合などには、マンション管理士などを派遣して、区分所有者や管理組合を支援することにしている。なお、すでに専門家が情報提供やアドバイスを行う「マンション管理アドバイザー制度」「マンション建替え・改修アドバイザー制度」があり、区や市によっては、これらの制度の利用にあたって助成制度が利用できる場合もあるそうだ。

条例や届け出などの周知に注力

マンションが適正に管理されているかどうかは、資産価値にも関わる。住む側も当事者意識をもって関わっていきたい取組みだマンションが適正に管理されているかどうかは、資産価値にも関わる。住む側も当事者意識をもって関わっていきたい取組みだ

「マンションやその管理に関する制度は他府県にもありますが、管理状況の届け出を義務付けたのは、都道府県では東京都の条例が初めてです」と担当者が言うように、今回の条例は全国に先駆けたもの。ただ、豊島区、墨田区、板橋区には同様の条例がすでに設けられている。これらの区において、管理状況の届け出や調査、助言や指導などについては、原則、都の条例は適用されないが、都と区の話し合いで適用できることにもなっているので、具体的には今後の協議次第となる。
担当者は「空き家の問題が全国に広がったように、マンションの管理もこれから、大都市を中心とした課題として浮上する可能性はあります」と話す。

今後、都は、条例の目的を実現するため、管理状況の自主的な届け出の促進、条例や届け出などの周知、支援制度の拡充などに力を入れ、区分所有者や管理組合に積極的に働きかける予定だ。

東京都マンションポータルサイト

2019年 06月13日 11時05分