電力小売り全面自由化に向け、各社の申込受付が始まる

小売電気事業者を選ぶことが可能となる電力自由化。私たちの生活にどのような変化をもたらすのか小売電気事業者を選ぶことが可能となる電力自由化。私たちの生活にどのような変化をもたらすのか

2016年4月から始まる電力小売り全面自由化に向け、新規参入企業の申込受付が始まった。
これまで一般家庭で使用する電気は、東京電力をはじめとする地域電力会社が独占してきた。しかし、電力全面自由化以降は、これに加えてガス会社や携帯キャリア、旅行会社などの異業種が新規参入し、消費者が自由に電力の契約先を選べるようになる。

経済産業省の発表によると、2016年1月15日現在、小売電気事業者の登録数は累計で130社となり、1月14日の段階では105社が審査待ちだという。今後、引き続き異業種などの新規参入が続くと見られており、各々の企業による本業を活かした契約プランの展開や業務提携など、電力小売市場の競争はますます激化することが予想される。消費者にとっては、電力の契約先を選べるようになる一方で、契約プランが多様化することで、料金体系などが煩雑になるという懸念もある。

ここでは、現段階での主な参入企業の動向と共に、実際に消費者が電力の契約を変更する際に必要な手続きや注意点などを紹介したい。

ガス会社に通信キャリアなど、異業種参入により競争が激化する電力市場

電気と同様に、重要なインフラの一つでもあるガスを提供する東京ガスは、ガスと電気の両方を契約することで割引をする「ガス・電気セット割」、さらにガス・電気の契約に加えて光回線を使用したインターネットサービスを含めた「東京ガストリプル割」を発表している。これにより、ガス・電気・インターネットという一般家庭に必要なインフラの支払いを一本化することにより、利便性の向上を図る。
ガスの販売においては、電力自由化と同じく2017年にガスの小売り自由化が決定しており、今回の電力事業の新規参入は、そうしたインフラの一括提供が目的と考えられる。

また、通信インフラという点では、KDDIやソフトバンクといった通信キャリアも電力販売に参入することを発表している。
KDDIによる「auでんき」は、電気の契約とauケータイ・スマートフォンを併せて利用することで、毎月の電気利用料金に応じてキャッシュバックをする「auでんきセット割」を展開する。また、1月20日には関西電力との業務提携を発表しており、関西電力の供給エリアにおいては、契約開始から1年間の限定で、全国の他地域より高いキャッシュバック率にする。
一方ソフトバンクは、東京電力と業務提携し、契約アンペア数や過去1年の電気使用量の実績によって基本料金が決まるプランや月の電気使用量が300kWhを下回ったとき、ソフトバンクのデータ通信量かTポイントのいずれか好きな方で還元されるプランなど、多彩なサービスのラインナップを提供する。

異業種の新規参入が続く中、元々独占して電気を提供していた地域電力会社の一つである東京電力は、前述したソフトバンクとの提携の他に、TポイントやPontaなどのポイントサービス、家電量販店のビッグカメラとの提携など、2016年1月現在で21社との業務提携を発表し、顧客の確保に乗り出している。

契約変更に向けた手続き① 契約先への申込手続き

では、4月から変更する契約先から電力の供給を受ける場合、消費者は具体的にどのような手続きが必要なのだろうか。

まずは、これから新しく契約をしようとする小売電気事業社への申し込みが必要となる。
今回紹介した東京ガス、KDDI、ソフトバンクを例に挙げると、いずれも申込の方法としては、
1)各営業所、店舗への来店による申し込み
2)WEBサイトによる申し込み
3)電話による申し込み(※ソフトバンクのみ、現在電話による申し込みは対応していない)
という3つの方法による申込が可能である。

店舗での申込は、電気の契約者本人が、2016年1月以降に投函される電気の検針票、運転免許証、パスポートなどの本人確認書類、印鑑を持参の上、来店する必要がある。2016年1月以降の検針票が必要な理由は、1月以降の検針票に「供給地点特定番号」が新たに追記されているためである。これは、契約者が電気を使用しようとする場所を特定するためで、検針票の最上部に22桁の番号で表示される。また、契約者の家族が代理で来店する場合は、上記の持ち物に加え、契約者本人による委任状が必要となる。

WEBサイト、及び電話による申込の場合は、契約者本人のみが申し込むことができる。その際に電気の検針票に記載されている「電力会社のお客様番号」、「供給地点特定番号」が必要となるので、申込時には1月以降に投函される新しい検針票を手元に用意しておきたい。

契約変更に向けた手続き② スマートメーターへの切り替え

通信機能を備え、電気使用量の遠隔自動検針が可能なスマートメーター(画像提供:東京電力)通信機能を備え、電気使用量の遠隔自動検針が可能なスマートメーター(画像提供:東京電力)

電力の契約先を変更する場合に必要となるのが「スマートメーター」の設置である。
これまでは各電力会社の電気メーター検針員によって、各家庭の使用電力を検針してきたが、今後は通信機能をもった「スマートメーター」の設置により、電気使用量の遠隔自動検針が可能となる。
現在、2014年末までに東京電力を中心とする各電力会社により全国で314万台の設置がすでに完了しており、政府の「エネルギー基本計画」では、2020年代早期にはすべての家庭への設置を目標としており、2016年4月から電気の契約先を変更を希望する消費者に対しては、遅滞なく設置を行うとしている。※スマートメーターへの設置工事が必要となる場合、契約先の変更には、標準的に2週間程度の日数を要する。
メーターの交換に関しては、消費者が新たに契約する小売電気事業者からの連絡に基づき、各地域の電力会社がスマートメーターの設置を行う流れとなっており、交換に関して契約者に費用が発生することはない。また、原則立ち会いは不要ではあるが、交換工事の際は一時的に停電するため、その点は注意したいところである。

なお、マンションなどの集合住宅に住んでいる場合であっても、各住戸別に電力会社と個別契約していれば、前述した3つの方法で申込が可能である。
しかし、大型マンションなどでは、管理会社が電力会社からまとめて購入して、そこから各世帯へと分配する「一括受電」と呼ばれる契約をしていることがある。マンションが一括受電をしている場合、安価で電力を使用できている可能性があるため、電力小売事業者の選択による料金的なメリットは薄いかもしれない。
集合住宅に住んでおり、電力小売事業者の変更を考えている方は、まずそのマンションがどのような契約で電気を購入しているか、管理会社や管理組合へ確認が必要である。

電力自由化により、一人ひとりが住まいの電力をコントロールできる時代へ

日本は中国、アメリカなどに継ぎ、世界第5位のエネルギー消費国でありながらも、原子力を含まないエネルギー自給率は、わずか5%にとどまっている。
これは先進国の中でも極めて低い水準であり、日本の電力は依然、価格変動が激しい化石燃料の輸入に頼っている。

こうした状況の中、これまでの電力会社による独占的な料金形態から一変、ライフスタイルに合った様々な電力プランを選択し、HEMSの活用による電力の”見える化”によって、消費者自身が住まいの電力をコントロールできる時代が目前に迫っている。

”いま家庭でどれだけの電気を、何に消費しているのか”
電力全面自由化まであと2か月余り。今回の電力自由化は、消費者一人ひとりの電力使用に対する意識の変化により、日本のエネルギー消費のあり方が変わる一歩になるのではないだろうか。

2016年 02月02日 11時06分