「住宅団地型既存住宅流通促進モデル事業」として採択された奈良県北葛城郡河合町にある西大和ニュータウン(星和台・中山台・広瀬台・高塚台)

瀟洒な一戸建てが建ち並ぶ奈良県にある西大和ニュータウン瀟洒な一戸建てが建ち並ぶ奈良県にある西大和ニュータウン

昨年、総務省から発表された全国の空き家率「13.5%」の数字について、何度も目にした方も多いはず。様々な空き家対策が取り沙汰される中で、“空き家対策”はどちらかと言えば既に空き家になったものをどう活用するかに目が向いていると感じる。確かに空き家になった家の活用は大事だが、どんどん古い家が増えていくことを考えると、まだ人が住んでいる家に対しても、いつ空き家になってもおかしくないと考える必要がある。そのため、将来いずれ空き家になる可能性がある築年数の経った家に対しても早めの対策が必要だといえる。

奈良県北葛城郡河合町にある西大和ニュータウン。大阪の都心部まで一時間圏内という利便性のある土地で1960年後半から開発が行われてきた。大規模分譲住宅地として関西地区では千里ニュータウンに規模も歴史も次ぎ、入居者の高齢化が進んでいるため“街のオールドタウン化”が懸念されている場所でもある。懸念はあるものの、実はまだ空き家率は約5%台であり、全国平均と比べれば空き家率は低いほうだ。現在、西大和ニュータウンにある星和台・中山台・広瀬台・高塚台には、3,578世帯が住み、1世帯あたりの平均坪数は60坪近くで敷地にゆとりのある一戸建てが建ち並ぶ。

そんな西大和ニュータウンの4地区を対象に、パナホームによる事業提案が国土交通省「住宅団地型既存住宅流通促進モデル事業」として2015年1月に採択された。既存住宅の活用・流通の促進が図られ、将来空き家にならないような取り組みが実施されていくという。どういう対策が行われるのか?まだ始まったばかりの同事業だが、今後の空き家対策を考える上でも知っておきたい。

空き家の多い街になる前に、早めの対策

河合町の役場で今回の事業について説明があった河合町の役場で今回の事業について説明があった

河合町の役場で今回の事業について説明があったので聞いてきた。

今回の事業は「かわい浪漫プロジェクト」と命名され、河合町とパナホーム、大阪ガス行動観察研究所、移住・住みかえ支援機構(JTI)が連携して進めるという。

今回のプロジェクトについて、河合町の町長である岡井康徳氏によると
「数年前に私は河合町はこのままでいいのかと考えていました。現状はまだ急激な人口減少などはありませんが、いずれは他のニュータウンのように様々な課題が表面化してくるのではないのだろうか。そのために早めの対策を講じる必要がある、そう感じていました」とのこと。

そうした状況下で、住民との対話や住宅業界の情報を収集し、パナホームのスマートシティなどの取り組みを視察した。同社と地域活性化に向けた研究を目的に連携協定を2014年6月に締結。今回のプロジェクトに至ったという。注文住宅がメイン事業のはずのハウスメーカーが、既存住宅地のこうしたプロジェクトに携わる意義とは何なのだろうか?

パナホームの取締役社長 藤井康照氏によると
「日本の国全体で空き家があります。これを何とかしていこうということもさることながら、少子高齢化でどんどん大規模分譲地が世代交代の中で空き家になっていき、街そのものの機能が衰えていっている。現在、街の中心に機能を移すコンパクトシティ施策などが行われているものの、20~30年前にできた大規模住宅地については郊外に置かれ機能を移したくても移せない状況で、置き去りにされている印象がありました。

世代交代が進み空洞化が進む前に、いちハウスメーカーとしてこうした問題を責任もって考えていかねばならないと思っていました。そうした中で今回岡井町長から『将来を考えると今からなんとか手をうたなければならない』とご相談いただき、ご縁があり一緒にスタートラインに立つこととなりました」とのことだ。

では具体的にはどういった事が西大和ニュータウンで行われるのか?藤井社長曰く「住宅団地における流通促進事業において、行政と一民間会社が一緒になって取り組むテーマはこのプロジェクトだけではないかなと感じています」という、このプロジェクトについて具体的に見ていきたい。

コールセンターの設置など直に住民と接点を持つ

もともと西大和ニュータウンの地域は西大和開発というデベロッパーによって開拓された大規模分譲住宅地だったが、現在その会社はなくなってしまっている。住んでいる人にとって、もともとの売り主がいないという状態は、家の状態を気軽に相談できない状況ともいえる。

そうした背景がある中で、今回のモデル事業でのポイントは下記4つ。
・官民連携の取り組みで、地域の活性化と魅力向上を図る
・解散した開発主体に代わり、住宅の維持管理や利活用に関する窓口となることを目指す
・子育て世代への良質な住宅提供による居住誘致(空き家を活用したJTIの新たなリーススキームの活用等)
・地域との関係構築を図り、長期的な取り組みを行う


ただ提供するだけでなく、実際にコールセンターの設置や現地相談窓口をひらいたりと、住民が相談しやすいスキームにするのが特徴的だ。
また、相談先だけではなく、国からの補助金を利用して上限10万円で住宅診断(インスペクション)を行ったり、リフォーム工事を1住戸あたり上限100万円まで補助する。(※募集件数の上限あり)イベントの開催なども行い、河合町と対象地域の自治会と交流も図る。また住み替えなどを考えているが家を売りたくない人向けに、JTIを利用したマイホーム借り上げ制度も導入する。

西大和ニュータウンの地域は今後どうなるのか?

河合町役場から、西大和ニュータウンの様子。まだ廃れてはいないが、今後どうなるのか?河合町役場から、西大和ニュータウンの様子。まだ廃れてはいないが、今後どうなるのか?

行政と民間企業一体となって、既存住宅の活用・流通の促進を図る同プロジェクト。新しい家を作っていくのではなく、既にある家をどう活用していくのか?今後避けられない問題に、いちはやく対策を打ち始める「かわい浪漫プロジェクト」はどんな結果をみせるのだろうか。
岡井町長が言うには、30~40代の人口は減っておらず問題なのは20代の若者とのことだ。しかし、そうした離れていった若者に対しても、「今回の街づくりによって、廃れていくのではなく、いずれまたこの地に帰ってきてくれるようなそんな街にしたい」と抱負を述べる。

西大和ニュータウンの街を見学したが、家のエクステリア周りもキレイに整備されている住宅が多く、まだ少しも“廃れ感”はない印象を受けた。立地も大阪には十分通学・勤務圏内で、若者に焦点を当てれば、近くには進学校と名高い西大和学園高校などもある。しかし、こうして今の内から対策を打つことが、廃れない街づくりには重要だ。こうしたプロジェクトを通して、都心部だけでなく郊外でも“生きる街”が続いていくことに期待したい。

2015年 03月06日 11時08分