平城京遷都から約1300年の歴史を持つ“日本最古”と呼ばれる商店街

飛鳥の藤原京から、奈良の平城京への遷都は710年のこと。平城京は唐の都・長安を模して街づくりが行われ、整然とした碁盤の目状になっていた。

平城宮前から南へ向かって延びる大通りは朱雀大路。春日大社から生駒・暗峠まで東西に延びる大通りが三条大路。特に“太陽の通る道”と呼ばれた三条大路の両側には、興福寺・元興寺の2つの大寺院の敷地が広がっていたことから多くの参拝客や行商などが行き交い、古くから大路に沿って商店街が形成されていたという。

以来約1300年の時を経て、三条大路の商店街は現在も存続している。それが“日本最古の商店街”とも呼ばれる『三条通ショッピングモール』だ。

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春日参道を名乗る三条通ショッピングモールは、春日大社との関わりも深い。春日大社では現在、20年に一度の神殿のリノベーション『式年造替』が行われており、2016年11月にクライマックスを迎えることから、地元商店街としてもこれをPRの契機として“奈良の大仏商法”からの脱却を図っているという。

式年造替と地元の関わりは?そして、奈良特有といわれる大仏商法とは?…地元商店街の店主にお話を聞いた。

▲JR『奈良』駅の高架から『やすらぎの道』まで、全長約600mに渡ってまっすぐに延びる商店街『三条通ショッピングモール』。<br />一見近代的な美しい街並みだが、ところどころに奈良らしい古い建物も残されており、<br />現在は約100店舗が加盟している。<br />三条通の東の先にある『春日大社』は、ちょうどいま20年に一度の式年造替の真っ只中。<br />今回の式年造替をPRのチャンスと捉え、商店街でも積極的に集客努力を行っている▲JR『奈良』駅の高架から『やすらぎの道』まで、全長約600mに渡ってまっすぐに延びる商店街『三条通ショッピングモール』。
一見近代的な美しい街並みだが、ところどころに奈良らしい古い建物も残されており、
現在は約100店舗が加盟している。
三条通の東の先にある『春日大社』は、ちょうどいま20年に一度の式年造替の真っ只中。
今回の式年造替をPRのチャンスと捉え、商店街でも積極的に集客努力を行っている

時代の移り変わりと共に、厳粛な神事が“身近なイベント”へ

▲『三条通ショッピングモール』理事長、松山和央さん。松山さんが理事長になってから7年目。春日大社との関係性も深まり、毎年元日には商店街として春日大社へ公式参拝をするようになった。「従来、あまり積極的には商店街の宣伝をしてきませんでしたが、僕が理事長になった頃から“日本最古の商店街”、そして“世界遺産の目の前にある商店街”として、PRを行うようになりました」と松山さん▲『三条通ショッピングモール』理事長、松山和央さん。松山さんが理事長になってから7年目。春日大社との関係性も深まり、毎年元日には商店街として春日大社へ公式参拝をするようになった。「従来、あまり積極的には商店街の宣伝をしてきませんでしたが、僕が理事長になった頃から“日本最古の商店街”、そして“世界遺産の目の前にある商店街”として、PRを行うようになりました」と松山さん

『三条通ショッピングモール』の理事長を務める松山和央さんは現在60歳。古くからここ三条通で理容室を営んできたマツヤマ・プレミアムヘアーの三代目店主で、今回の春日大社の『第六十次 式年造替』は人生で4回目の造替になるという。

「僕が1歳・21歳・41歳のときに式年造替が行われていましたが、実は過去の造替についてはほとんど記憶や知識が残っていません。

4回目の今回は僕自身が理事長を務めているため、地元商店街として深く関わるようになったということもあるのですが、もうひとつ、伊勢神宮や出雲大社の『式年遷宮』が大々的にクローズアップされた影響を受けて、今回の式年造替については今までになく地元の関心が高まっているような気がします」(松山さん談)。

従来、春日大社でおこなわれる行事は“神聖な神様の儀式”であることから、地元の人たちはあえて積極的に関わろうとはしてこなかったという。しかし、近年のパワースポットブームの影響などを受け、厳粛な神事である式年造替を“身近なイベント”として捉える人が増えてきたようだ。

「ちょうど前回の式年造替後、1998年に春日大社が世界遺産に登録されたことで世間の注目を集めたことも大きなきっかけだったような気がしますが、時代の変化とともに人々の感覚が変わり、SNSの普及などによって告知力もアップしてきました。春日大社側も地元を巻き込んで伝統行事を盛り上げようとしてくれています。

せっかくなら、この機会に我々地元商店も一致団結して式年造替を盛り上げながら、春日参道や日本最古の商店街である三条通ショッピングモールのことを多くの方たちに広く知っていただきたいと考えています」(松山さん談)。

奈良特有の“大仏商法”のおかげで、地元でもPR不足が課題に?

▲この三条通をまっすぐ東へ進んでいくと、徒歩約30分ほどで春日大社の一之鳥居前に到着する。「式年造替は厳粛な神事なので、最初は『式年造替』の文言をフラッグに掲げたり、商店街のPRに使っても良いのだろうか?と悩んでいました。でも、伊勢神宮の式年遷宮で地元商店が盛り上がっている様子を見て、“ああ、お伊勢さんはやっぱりPR上手だなぁ。我々もやるしかない!”と刺激を受けました(笑)」と松山さん▲この三条通をまっすぐ東へ進んでいくと、徒歩約30分ほどで春日大社の一之鳥居前に到着する。「式年造替は厳粛な神事なので、最初は『式年造替』の文言をフラッグに掲げたり、商店街のPRに使っても良いのだろうか?と悩んでいました。でも、伊勢神宮の式年遷宮で地元商店が盛り上がっている様子を見て、“ああ、お伊勢さんはやっぱりPR上手だなぁ。我々もやるしかない!”と刺激を受けました(笑)」と松山さん

ところで、奈良には「大仏商法」という言葉があることをご存知だろうか?

「奈良には大仏さんがあるから、黙ってても観光客が見に来はんねん」という奈良商人特有の“消極的な営業姿勢”を表す言葉で、おそらく1300年前の平城京の時代から脈々と受け継がれた地域特性なのだろう。

「奈良の大仏商法というのはいまだに根強く残っていて、観光客目当ての商売でこれまで長いこと成り立ってきましたから、“わざわざ宣伝をしてお客さんに来てもらう”という感覚が地元の商店主たちにはありませんでした。

朝の開店時間が早く、夜はあっという間に閉店してしまう…地元で暮らす人たちに利用していただくことよりも、観光客の行動時間を基準にしてお店を営んできたため、“これからはもっと地元密着型の商売をしなくては”という点が、大仏商法から脱却するための課題になっています。

実は、春日大社の式年造替に関しても、地元で暮らす人たちの中には“造替がいつ行われて、いつクライマックスを迎えるのか?”を知らない人も多いのです。全国に向けて発信を続けることはもちろんですが、地元の人たちに対してもPRを強化しなくてはいけないという使命感もありますね」(松山さん談)

ちなみに、『三条通ショッピングモール』では式年造替に合わせ、街路灯に『祝・御造替』の文字が記されたフラッグを掲げている。

「街路灯は奈良市の持ち物なので、本来であれば勝手にフラッグなどを取り付けることは許されないのですが、奈良市も“造替を盛り上げるため特別に…”ということで許可してくれました。こんな風にフラッグを掲げたり、商店街としての造替記念イベントを定期的に開催することで、観光客の皆さんだけでなく、地元の人たちにも式年造替のことを知ってもらうきっかけになればと思っています」(松山さん談)。

式年造替はありがたいことやねんで!を後世へ伝えていきたい

「20年に一度しかない式年造替を絶好のPRチャンスとして捉え、もっともっと春日大社をメジャーな存在にしたい」と松山さん。

「そのためには、“来るもん、来るわ!”という大仏商法の感覚をまず我々が変えなくてはいけませんし、次の20年後の式年造替に向けて、子どもたちに対しても“式年造替はありがたいことやねんで!”ということをハッキリ伝えていかないといけません。地域の活性化のためにも、もっともっと“内外に対してPR上手な奈良の人”を目指したいですね(笑)」(松山さん談)。

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今後『三条通ショッピングモール』では、春日大社の采女祭りや奈良県大芸術祭などの秋のビッグイベントにあわせ、9月4日に『春日参道三条通ショッピングモール・はれのひ』を開催するなど、賑やかなイベントの開催が予定されている。

式年造替をきっかけに、長年の大仏商法からの脱却が叶うかどうか?!日本最古の商店街の今後の取り組みに注目が集まる。

■取材協力/三条通ショッピングモール
http://nara-sanjo.jp/

■奈良春日大社 第六十次 式年造替
http://www.kasugataisha.or.jp/zoutai/index.html

▲『三条通ショッピングモール』の入口とも言えるJR『奈良』駅前広場には、<br />春日大社の式年造替を記念して『式年造替奉祝ゲート』が設置されている。<br />このゲートは期間限定ですぐに撤去される計画だったが、<br />松山さんをはじめ地元の商店主らが「式年造替を盛り上げるために11月まで設置してほしい」と提案。<br />三条通を訪れる観光客の記念撮影スポットとなっている▲『三条通ショッピングモール』の入口とも言えるJR『奈良』駅前広場には、
春日大社の式年造替を記念して『式年造替奉祝ゲート』が設置されている。
このゲートは期間限定ですぐに撤去される計画だったが、
松山さんをはじめ地元の商店主らが「式年造替を盛り上げるために11月まで設置してほしい」と提案。
三条通を訪れる観光客の記念撮影スポットとなっている

2016年 07月31日 11時00分