総務省を中心に他省庁が連携、タスクフォースが立ち上がった

一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会理事の柏木孝夫氏の司会進行により、総務省、資源エネルギー庁、林野庁、環境省の4省庁によるトークセッションが開催された一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会理事の柏木孝夫氏の司会進行により、総務省、資源エネルギー庁、林野庁、環境省の4省庁によるトークセッションが開催された

平成27年8月、総務省を中心に資源エネルギー庁、林野庁、環境省の4省庁が連携し、「地域分散型エネルギーインフラプロジェクト」事業化促進に向けたタスクフォースが立ち上がった。
このプロジェクトは、各自治体が"エネルギーの地産地消"をすることで、災害や国際情勢に左右されにくいエネルギー供給体制を確立すると共に、2016年4月に控える電力小売自由化による雇用創出や、新たな税収など、地域経済の好循環をつくり出す目的がある。
しかし、これらのエネルギーインフラの整備を民間事業者がおこなうには、多額のコストと資金回収まで相当の時間を要するなど負担が大きい。そのため、各省庁が連携し、初期投資の部分を支援することで事業化を早めたいとしている。
総務省では、この大規模なシステム構築の設計に向け、各自治体に「地域の特性を活かしたエネルギー事業導入計画(マスタープラン)」の作成を支援をし、住民、企業に対して、どれだけの熱が必要になるのかという熱需要の集約化を進めている。

2016年2月2日、東京都千代田区イイノホールで開催された「先進エネルギー自治体サミット2016 ~強靱な地域エネルギーシステムへ~」では、この4省庁が集結し、各省庁からの提言が発表された。

資源エネルギー庁、林野庁、環境省が、総務省主体のプロジェクトを支援する背景には、どのような目的があるのだろうか?

各省庁の目的に合致するプロジェクトを進めてきた総務省

政府は地方創生戦略において、首都圏の人口集中による地方からの若者の流出は、出生率の減少や労働力の消失など、地方経済の活性化を阻む大きな要因として捉えている。
また、公的資金に依存している自治体の現状に対し、国との関係を改めて見直し、地方自らが資金循環を起こしていく「稼ぐ力」が重要だとしている。

「地方分散型エネルギーインフラプロジェクト」は、従来、輸入された化石燃料を使用し、住民や企業が支払うエネルギーへの支払いが地域外や海外に流出していたものを、木質バイオマスをはじめとする地域資源を活用したエネルギーに切り替えることで、エネルギーへの支出を地域で循環させて雇用や税収を生み出そうとするものである。
また、2016年4月から始まる電力小売自由化は、およそ7.5兆円とも言われる市場を背景に、地方における新たな資金循環の源泉として期待されている。

総務省大臣官房審議官地方創生担当の猿渡知之氏は、「地方で資金を循環させるため、国内で安定的に需要のあるエネルギー支出を、地域経済の高循環の種にさせていきたい。ただ、エネルギー政策については、資源エネルギー庁、木質バイオマスに関しては林野庁が管轄をしている。そのため、プロジェクトを実現するにあたり、これまで温暖化対策地域協議会や新エネルギー導入促進協議会など、地域経済の好循環を目指しながらも、各省庁の目的に合致したプロジェクトを立ち上げてきた。地域経済好循環を実現する際に最も重要で、難しい部分である設備投資の部分を、他省庁と連携を強めて進めていきたい」と語る。

写真左上)総務省 大臣官房審議官 地方創生・地方情報セキュリティ担当 猿渡知之氏</br>右上)経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長 藤木俊光氏</br>左下)林野庁 林政部長 牧元幸司氏 右下)環境省 総合環境政策局 環境計画課長 大村卓氏写真左上)総務省 大臣官房審議官 地方創生・地方情報セキュリティ担当 猿渡知之氏
右上)経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長 藤木俊光氏
左下)林野庁 林政部長 牧元幸司氏 右下)環境省 総合環境政策局 環境計画課長 大村卓氏

熱エネルギーの有効活用と管理を重要視する資源エネルギー庁

国内のエネルギー政策を管轄している資源エネルギー庁は、エネルギーの地産地消をどのように捉えているのか。資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長 藤木俊光氏はこう語る。

「エネルギーの地産地消は、特に、国内のエネルギー消費の半分を占める熱エネルギーの有効活用は非常に重要だと捉えている。熱エネルギーは距離が長いほどエネルギーロスが生じてしまうため遠隔地への供給が困難だ。また、これまで日本の電力会社やガス会社は、需要がある分エネルギーを提供してきた。しかし、エネルギー問題を全体でとらえた場合、エネルギーを使う側のコントロールができれば、短時間のピークアウトのために巨大な施設を抱えることもなくなるなど、効率的なエネルギーの管理が可能だ。地域のエネルギー地産地消とエネルギー管理は、日本のエネルギー政策を推し進める上で重要な突破口だと思っている」。

国内におけるエネルギー需要のほとんどは「熱需要」である</BR>(出典:『平成25年度エネルギー白書』資源エネルギー庁)国内におけるエネルギー需要のほとんどは「熱需要」である
(出典:『平成25年度エネルギー白書』資源エネルギー庁)

木質バイオマスの推進をする林野庁、温室効果ガスの削減に取り組む環境省

石油や石炭といった有限な資源である化石燃料に対し、太陽光や地熱、水力といった一度利用しても比較的短期間に再生が可能なエネルギーが「再生可能エネルギー」である。そしてこの中でも特に注目されているのが、林野庁が拡大を推進する「木質バイオマスエネルギー」である。
いま、国内の森林資源は、戦後植えた木が大きく育ち、国産材の供給量がアップしているという。
平成27年の農林水産物・食品の輸出実績では、前年の平成26年に比べ22%増の約7,400億円に伸び、林産物においても中国向けの丸太輸出が急速に伸びているという状況である。
これに伴い、国内に設置される木質資源利用ボイラー数も伸び続け、間伐材などに由来する木質バイオマス利用量も、平成26年には178.7万m3と、平成22年の55万m3から3倍以上になっている。
林野庁 林政部長 牧元幸司氏は、「林野庁が属する農林水産省として、農山漁村地域の新興をはかることも大きなミッションのひとつ。その中で、国土の約7割を森林が占める日本において、木質バイオマスを中心とする地域の資源を活用した経済的な発展は、林野庁としても取り組むべき政策の一つです」と語り、林業を成長産業化すべく継続的に支援施策を行っていくと語った。

また環境庁は、昨年11月にパリで開催されたCOP21で策定された、温室効果ガスの削減という目標がある。
注目するのは、木屑、間伐材といった木質バイオマスエネルギーの適切な資源管理が、同時に森林の管理につながり、CO2の削減の貢献が大きいと期待されている点である。
環境省 総合環境政策局 環境計画課長 大村卓氏は、「パリ協定は、世界の首脳が集まりCO2削減に向けて厳しく取り組んでいこうと合意をした、大変画期的な出来事。地域エネルギーの創出や分散化、再生可能エネルギーの利用拡大などによって、世界中で新たなビジネスが生まれていくと思っている」と語り、自治体での再生可能エネルギー普及促進に向けた設備補助などを中心に、新たに予算を組み支援をしていくという。

出典:『平成26年度 森林・林業白書』林野庁出典:『平成26年度 森林・林業白書』林野庁

地方経済の高循環に向けて問われる"自治体の稼ぐ力"

「エネルギーの地産地消」は、それぞれ異なる目的をもった4つの省庁を、横串でつなぐことを実現した。
今回の総務省との提携について資源エネルギー庁の藤木氏は、「自治体との連携が強い総務省とアライアンスを組むということは、資源エネルギー庁としても、また、双方にとってもメリットのある関係であると考えている。自治体は資源エネルギー庁にとっても大切なプレーヤーの一つです」と語る。

総務省は、今回タスクフォースを立ち上げた4省庁のみならず、国土交通省や財務省など必要に応じて、他省庁との連携も継続的に進めたいとしている。
総務省の猿渡氏は、「初期投資は関係省庁の尽力によりまかない、我々は事業の立ち上げまでを支援する。それ以降は、民間事業者や自治体の知恵が必要で、各自治体からの提案が重要だ」と、あくまでプロジェクトの主体が各自治体である点を強調した。

自治体が主導となって進められる日本のエネルギー政策が、各省庁の壁を超えたサポートにより、今後どれだけ事業化が進むのか。自治体の競争力、推進力が問われることになりそうだ。

2016年 04月10日 11時00分