住友林業×住友商事のリノベーションマンション
住宅を購入する際、新築物件あるいは中古物件という選択肢があるが、近年は中古のなかでもリノベーション物件が注目されている。
名古屋市名東区で竣工した「フォレスティア一社クラッシィ」は、住友林業株式会社と住友商事株式会社が初めて共同で手掛けた一棟リノベーション分譲マンション。住友グループの社宅として使用されていた地下1階・地上3階の建物を、一棟丸ごとリノベーションした物件だ。
東海地区を担当している住友林業 住宅・建築事業本部の佐和真人さんは、新築と比べた一棟リノベーションのメリットについて「共用部も含めてリノベーションがされている点ですね。一社で申しますと、エントランスを改修してセキュリティ面を強化し、宅配ボックスの新設によって住む人の利便性も向上させています。また、目に見えない部分の給排水管の交換も行い、安心して住んでもらえるマンションとなっています。その他にも、今回、省エネマンションとして生まれ変わったことにより、フラット35リノベ金利Aプランが適用され、金利が年間0.5%、10年間引き下げられます。併せて売買瑕疵保険も付保されることにより、住んでからの安心はもちろん、住宅ローン減税の適用も受けられます」と語る。
住友林業が取り組むリノベーション事業
空き家が社会問題となるなか、住友林業グループでは、ストック住宅(中古物件)の有効活用のため、2012年よりリノベーション事業に取り組んでいる。一棟丸ごとリノベーションマンションは、東名阪エリアでフォレスティアシリーズとして展開。「フォレスティア一社クラッシィ」が10棟目となる。
「現代は、造って壊して、造って壊して…という時代ではありません。良い中古物件を壊してしまっては、経済的にもったいないですし、環境的にもマイナスです。住友林業としては、古くても使えるものは後世に手を加えて残していく、それがすなわち環境を守ることにつながっていくという理念です。社会貢献といったら大げさかもしれませんが、私を含め、社会的意義を持ちながら仕事をしています」と佐和さん。
住友林業では、一棟丸ごとリノベーションの対象物件について第三者調査機関に依頼し、コンクリートのかぶり厚や壁の強度などを徹底調査。その結果で問題がない物件のみ購入し、リノベーションを行う。買い手が抱く中古物件への不安を払拭した上で、大規模な改修を施して新たな価値を持たせる。
「一棟丸ごとリノベーションでは、エントランス、外観、配管設備といった共用部に手を加えられることも大きな利点です。一棟丸ごと手掛けることによって、マンション全体の“健康診断”がしっかりでき、長期修繕計画を組むことができます。購入されるお客様はこれまでどういった工事をしたかを知ることができ、そして私たちは、購入後にどんな工事が必要なのかというところまでを責任をもって提案できます。そこは購入されるお客様に安心していただけるところかなと思います」。
居住者同士のコミュニケーションを生む設備や仕組みを導入
それでは「フォレスティア一社クラッシィ」の施設ポイントを紹介していきたい。地上3階に全16戸で、地階はシャッターゲート付きの平面駐車場。ルームプランとしては、88.91m2のAタイプが10戸、90.03m2のBタイプが6戸となる。昨今の新築物件は70~80m2が多いなか、この広さは魅力。いずれも3LDKのゆとりある間取りで、主にファミリー向けだ。
そこでコンセプトにしたのが「TOKI・Creation(トキ・クリエイション)」。共に過ごす時間を育むとして、共用部にシェアリビングを作ったのが大きな特徴だ。子どもたちの遊び場や、ママたちの休息場など、コミュニティスペースとなる。お湯を沸かせる設備もあり、ティータイムを楽しみ、来客対応もできる。
また、シェアマップラウンジと名付けられたスペースには、壁にボードを設置。月々の組合などの予定を書き込めるカレンダーのほか、マンション周辺のマップが描かれており、近隣店舗などを書き込んで、情報をシェアできるようにしている。
大切な時間(トキ)を大切な人と快適に過ごしてほしいとの思いは、今回のリノベーションで新設したエントランスの「ラクセスキー」(鍵をカバンなどに入れたまま解錠できるハンズフリーのシステム)や、ベビーカーも収納できる倉庫「シェアストレージ」にも表れている。
取材した2月初旬は、第1期が完売して、第2期の販売中で、細かな運営方法を決める管理組合がまだ始動していなかったが、引き渡し後は住友林業レジデンシャル株式会社が管理会社になるとのこと。「グループで管理を進めていくので、使い方など管理の側面からもサポートできたり、提案できたりします。その点でも住んでからも安心していただけるのではないでしょうか」。
また、外構はこちらもグループ会社である住友林業緑化株式会社が担当。美しく整えられている中、マンション北側の通路には、戸数分の16本の植栽ができるスペースが空けられていた。完売した際に、居住者による植樹祭の開催も考えているとのことだ。
木質感を活かしたルームデザイン
モデルルームに入ると、瞬間に木の香りに包まれた。住友林業のこだわりの一つである「木質感」を活かした造りだ。床や壁などに使われたレッドシダーは、経年で色が変わる。木の温もりを存分に感じることができる。
壁は白を基調としている中で、一部がピンクや薄いブルーなどになっているのもおしゃれさを演出していた。これは、塗装用のクロスの上から実際に色を塗る塗装壁。住友林業のリノベーション物件で多く採用されているという。「リノベーションなのでただきれいにすればいいというのではなく、アクセントクロスでただ色を替えるよりも、塗装壁で素材感を出すことを意識しています」とのことだ。
省エネルギー性が認められ、フラット35リノベ 金利Aプランに該当
また、スイッチやドアの取っ手は低めの位置にされており、ユニバーサルデザインにもなっている。そんな生活に配慮した暮らしやすさを提案する中、性能面では二重サッシと、もともとあった断熱材の上にさらに新しい断熱材を施したのもポイントになる。その他にも節水節湯水栓、断熱浴槽、高効率給湯器、LED照明などを採用。
「これらの効果で、省エネの住戸として『フラット35リノベ 金利Aプラン』に適用する物件になっています」と佐和さん。
金融機関が住宅金融支援機構と提携して提供する住宅ローン「フラット35」。中古住宅を対象とした「フラット35リノベ」で、金利Aプランはフラット35の借入金利から年間0.5%が10年間引き下げられる。Bプランが5年であるのに比べて優遇されている。
このAプランには、省エネルギー性、耐震性などの性能項目で技術基準が定められており、かなり厳しいものとなる。「フォレスティア一社クラッシィ」は、一次エネルギー消費量等級5に該当することから、適用となった。フォレスティアシリーズの中でも、ここだけだそうだ。
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住友林業グループのノウハウも詰め込み、一棟丸ごとリノベーションを活かして、コミュニティ形成ができるシェアリビングを設置するなど、中古物件を新築と差別化できる価値を生み出した。
ストック住宅の問題を解決する一つの手段であり、買い手にとっては購入価格を抑えながらも充実した設備の住まいという選択肢が着実に広がっている。
取材協力:
住友林業 https://sfc.jp/
フォレスティア一社クラッシィ https://sfc.jp/renovation/issha_classy/
2019年 03月19日 11時00分