リノベーションのベンチャー企業がスマートハウス事業をスタート

フォーラムで登壇するリノべるの山下智弘社長フォーラムで登壇するリノべるの山下智弘社長

住まいの選択肢のひとつとして、中古住宅のリノベーションを検討する消費者が増えている。HOME‘S PRESSでもさまざまなリノベーション住宅を紹介しているのだが、今後、どんなリノベーション住宅が登場するのだろう? そんな興味を感じていたところ、中古マンションのリノベーションを手がけるリノべる株式会社では2016年からスマートハウス事業に本格参入するという情報が入ってきた。その構想が披露されるという戦略発表会「リノべる。フォーラム」に参加した。

リノべるは2010年創業の若い企業だが、その急成長ぶりからリノベーション専門のベンチャー企業として注目を集め、マスコミにもしばしば取り上げられている。物件紹介から設計・施工、住宅ローンの申し込みまで、顧客に対して一貫したサービスを提供するワンストップ型の事業展開を行なう。受注件数は2011年度の20件から2年後の13年度には100件を突破して113件に拡大。引き続き、成長が続いていることは、このフォーラム冒頭に登壇した山下智弘社長による同社の事業概況報告からもうかがえた。2014年度の受注件数は246件、2015年度は330件になる見込みと、順調に業績を伸ばしているという。
「当社に限らず、リノベーション業界全体として市場は拡大しています。現在は新築住宅の10分の1にも満たない市場規模にとどまっていますが、中古住宅の流通促進は国の新成長戦略にも掲げられている施策です。今後は中古住宅の流通が進み、市場は広がっていくでしょう。その一翼を我々が担っていきたい」と、山下社長はフォーラム壇上で語った。

スマートリノベで実現したいのは「もっと便利で楽しい家」

フォーラム会場のロビーでは、IoT機器の展示も行なわれていた。写真はQrio(キュリオ)のスマートロックフォーラム会場のロビーでは、IoT機器の展示も行なわれていた。写真はQrio(キュリオ)のスマートロック

山下社長の事業概況報告に続き、同社の新規事業担当の木村大介氏が登壇。スマートハウス事業の構想が発表された。

スマートハウスとは、一般的には家庭内のエネルギー消費を、ITを使って最適な状態に制御する住宅と定義されている。「例えば、電力消費量をグラフなどにして“見える化”したり、外出先からエアコンを遠隔操作して帰宅後には快適な温度になっている、というようなものがスマートハウスに対して持たれているイメージだと思います。しかし、当社がスマートハウスで実現したいことは“もっと便利で楽しい家”です」と、木村氏は話した。めざすのは「生活のスマート化」、「煩雑な書類の管理」、「困ったときにプロに相談できること」の3点。それぞれについて、木村氏の説明を整理してみると、次のようになる。

まず、「生活のスマート化」では、家にある家具や家電、建具をすべてインターネットにつなぎ、人間が操作しなくても快適な空間を保ってくれる状況にするという。それはつまり、身の回りのものをすべてインターネットに接続させて通信・制御機能をもたせるというIoT(Internet of Things)の技術をフルに導入するということだ。端末に搭載されたセンサーによって住人が気づかない異常を感知できるようにしたり、さらにインターネットで新しい機能が追加されていくことを可能にしたいという。

「煩雑な書類の管理」でめざすのは、必要なときに必要な書類を検索してすぐに見られるようにすること。「家を購入すると、法律関係の書類、導入した設備に関する保証書など、さまざまな書類を管理する必要が発生します。それらは重要でありながらなかなか整理できずにいて、いざというときに見つからない、なんてこともあり得ます。そこで重要書類を1ヵ所に集め、必要に応じて自由に検索できるような機能をもたせたいと考えました。それが実現すれば、家にどんな設備が入っているのか、いつでもすぐに確認することも可能になります」と、木村氏は語った。

「困ったときにプロに相談できる」は、家の設備などが故障してしまったときにリノべるに気軽に相談できたり、室内に取り付けられたさまざまなセンサーによって事前に不具合を通知するという機能などとしている。

構想の実現に向けてスマートフォンアプリを開発中

開発中のスマートフォンアプリについて説明する木村大介氏開発中のスマートフォンアプリについて説明する木村大介氏

こうした機能を備えたスマートハウスは、住む人の利便性を考えた家であることには違いないだろう。同社では構想の実現に向けてスマートフォンアプリの開発に着手しているという。

フォーラムでは開発中のアプリ画面を用いてのデモンストレーションも行なわれ、各部屋に接続されたIoT機器を個別に操作したり、一括操作する様子を見ることができた。
「生活のシーン別に操作をすることも可能です。たとえば“旅行”をオンにすると、家を留守にしていても自動的にテレビがついたり、夜には灯りがついたりと、人がいるように装ってくれます。そうすることで、防犯セキュリティの強化につながると考えます」と、木村氏は説明した。開発中のアプリからは重要書類やリノベーション前の図面なども確認でき、困ったときには相談機能を使ってチャットでオペレーターに相談できることも示された。

IoT機器などの実証実験の場を兼ねたショールームを新規オープン

スマートハウスのショールーム「コネクトリーラボ」スマートハウスのショールーム「コネクトリーラボ」

なかなか魅力的なアプリを開発していると思うが、フォーラムで木村氏が述べていたように、リノべるはシステム開発会社でもなければデバイスメーカーでもない。木村氏は「今後、当社でIoT技術を蓄積していこうということでもなく、我々はあくまでリノベーションの企業です」と話した。

では、どのようにしてアプリの開発を行なっていくのか?
その方法として発表されたのは、アプリ開発の実験の場として、スマートハウスの最新デバイスを集めたショールーム「Connectly Lab.(コネクトリーラボ)」の新規オープン(9月8日、東京・渋谷にてオープン)。そこにはスマートフォンで鍵を操作できるスマートロックや、スマホと防犯カメラを組み合わせたホームセキュリティ機器など、国内外の13種類のスマートデバイスを展示する。一般消費者がスマートデバイスを体験できる貴重な場にもなるだろうが、リノべるではエンジニアたちに開放し、ショールームに導入されているデバイスの試用や、エンジニア自身が端末を持ち込んでの実証実験を行なえる場にしていきたいという。また、スマートハウス関連のアプリなどの開発アイデアや技術を競うハッカソンといったイベント開催も予定されている。

こうした試みを通じて開発されたアプリを、リノべるのスマートハウスリノベーションに取り入れていきたいという。「コネクトリーラボ」には一般消費者も訪れるだろうからそうした人たちからの声を拾い、ユーザーニーズに対応するアプリの開発を探っていくことも可能になるとしている。

また、「コネクトリーラボ」のオープンと合わせ、コミュニケーションロボットを開発するユカイ工学株式会社と提携することも発表された。ユカイ工学の「BOCCO(ボッコ)」というコミュニケーションロボットのAPI(※)を利用したアプリケーションの開発を「コネクトリーラボ」で行なっていく。「BOCCO」はインターネットに接続してスマホのメールやメッセージを読み上げるロボットで、そのAPIを利用することで、家の中のさまざまな状況に応じた音声を再生することができるようなIoT機器の開発が可能になるという。

このようにリノべるのスマートハウス事業の構想や計画が語られたのだが、具現化されるのはこれからなので、今のところは形は見えていない。中古住宅のスマート化にあたり、住む人の情報セキュリティの管理の問題や、新築住宅を作るときとは異なる課題も出てくるかもしれない。それらをどうクリアし、どんなリノベーションスマートハウスができるのだろう? 新たな興味が湧いてきたフォーラムだった。

(※)API
Application Programming Interface(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の略語。あるソフトウェアの汎用性の高い機能などを、外部の他のプログラムから呼び出して利用できるようにする規約や関数などのこと。

☆取材協力
リノべる株式会社
http://www.renoveru.jp/corporate/

2015年 09月30日 11時05分